6 冒険者ギルド
「冒険者の登録と身分証の再発行をしたいんですけど」
「ようこそ、冒険者ギルドへ。今回、担当させていただくサラ・へニエルです。
どうぞよろしくお願いします」
やはり神は見捨てていなかったよ。ギルドにいる受付嬢は大体美人っていうのが定番だけどまさにそのとおりだった。髪の色は異世界らしく青色、髪の長さは肩にかかる程度、そしてモデルのようなシュッとした体つきをしている。いうまでもなく顔のつくりも完璧だ。
「では、この用紙に必要事項を書き込んでいただきます。失礼ですが代筆は必要でしょうか?」
残念ながら、ここにくるまでタツヤは文字を見る機会がなかった。昨日の詰め所でもなにかを聞かれるという機会はあったものの、なにかに書き込むという機会はなかったのだ。
代筆を頼もうかな。いや、待てよ・・・そういえば、言語理解ってスキルがあったな。いつも通りどう書きたいのかをイメージして・・・おっ、書けるかも。
「いえ、大丈夫です」
「了解しました。失礼ですが、もしかして貴族様でしょうか?」
「えっと、違いますけど」
「申し訳ありません。冒険者に登録される方で文字を書くことが出来る方が
今まで、あまりいなかったので勘違いをしてしまいました」
ということはつまり、一般の人の識字率はかなり低いわけか。
タツヤがそう思った通り、この世界での識字率はかなり悪い。王族や貴族、商人の
子供くらいしか文字の教育を受ける機会がないのだ。日本のようにおよそ99%が当たり前の
ように文字を書けるというのはとてもすごいことなのである。
「えーと、これで全部書き終わりました」
「ギルドへの登録は無料でできるのですが、再発行には手数料として銀貨3枚が
必要なのですがお持ちでしょうか?」
(大体3万円くらいか、結構かかるね)
昔は身分証の再発行をもう少し安く行うことが出来たのだが、あまりにも紛失する人が多かったため少し値段を高めの設定にしたのだ。それには大事なものなのだから無くすなよという意味が込められていたりする。
「はい。これで大丈夫でしょうか?」
「ありがとうございます。問題ありません。それでは再発行に少しお時間が
かかるので冒険者についての説明をさせていただきます」
彼女の話を要約するとこんな感じだった。
冒険者にはランクがあり、そのランクが高くなるほど多くの依頼が受けられるらしい。しかし、暗黙の了解のようなものがあり基本的には自分のランクに近いものを大体選ぶようだ。そうしないと自分に合った依頼というのがなくなくなってしなうからだ。
例えば、高ランクの人が低ランクの依頼ばかり受けると低ランクの依頼が
なくなってしまう。こういうことが起こらないようにするためのものらしい。
中には例外もあり、常駐の依頼や指名依頼などがそうらしい。
ちなみにランクは
Z、SS、S、A、B、C、D、E、F、G
となっており、Zが一番高く、Gが一番低いようだ。依頼を受けて達成してポイントをためると上のランクに上がれるようだ。D以上のランクになるときは試験が必要らしいが。また依頼を失敗するとポイントが減る仕組みらしい。Dランクになるには基本階位30程度の強さが必要になるそうだ。
そして依頼にも種類があり
一般依頼、指名依頼、常駐依頼、護衛依頼、緊急依頼
などがあるそうだ。
1つ目の一般依頼には採取や討伐の依頼があったり、中には人探しや街での手伝いなどもあったりする。
2つ目の指名依頼は基本一般依頼と変わらず頼まれた人しかその依頼を受けられないようだ。依頼主が気に入ったり、ランクが高かったりすると指名依頼が来るらしい。
3つ目の常駐依頼は常にあるものでいつでも受注可能のようだ。
4つ目の護衛依頼は基本複数人で受注するもので街から移動するときにその名の通り護衛をするのが仕事である。あとD以上の人が受注する人の中にいないといけないらしい。
5つ目の緊急依頼は魔物が大量に出現したときに出されるものだ。基本、断ることが不可能で断る場合には罰金やランクダウンなどのペナルティが課せられるようである。要するに冒険者になる上での義務のようなものである。
とりあえず、この5つを覚えておけば大丈夫らしい。
「・・・以上でございます。何か他に聞きたいことはありませんか?」
「ここで依頼を受けて、ほかのギルドで依頼を達成することは可能でしょうか?」
「護衛依頼や特殊な依頼なら可能ですが、基本は受けたところで達成の確認を
お願いします」
さすがに護衛依頼はほかのギルドでも大丈夫か・・・ 。
「あとは大丈夫です」
「では、再発行が終わったようなので身分証をお渡しします。では、ここに血を
一滴垂らしてもらってもいいですか?」
マジかー、でも仕方ないよね。
渡された小刀のようなもので少し指に傷をつけて、身分証に一滴血を垂らすと
吸い込まれるかのように消えていった。
「では、これで登録は完了です。身分証に冒険者の機能を追加しておきましたので
依頼を受けたり、達成した際にギルドのものへお渡しください」
「この身分証について、質問したいのですがいいですか?」
「ええ、だいじょうぶですよ」
これまた、要約するとこの身分証というのはとても特殊なものらしい。この身分証はカードのようなもので自分のステータスの確認などを行えるようだ。血を垂らしたのはこのカードに自分の情報を登録するためだったようだ。そしてこの国では15歳になって成人すると近くのギルドでこのように身分証を作るらしい。
冒険者の機能を追加すると、カードに冒険者のランクが表示されるようになり、ギルドで倒した魔物の数や種類を確認できるらしい。
とんでもなくレアな魔道具で生成しているようで王族やギルドしかカードの生成が不可能のようだ。
ちなみに普通のギルドにあるのはその魔道具の複製らしい。複製といってもとても厳重に保管されているようでやはり一般にその魔道具が出回ることはないようなので生成は無理らしい。
ちなみに鑑定とこのカードの違いだが鑑定にはレベルが高くなると見える項目が増えるという特徴があるそうだ。一般的にそれは隠しステータス呼ばれているようである。そこで魔法の適正、武器の適正というのが見えるといわれているようだ。なので鑑定持ちは貴族たちに依頼を頼まれることがあるそうだ。その分、危険なこともあるようなので注意が必要らしい。あとカードには自分のスキルを隠す機能があるらしいのでちゃんとしといたほうがいいようだ。
「・・・となっています。ほかに質問はありませんか?」
「ありがとうございました。もう大丈夫です」
「では、今回は依頼をお受けになりますか?」
今日は街を回りたいし、依頼を受けるのは今度にしよう。
「いえ、また今度にします」
「依頼はそこの掲示板にあるので、受けるときはカウンターに持ってきて手続きをお願いします。では、またのご利用をお待ちしています」
「はい、またよろしくお願いします」
なお、この時サラはタツヤのステータスやスキルを初心者だからということで確認するのを忘れていた。これが原因となり後で様々な騒動が発生するのことになるのだが・・・この時のサラはそんなことを知る由もなかった。
そうしてタツヤはギルドをあとにした。