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届かせたい  作者: 高橋 紫苑
3/3

3話(最終話)

これで完結です...主人公頑張れの回です(*^-^*)

 おつかれ~!!

 しばし、その言葉とジョッキ同士を打ち付ける音が響く。

 本日は、サークル内の忘年会だ。まだクリスマスにもなっていないが、一週間後からは冬休みで地元に帰る人達もいるため、早めの開催となっている。

 そこには仮面を被った木下さんもいる。しかし、前回と違い彼女の影は消えていた。問題は解決したのかもしれない。

 それにしても、何故か今日の彼女は観察していても面白くない。顔に落書きとかしたら面白くなるだろうか……発想が小学生だな。

 何かを感じ取ったらしい彼女は今回も一瞬こちらを睨み付ける。

 おぉー、怖い怖い。


 数十分後、僕と先輩たちは恋愛関連の話をしていた。内容はどうでもいい。どんな会話の流れだったのかも忘れた。ただ、一つだけ確かなことがある。

 僕はとても苛立っていた。何故なのかは自分にもわからない。酒の影響で気持ちが不安定だったのかもしれない。何か大きなきっかけがあったわけではないのだろう。色々なことが積み重なり、その積み重なったものが偶然このタイミングで崩れただけだ。

 だから、過ちを犯した。

 僕は彼女に八つ当たりをしてしまった。そう、たった一言……その一言で八つ当たりをした。

「元カレを平気で家に泊めている人もいるらしいですからね~」

 いつもの調子で彼女は睨み付けてくる……と予想していたのだが、彼女は微動だにしなかった。聞こえなかったということはないだろう。わざと、聞こえるような声量で言った。偶々反応しなかっただけかと楽観視し、その時は気にしなかった。

 温かい料理を食べていたが、背筋を這う寒気が止まることはなかった。


 翌日、彼女はTwitterであるツイートをした。

「世の中には言っていいことと悪いことがあるよ?」

 僕の八つ当たりのことだ。ただの直感だが、当たっている気がした。

 一応、今度会った時に直接確認してみよう。


 それから三日後、サークルの部室には俺と彼女しかいなかった。

 喉が渇いているのがわかる。怖いと感じている自分がいる。現実を突きつけられたくない。そんな馬鹿な考えをしているのは僕だ。

 ここで確認をしなければ、何かが終わるだろう。確実に後悔するだろう。

「ちょっと訊いていいか?」

「なにー?」

「Twitterでツイートしていた、言っていいことと悪いことがある、というのは……」

「君に向けてだよ」

「…………」

 情けなくも、言葉に詰まってしまう。

 予想は的中していたわけだ。それ故に、彼女に目を向けられない。彼女がどんな顔をしているかはわからない。目の前が真っ黒に染められていくように感じる。

 最初に言うべきことはわかっている。痛みを感じている暇なんてない。勝手な行動の結果の痛みだ。放っておけ。そんなもの、後でいくらでも味わえる。今は、ただするべきことを……

「申し訳なかった。木下さんにあんな形で八つ当たりをした僕が完全に悪かった。本当に申し訳なかった」

 一拍。返答が来るまでの時間。とても短いが、とても長かった。

「あー、まあいいよ。もう済んだことだし」

 たったそれだけだった。彼女は僕をすんなりと許した……と僕が勘違いするわけがない。

 彼女の声音や雰囲気から察せる。絶対に許さない、とまではなっていないが、まだ不満があることはわかる。

 ただ、これ以上踏み込めるのか? 返答には、これ以上追及してくるな、という意味が含まれているだろう。それでも、踏み込むのか?

 ……迷っている暇はない。僕があることを望むのならば。

「嘘つけ。まだあなたの中では何も済んでいないだろ。隠さないで、不満でも愚痴でも何でもぶつけてみろよ」

 彼女は唖然とした顔でこちらを見ていた。

 そりゃあ驚くだろうな。空気を読まないで突っ込んできたバカがいるのだから。

 五秒。彼女が悩んでいた時間。さっきの一拍よりも長いが、短かった。

「じゃあ言わせてもらうけど……好きで泊めているわけじゃない! こっちだって、泊めたくて泊めているわけじゃない! 元カレが大学から少し遠いところから通っているから、頼まれたら時々泊めてあげているだけ!」

 実は同じ言葉を以前も聞いている。ただ、以前は何でもないかのように語っていた。今回の言葉には気持ちが込められている。

 俺は彼女の言葉を聞き続けた。謝りながら聞き続けた。


「スッキリしたよ。ありがとう、上山くん」

「お礼を言われることなんてしてないよ」

「一人で抱えていたものを吐き出せたから君には本当に感謝してるよ。それに、ご飯も奢ってもらったし」

「学生の僕にできるお詫びなんてそれぐらいしかないからね」

 僕らは部室から飲食店に移動し、相談会のようなものを開いた。内容はほとんど彼女の愚痴だったが。

 だけど、彼女の心の声を聞けたこと、一人で抱えていたものを話すぐらいには僕に気を許していることが僕には嬉しかった。

「じゃあ、私こっちだから。じゃあね!」

「じゃあな」

 彼女が歩いていく。僕はその後ろ姿を見ながら考える。

 彼女が僕に恋愛感情がないことは何ヶ月も前に確認した。僕もないことを彼女に伝えた。それなら、普通は恋愛に発展しない。

 ただ、気づいてしまった――僕が彼女に好意を寄せていることに。

 気づいたことはそれだけではない。

 彼女にこの想いが届くことはおそらくないだろう。恋愛感情がないと言われたのだから。しかし、僕は面倒くさい性分を抱えているらしい。どうやら僕は、届かない、絶対に届かないのだろうとわかると、どうにかして届かせたくなる性分らしい。

 そこまで考えてから、僕は思わず彼女を呼び止めていた。

 伝えたい。届かせたい。

 僕の心を温かくしてくれた君に。


「僕は……あなたのことが好きです。付き合ってくれませんか」


この先、二人がどうなったかはご想像にお任せします。

私には答えは出せませんでした。

どちらも違う気がしたのです。これを納得させる形で先の展開を書くには、私の人生経験が足りませんでした。

いつか...書けるようになった時に、書かせていただくかもしれません。

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