救済
今日は快晴。うんと気持ちいい空気を吸えば、自然と元気が湧いてくる。私はぼーっと綺麗な空を眺めて日向ぼっこをするのがいつもの日課だ。晴れた日こそもっと活発にならないとって昔ジルに言われたけど、のんびり過ごすのが好きなんだから構わないよね。
少し目を離した先には元気に遊ぶ子供たちが映った。
あぁ、今日は子供たちも元気に遊んでいる。楽しそうだな。おっと、こらこら、リスをいじめるとは可哀想じゃないか。リスよ、こっちにおいで。
リスは呼び掛けに応じるように私の体をかけ上がり、てっぺんほどまで避難する。
「あーあ、上に行っちゃった」
「リスさんおいでー。クリスト、リスさん下ろしてくれない?」
なんだ、ベルだったのか。リスをいじめるとはいけないなぁ。
「別にいじめてないよ。遊んでただけだもん」
そうは思えなかったよ。でもリスは私と一緒にこの空を眺めて過ごすことにしたみたいだし、下りないって。
「ちぇー、分かった。じゃあまた今度ねクリスト」
あぁまたね。今度はもっと平和な遊びをするんだよ。
ベルとその友達が元気に去っていく。ベルたちの踏む草原のかさかさとした音が辺りに響き渡る。あぁ平和だな。こんな日がずっと続いてくれるといいのだけど……。
†
クリストと別れてから走ってるうちに、なぜか家まで競走に変わってしまって、とても疲れた。
「はぁはぁ、久しぶりに全力で走ったー」
「全くだよ……。ホント疲れたー」
「はぁ……あっ、そういえばさっき誰と話してたの?」
「え、クリストだよ。ク・リ・ス・ト」
「クリスト? 誰の声も聞こえなかったけど……。あっ、もしかしてベルの妄想が幻覚にまでなっちゃったの?」
「なっ、ち、違うよ!」
その後、弁解をしたけど、なかなか信じてはもらえなかった。クリストの声はみんなには聞こえないみたいだった。
何ヵ月が過ぎただろうか。憎き戦争が再び起きてからは、絶えず怒号と悲鳴が飛び交っていた。遠くから聞こえてくる絶望の余波は、私の元にやってくる傷ついた鳥たちが教えてくれた。まだここら一帯に被害はあまり出ていないが、敵国がここに攻めてくるのも時間の問題だろう。だが、人里離れたところにあるこのウィンザード地方はしばらくの間は戦火から逃れられるかもしれない。
でもここが燃え尽きる瞬間を眺めるときが来るくらいならいっそ……。
「どうしたのクリスト」
ん、いやなんでもないよ。ベルこそ今日はこんなとこまでどうしたんだい?
「施設じゃつまんないから来ただけ。そうだ、クリスト、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」
なんだい?なんでも聞いてあげるよ。
「ありがとうクリスト。それでね、その聞いて欲しいことってのは、あたし騎士か兵士……最悪傭兵でもいいかな。とにかくみんなを守れる戦士になろうと思うの」
え……ホントに?
「うん、ホント」
まさか戦場に自ら向かおうというのかい? そんなの危ないし……危険だよ……。
「あたしはもう誰も失いたくない。もちろんクリストを含めてね。だからあたしの大切な人たちは自分の手で守ろうと思う」
そう言ってくれると私も嬉しいよ。でも、ベルが戦場に行くなんてのは断固反対だ。君はあのような地獄を知らないわけではないだろう。
「そんなの嫌というほど分かってるよ。でも決めたの。あたしは戦士になる。そしてこのウィンザードを守る。あたしを唯一受け入れてくれた場所だから……」
ベル……。
「それじゃありがとう。話聞いてくれて。また来るね」
そう言ったベルだったが、次に会うことになったのは三年も後のことだった。
†
少し昔の話をしようか。あれはベルがまだ赤ん坊だった頃の話。ウィンザードを領土に持つナスタニアは国力の一番弱っていた時に隣国ラザネイトに攻められ、敗北寸前にまで追い込まれていた。
「はぁ……。こんな大変な時に俺は何してんだろうな」
そうだね。君はここにいるべきではない人だろうね。
「全くだ。老いてから退役したわしはともかく、ガレン、おぬしがいてはまずいだろう。早く戻れ」
「……分かってます。でも、死ぬのが怖いんです。昔はそんなことなかったんですが、今は……怖い」
私にはなぜガレンがそう思ったのか、その気分は到底理解できないものである。戦場の真の恐怖とでも言うのだろうか。それを私は知らない。さてどう返したものか……。
そこへジルがゆっくりと口を開く。
「死は、戦場ではいつだって隣に潜んでいる。だが、誰かがそのリスクを背負わなければ救われない命があることをおぬしが一番分かっていると思うのだが?」
ジルがガレンを諭すようにそう告げた。
人は生きるために人を殺す。それを改めて突き付けられた気分になった。
町の方から駆けてくる一人の女性が目に入った。彼女は……。
「あっ、ガレンやっぱりここにいた。ジルにクリスト、ごめんね。うちの亭主が迷惑かけて」
レリア。もう身体は大丈夫なのかい? ベルを産んでから体調が優れないと聞いていたから……。
「大丈夫大丈夫。鍛錬もこなせるぐらいには回復したから!」
そうか。それならよかった。レリアの元気な姿が見れて嬉しいよ。
「ありがとうクリスト。ガレンとは大違いだわ」
「おいおいそれはないだろう」
「ならさっさと戦場に行く準備をしたらどうなの?部隊長かんかんだよ?」
「うっ、それは……」
「私も戦場に向かうからさ」
え、レリアそれはどういう……。
私ですら困惑したのだ。ガレンに至っては混乱した様子で慌てていた。
「そんな……。レリアは……ベルのためにも残れ。親が二人とも死ぬなんてのはダメだ……絶対に……」
「戦力は一人でも多いほうがいい。それに死ぬって決まった訳じゃない」
「でも!!」
「ベルにはもっと安心できる世界で日々を過ごしてほしいの。私たちと同じ思いを抱いては欲しくない」
声を荒げてはいなかったのだが、そのレリアの一言が皆を沈黙させた。
そしてガレンがその沈黙を静かに破った。
「……分かった。一緒に行こう」
ガレンは持ってきていた鎖帷子を着始め、目の色を変えた。あれは覚悟の決まった強いガレンだ。
「ジル、今は乳母の人に預けてるけど、ベルをよろしくお願いします」
「あぁ、任せておけ」
「クリスト、またここで他愛ない話をしよう。私は勝って戻ってくるから。話のタネでも増やして待ってて」
レリアの笑顔は今もさんさんと輝く太陽のようだった。
あぁ待ってる。信じて待ってるから。生きて戻ってきてくれ……。
「迷惑ばっかかけてごめん。でも俺は俺の為すべきことをするために行ってくる。みんなを笑顔にするためにも」
私にできることは何もない。でも祈ってる。生きて戻ってきてくれガレン……。
二人はこくりと頷き、町の方へと走って戻っていった。
ジルは止めたりしないんだね。
「はっはっは!老いぼれに口出しする権利はないわい。クリスト、おぬしこそ止めなかったじゃないか」
彼らの目を見てもなお止めるというのなら、それは冒涜だよ。
「ふっ、そうだな。我々は成長する若人の背中を見送るだけよ」
私はジルと共に心の底から激励し、彼らの勝利を願った。しかし、祝杯が祝杯を呼ぶことはなかった。
鳥たちが奇跡的なナスタニアの勝利を教えてくれたとき、私は歓喜した。彼らが希望を作ってくれた。そう思い、彼らの帰りを待ったがいつまで経っても姿は見えない。それよかウィンザードに重苦しい空気が立ち込めている感じがした。
ナスタニアが勝利したと聞いてから一週間が経った日。時刻は丑三つ時を示していた。
「クリスト、あぁクリスト……」
ジ、ジル……どうしたんだい?
「わしはおぬしに伝えようか悩んだ。だが伝えなければなるまいな。わしもここをもう出なければならないから……」
ジル?
「ガレンとレリアが……戦死した」
ほん……とうに?
「あぁ。だが、二人は戦地で多大な活躍をしたとして英雄としてナスタニアでは称えられている」
そんな、あの二人が……。信じたくなかった。信じたくはなかった。でも、でも……。
「それともう一つある」
もう……一つ?
「ベルが……攫われた……」
え?
「わしの不手際だ。金に目がくらんだ乳母がベルを売りやがったのだ。英雄の娘という肩書を利用してな。既にベルを攫った連中の情報は得ている。わしは今から向かおうと思う。止めてくれるなよクリスト。わしは自分の尻拭いをするだけだ」
……じゃあ一言だけいいかい?
「なんだ?」
必ず生きて、生きて戻ってきてくれ……。ベルと共に。
「分かった。分かった……。必ず戻ってこよう」
そう言ったジルは闇夜に確固たる意志と共に向かっていった。
涙を流せない自分をどれだけ呪ったことか。私は止めればよかったのだろうか。しかし、それだとここの平和は保たれていない。どうしたらよかったのだ。どうしたら……。
答えは出なかった。そして私は手の届かぬ太陽に身を預けるように日課の日向ぼっこをすることにした。時間を意識することを私はやめた。時は人をおかしくする。なぜかそう思った。
そのおかげか、ジルが姿を見せず、ベルだけが私の前に現れた時に、あれからもう六年も経っていたことを知ったのだった。
†
今日は今からでも雨が降りそうなどんよりとした天気だったが、私は日課の日向ぼっこを欠かさず行う。例え気分の上がらない天気だったとしても、これは私のルーチンのようなものだ。必ず毎日する。まぁそれでも当然気持ちはブルーだと言っても過言ではないけどね。
ピピッピピッ
鳥たちがさえずり合いながら私の元へ飛んで来る。どうやらナスタニアがリマフストとの戦争に勝利したらしい。確か互いの目的はとある資源の調達と人材、土地の確保だったか。
全くどうして戦争をする必要があるのだろうか。人はもっと仲良くならないものか。これ以上同じ種同士の争いは見たくも聞きたくもない。
だが、しばらくは平穏が続くだろう。というよりも私はただそうあって欲しいと思っているだけなのだけどね。……誰かがこちらに来るな。鳥たちよ、隙あらば私から離れよ。不穏な空気を感じる。
フードを目深にかぶったその者は、私の前に来る前に少し辺りをキョロキョロと見回してからさっとフードを外した。
「ふー、ここまで来たら安全でしょ。……久しぶり、クリスト」
私の前に立つその者は、紛うことなきベルであった。顔つきは大分凛々しくなり、背丈はかなり伸びていた。可愛らしい笑顔はそのままだが、外套の上からでも分かる体つきの良さが全てを物語っていた。
「クリスト……あの……」
なにも言わなくてもいいよ。私はずっと止めるつもりだったし、ベルがここに来なくなった理由も察しはついていた。ベルは賢い子だ。でも、一言ぐらいあっても良かったんじゃないかい?
「うっ……ごめんなさい……」
別に謝らなくていいよ。ただ君が無事なことが確認できただけで十分さ。
「ありがとうクリスト。クリストにはあたしのことなんでもお見通しだね……」
当たり前さ。もう何年の付き合いだと思ってるんだい?それよりも、ベル、君は戦士になれたのかい?
「うん。あたし、ナスタニアの戦士になったよ」
本当に? それは良かった。おめでとうベル。
「ふふっありがとう。でもね、悪い知らせもあって」
悪い知らせ? 一体なんだい?
「ナスタニアは元々小国だったけど、最近の目覚ましい活躍をよく思わなかった大国オルセビアがナスタニアを攻めに来ることが分かったの」
それはつまり、また戦争が起こるということかい?
「うん……。その戦いには私も出ることになってる……」
不穏な空気の正体はこれだったのか。また悲劇が繰り返されてしまうのか……。
「あたしはウィンザードを守るために騎士になったんだから。あたしの心配はしないでね。かわりに勝利を祈っといて」
私は複雑な思いを胸中に抱いていたが、それを打ち明けようかと思ったその刹那、轟音と共に神の怒りを体現したかのような雷光が辺りを一瞬眩しく照らした。
「あっ、そろそろ召集の時間だ。ごめん、これからは三年も空けるようなことはしないからさ、また来るね」
そう言ってベルは再びフードを目深にかぶり、降りだした雨に濡れながら町の方へと帰っていった。
先程感じた不穏な空気はこのことを暗示していたのか。私はベルが人を斬り、その上で勝ち得た平和を享受することはできない。ベルたちが殺し合う以外の選択肢はないのだろうか。
あぁ教えてください神様。人はどうしてこんなにも、こんなにも……。
私は降り続ける雨と鳴り響く雷を見上げながらただ一心に問い続けた。
ベルは戦場に騎士として赴きながら、私の元へとしばしば休息を得るためにやって来ていた。その時にする話は専ら戦争の話が中心になってしまっていたが、小さい頃の話やお互いの知らない三年間の話をして、笑い合っていた。しかし、ベルが戦場から帰ってくる度にその目を濁らせていっているような気が私はしていた……。
ベルは一つの戦場を凱旋して帰ってくることもあれば、敗戦して退却し戻ってくることもあった。休戦状態になったといってその間に私の元へ来ることもあった。
戦争は長く続いた。大国が相手で、知らぬ兵器の多さに圧倒され押されていたナスタニアだったが、小国とはいえ決して弱くはなかった他の国々に勝ってきた機転の良さをもってしてなんとか堪え忍んでいた。しかし、オルセビアは大砲やオルガン砲、投石機からクロスボウまで使って遠距離戦闘に特化した戦いを繰り広げ、着実にナスタニアを追い詰めていった。
そんな中、一際異彩を放った部隊がナスタニアにいた。彼らの活躍がなければ、とっくにナスタニアは大国オルセビアに敗北を喫していただろう。それは暗殺に特化した隠密部隊がごとくで、誰も彼らが近づいていることに気づくことはなく、ようやく気づいたときには当に心臓をナイフで貫かれた後だという。万が一、存在に気づかれたとしても、オルセビアのクロスボウ兵などを守る護衛部隊ですら押し負けることがあるほどの実力があった。そして、そんな特殊部隊とも言える部隊にベルは所属していた。
今日はほんの少し雲が見える快晴。だが、辺りは殺伐とし、怒号と悲鳴が飛び交っていた。そう、とうとうオルセビアがウィンザードにまで攻めてきたのだった。この場所はナスタニアの都市部からかなり離れた辺境の地である。しかしそれでもここをわざわざ攻めてきたということは、ここの民を虐殺することで生産面の能率を悪くしようとしているのだろう。ここは辺境だが、土壌はとてもいいのだ。作物によって国を支援していたウィンザードの情報をオルセビアはどこかで握ったのだろう。オルセビアは慈悲も容赦もなく人を、物を、作物を、破壊し尽くす。絶望による支配が行われていく。
とうとうここにまで軍勢が押し寄せてきたか。いつかこうなることは分かっていた。でも私には何もできない。私にできることは日課の日向ぼっこだけ。
「うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
悲鳴ばかりが聞こえる中、たった一つ全てを凪ぎ払うような声を上げる女性の声があった。
あれはベルだ。ベル、もうやめるんだ。皆死ぬ。死ぬんだ。もう足掻いてもどうしようもない。
「あたしは諦めない! 諦めない! 諦めない!」
クロスボウを掲げる敵兵に次々と接近し、心臓に突き刺して息の根を止めていく。彼らを守ろうとする護衛の者すら蹴散らし圧倒していく。
だが、さらなる試練がウィンザードに襲いかかる。大砲や投石機を引く音が遠くから聞こえてきた。
確実に全てを終わらせる気のようだ。ベル、ここを離れるんだ。もうじき大砲が飛んでくる。
「クリスト! あたしは諦めないし逃げない! 何のために戦士になったと思ってるの!? ここを守るためなの! だから!」
それは、神が唯一私の願いを叶えてくれた瞬間だと思った。ベルの一瞬の隙を突いて背後から白い髭を整えた白髪の者がベルを気絶させたのだった。力の抜けたベルをそっと私の足元に座らせた。
その者は私を見ようとはせず、うつむいたまま独り言を呟くように口を開いた。
「わしは……ずっとクリストと会うのが怖かった。わしには拭いきれない罪がある。だが、」
白髪の者が顔を上げた。この一瞬が私には長く、長く感じた。
「だが、今でもそんな顔をしてくれるのかおぬしは……」
ふっ、当たり前さ……。おかえり。そしてありがとう。
涙を流してこちらに微笑む顔が私には印象深く映った。
と同時に永遠にも感じるほどに続く石と矢の雨がウィンザードに降り始めたのだった。
「う……」
ベルはずきずきと痛む頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。辺りから硝煙の香りを感じた瞬間、ことの事態を察した。
あたしは一体どれくらい寝ていた。あたしはどうして寝ていた。そもそもここはどこ……。
目の前に広がるのは無惨な瓦礫と死体の山。敵も味方も判別つかないほどに無茶苦茶に崩壊した世界がそこには広がっていた。生者と呼べる者は自分だけであろうことは目に見えて分かった。
「あ……あ……」
声にならなかった。全てを失ったのだ。あたしにはもう何もない。何も残ってなんて……。
本当に……そう思う……かい……。
「クリスト!? クリストなの!?」
私は……君の……後ろだよ。
「え……」
クリストはそこに立っているのが奇跡のような状態で佇んでいた。天高く生い茂っていた葉は全てなくなり、枝もなく、太い幹は雷撃を受けたかのように引き裂かれていた。元々の大木としての姿はそこには……なかった。
「クリ……スト……」
そんな……顔……しないで。私は……本望だ。君を守れた。それだけで十分だ。
「クリストだけは絶対に絶対に守りたかった、守りたかったのに……」
涙が止めどなく流れ、自分の無力さにうちひしがれていた。
君の……母と……父は勇敢……だった。君の……ようにね。だからこそ……君を……産んでから……二人は……戦場にて……散っていってしまった。
君に……同じ……運命を……辿って……ほしくなかった……。
「クリスト……私」
あぁ……私と共に……日々を過ごしてくれて……ありがとう。長かった……日々に……一筋の光を……ありがとう。君は……これからも……生きて……く……。
夜はどんなときでもやってくる。絶望の渦の中に浸っていくようだ。あたしは全てを失った。クリストは生きて欲しいと言ってくれたが、大切なものたちは全て目の前で消え去った。背中にいつももたれていたクリストから声は聞こえない。呼吸音も聞こえない。どうしてこうなってしまったのか。あたしは間違ったことをしただろうか。どうしてどうして……。
嘆いた。悔やんだ。苦しんだ。泣いた。叫んだ。喚いた。呪った。
†
今日の夜は長く感じた。なぜだろう。今も暗い。目の前が暗い。でも立ち上がらないと。あたしにはやることがある。生きるということが。生きて為すべきことが。
『皆殺しにしてやる』
落ちていた枝を握り締め、一歩一歩と踏みしめ歩く音が辺りに重く、低く響いていった。
不定期投稿第三弾です。お楽しみいただけたでしょうか。私はハッピーエンドが大好きな人間のはずなのに、どうしてこうなってしまったのでしょうかね。クリストは『救済』されたのではないかと私は思っています。では、また次の作品でお会いできたら幸いです。