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転々と追いやられてもなんとか生きています  作者: みやっこ


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第十二話 まえぶれ

「」は日本語、『』は異世界語となっております。主人公はまだまだ異世界語の勉強中です。

『何をしておるか。ハミグ』


暖かな日の光の下、片手に、甘い果実の入ったお餅を持って、木の板を敷いた上で、ハミグと言葉の勉強をしていたら、晴れていたはずなのに、急に影がさし、見上げた先に、見覚えのある女性……前にリリョスさんと何やら話をしていた、きらびやかな衣装に身を包んだ女性とその他の人々が、立っていた。


ビクッとしたハミグが、私の服を掴んで、立ち上がるものだから、私もよろけながら立った。


『そなた。草域の戦況は聞いておるな』


『はい……おばあさま』


『そうか、ならばなぜこのような所で、絵などかいておる』


絶対に怒られてる。オロオロするハミグを擁護してあげたいけれど。

何で怒られているのか、知らずには何も言えない。


『あの……あの……』


『そなたもいずれ戦場へ出ねばならぬというのに、剣ではなく筆を取るなど……』


ハミグは、泣きそうな顔をしながらも、唇を噛んで堪え、掴んでいた私の服を離して、きらびやかな女性を見上げた。


『けんもっれんしゅういたしますので、どうか……えをかくことをおゆるしください』


必死に何かを訴えているので、私も、助けになればと、ハミグの横で、頭を下げた。


足元にある、さっきまでハミグが描いていた、鳥の絵が目に入った。翼を広げ、大空を飛ぶその鳥は、今にも紙から飛び出さんばかりの躍動感で……。


ダンっ!


踏まれた。

金色の刺繍がされた、黒い靴に……潰されてしまった。


「あっ!? ちょっと! なにすんの!」


ちょうど鳥を見ていたからか、私は誰がやったとか考える前に、細い足首を掴んで、紙の上から除けて、鳥の絵を拾い上げた。


『なんと無礼な!!』


『っ!?……お前。侍女ではないな』


怒鳴られておっかなびっくり顔を上げると、きらびやかな女性が、激しく蔑んだ目で私のことを見下ろしていた。


あ。ヤバい。今掴んだ足……この人の?


『すっすみま……せん』


震え上がりながら、頭を下げて謝ると、きらびやかな女性は、周りにいた人からなにやら耳打ちされ、訝しげに私を見た。


『そうか。お前。この間リリョス殿の汚らわしい翼に触れた奇人だな。なにゆえハミグとおるのだ』


リリョスさんとハミグがどうしたのか、わからないけれど、今度は私に怒っているらしい。


『はよう答えよ』


『おばあさまっ! フクはまだことばがそんなにわからなくて……』


ハミグが、両手を広げて私の前に立ちはだかった。

すると、きらびやかな女性は、一層目を見開いて、小刻みに震えだした。


『さきほど話しておったではないか。そのように庇い立てして……お前……ハミグを誑かしたのではあるまいな』


声を震わせ、わなわなしているきらびやかな女性。

周りの人たちも口々に私を非難しだした。

転移する前の教室と雰囲気が同じだから、たぶんそうだ。何を言われてるかわからないのと、ハミグがいるのは大きな違いだけれど。


『リリョス殿に触れたのも企みあってのことであろう。 地位欲しさに誇りを捨てて媚を売りおって……あの鱗女と同じように……』


『おばあさまっおばあさまっ! フクはいせかいからきたのです! ははうえが、いっておりました。フクはこのせかいのことわりに、ならうひつようはないって。だからちいとかもかんけいないのです!』


ハミグの一言で、周りにいた人々がざわつき、きらびやかな女性の周りにドッと集まって、なにやらプチ会議が開かれた。


『そういえば、異世界から間違いで召喚されたものが居たと……』

『しかし、ここで下がっては、フラミア姫の言うことを聞いた形になり、ハミグ様の今後に関わりまする』

『ここへ来させているのがフラミアならば、われが〜〜〜〜』


会議の内容はところどころ聞こえていて。ハミグの顔色がどんどん悪くなっていくのを見るに、よい内容ではないのだろう。

子供だからとなめられているのかもしれないけれど、ハミグは結構、いや、かなり頭のいい子だ。

そこのところを理解して、コソコソやるなら聞こえないようにしてあげてほしい。


ざっと周りにいた人が離れて、プチ会議が終わると、きらびやかな女性が、仕切り直すように咳払いをした。


『どうやら勘違いしてしまったようだ。すまなかったな娘よ』


にっこり笑顔で、たぶん謝罪してきた。なんだろう。とても綺麗な人ではあるのだが、どこか不自然で、笑顔なのに、ピリッとした警戒心が湧いてくる。


『すむませぬでした』


私は、取り敢えずもう一度謝って、ハミグに目配せした。

そんなに不安そうにしないで。また今度遊ぼうね。今日は帰ったほうがいいよ。

という、感じの目配せだ。


ハミグは、目をパチパチと瞬いて、小さく頷いた。


『おばあさま。ぼくかえってけんのけいこします。きょうはすみませんでした』


礼儀正しくお辞儀したハミグに、きらびやかな人がうんうんと頷いた。


『そうか。今後もこのようなものにうつつをぬかさず、励むのだぞ。ではわれも、そろそろ行くことにしよう。騒がせたな娘』


よかった。去ってくれるらしい。何が起きたのかイマイチ分かっていない私だが、さすがにじゃあまたねと言うのはどうかと思い、ペコっと頭を下げた。


すると


『ああそういえば』


振り返ったきらびやかな女性が、口元を袖で隠しながら、妙に優しい声で言った。


『近々、大嵐が来る。毎年この時期特有のものであるから、そこの小屋でも大事ないであろうが、風が強くなってきたら外に出ぬようにな』


風。嵐。外。

と聞き取れたのはこれだけだったけれど、ハミグにも、うさ耳さんにも、近々嵐が来ると、説明されていたので、その話だとわかった。ちなみに……リリョスさんとは、あの日以来まだ会っていない。


『はい。ありがとうまし』


みんなと同じように忠告してくれているのだと読んでお礼を言うと、きらびやかな人は、目を三日月のように細めて頷き、一同を連れて、渡り廊下を歩いていった。


申し訳ないが、ゾッとした。


その三日後。いろんな意味で嵐が吹き荒れた。


読んでくださり、ありがとうございます。またどうぞ、よろしくお願いいたします。


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