2話
2話は短めです。
2話完結にしようか、分割して3話完結にしようか迷いましたが、分割の方が読みやすいだろうという判断で3話完結にすることにしました。
何も感じなかった。それは真実だ。
何も変わらない。それは嘘だ。
変わった。何かが変わった。そして、変えたい。
だとしたら、僕は――
「おっ、上山くんお疲れー。こんなところで会うなんて奇遇だね」
「お疲れ。木下さんも就活準備講座の申し込みしていたのは予想外だ。」
「そりゃあ予想できないよー。二年生で受ける人は少ないからねー。隣大丈夫?」
「大丈夫、僕の周りでこの講座を受けるような奴はいない」
「その点、私と君はとても真面目ということかな」
「僕たちが変人なだけだよ」
「そうやってまた私のことを変人扱いしてくるー」
ドヤ顔から瞬時に、ふてくされた顔に変わる彼女の表情筋は相変わらず働き者だ。
しかし、前回とは違う。
前よりも表情に陰りがある。僕の気のせいならそれはそれでいいのだが。
「結局今日も上山くんとご飯だ」
「講座が終わった後、ご飯に誘ったのは木下さんでしょ」
「そうだったっけー?」
「…………」
「あれ? 何も言ってこないとは珍しい」
いつもの調子で返そうとしたが、今回はやめといただけだ。どうしても気になってしまう。彼女でも隠し切れない影の存在が気になる。
気になるなら訊けばいい。いつもの調子で相手の事情に土足で入り込めばいい。なぜ何も言えない。なぜ段々と焦っている。落ち着け、落ち着け……
「木下さん……最近疲れることでもあった?」
「上山くんが人の心配するなんて……明日は傘が必須だねー」
彼女の軽口に答える余裕がない。どうしてだか、喉は既に渇ききっていた。
「悪い、真面目に答えてくれ。答えたくないなら答えないでいい」
彼女も僕の様子がいつもと違うことに気づき、真面目な表情に一転する。
「うーん、疲れたことね……あるとすれば、元カレが新しい彼女できたのにまだ私を利用することかな」
彼女はいつもよりか細い声で簡潔に答えた。
落ち着いた。水で喉も潤した。大丈夫、いつも通りだ。
「まだ家に泊まりにくるのか? 新しい彼女さんと喧嘩する要因になる可能性大なのに?」
「それねー。別れても私の責任じゃないぞ、とはさすがに言ったけどね。でも、また泊まりにくる雰囲気があったから、終わらないー」
「それは先が思いやられるな……」
元カレは一体何がしたいのか。新しい彼女ができたなら元カノとの交流は控えるべきだろうに。
「今度からは宿泊費取ってやる」
「じゃあ、そのお金は僕の焼肉代ということで」
「なんでそうなるの」
次第に、いつもの軽口を交えた雑談へと戻っていく。前と変わらない、平和な一時だ。
夜風は何もかも運び去る――はずなのだが、今夜は霧が深いままだ。
理由がわからない。
そのことが僕を苛立たせる。
わかるわけがない。そのことはわかっているのに。
月と星の光が答えを導いてくれることもない。
ホットココアが喉を通ったが、温かさが満ちることはなかった。
次回、完結...!




