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7 偶然は必然

 

 あの後、タツヤは街を散策していた。

 手にはどこで買ったのか串焼きを持っている。


「いやー、このボタの串焼きはめちゃくちゃおいしいね。この噛んだ時に出てくる

 肉汁がやばすぎるよ。しかも銅貨1枚で値段も安いし」


 今、手に持っているのは1本目ではない。実はもう5本目だ。お昼の時間ということもありおなかが減っていたのだろう。そうこうしているうちに最後の一本もなくなっていた。


 ちなみにボタというのはイノシシに似た比較的に弱い部類の魔物のことである。


「そういえば、昨日は詰め所に泊まれたけど今日泊まる場所ないじゃん」


 今更ながら重要なことに気づいて、宿を探し始めた。




 ◆◆◆◆◆



「迷子になって、変な道に来ちゃったことは一歩譲って気にしないことにしよう。

 だけどね、僕が動くたびに動き出すこの子は一体なんなんだーー」






 宿を探し始めて少し経ったときに時間は遡る。





 タツヤは自分の勘を信じて道を進んでいたのだが、迷ってしまい裏道のような場所に出てしまった。


 ふと視界に何かが飛び込んできたのでよく目を凝らしてみると

 なぜか、道の真ん中にローブのようなものを着た小柄な女性が倒れていた。


 タツヤは急いで女性のもとへ駆け寄って声をかけた。


「大丈夫ですか?いったい何があったんですか?」

「グ~」


 返答はまさかのおなかの音だった。


「もしかして、おなかがへって動けないとかじゃありませんよね?」

「グ~グ~(その通りなのです)」 


 なんかおなかの音で返事してくるんだけど!?


「あの~もしよかったら、ボタの串焼き食べます?

「グ―(どれ、いただいてあげましょう)」


 実はボタの串焼きは5本だけでなく、10本買っていたのだ。残りの5本は後で食べようと思いモニラ(運命神)からもらった魔法のカバンの中にしまっておいたのだった。そしてその女性に1本串焼きを近づけるといつの間にか肉が消えていた。


 う、嘘だろ、いつの間に無くなったのか分からなかったんだけど・・・。


「グーグッグ~~(まだ持っているのは知っています。早く出してください)」


(なんで、腹の音で言葉が分かるんだろうと思ったけど、この感じはモニラと同じようなテレパシーみたいなやつか)


 そんなことを考えていると、再び腹の音が聞こえた。


「グ―ッグ(お願いします。食べさせてください)」


 タツヤは仕方がないので残りの4本の串焼きも彼女に近づけた。

 先ほどの1本目と同様に気が付けば肉がなくなっていた。


「じゃあ、もう食べ物もないし先に行くね」


 そういい立ち去ろうと動き出すと彼女も動き出す。

 試しに1歩だけ動くと、彼女も1歩だけ動く。そんなことはしないだろうと思いその場で回転すると彼女もいっしょに回転する。


 そして最初の場面に戻るわけだ。


 仕方ないので、その女性に近づいて行き話しかけた。


「あの~どうして後をついてくるんですか?」

「(お金がないのであなたに、たからせ・・・ついていってもいいですか)」


 この子、思わず本音が出てるよ・・・あと、なんで普通に会話しないんだろう?


「(もしかして、なんでしゃべらないんだろうって思っていませんか?これには

 山より高く、谷より深い事情があるんですよ。)」

「つらいことだったら無理して言わなくてもいいよ」

「(いやー、ただ単純にしゃべるのにエネルギーを使いたくないだけです。魔力は無駄にあるのでこうしているんですよ)」


 無言でその場を立ち去ろうとしたが足に引っ付かれた。


「(あの~本当にお願いします。魔法でいろいろとお手伝いをしますので)」


 正直、ついてきて欲しくなかったが彼女に根負けした。


 餌付けというか・・・助けた手前、最後まで面倒見るか。


「分かったから、もう足から手を放してよ。ついてきてもいいからさ。名前はなんていうの?」

「(ココア・パルサーです。よろしくお願いします)」


 ココアがお辞儀をしたときに、今までローブで隠れていて見えなかった顔が、ローブが落ちて露わとなった。まるでそれは妖精がいるんだったら、こんな顔だろうなというのを体現したかのような顔であった。もはや、アイドルでもこの子を相手にしたら逃げ出すだろう。


 こんな残念な子なのにめちゃくちゃ美少女なのかよ~~。


 心の中で思い切り叫んだ。







 

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