雪の子供
雪が一日中ちらつき、お天気お姉さんが大寒波を知らせる日。
珍しい景色をこれから来る珍しい客人を思って心が弾む。
コンコン
テレビか何かつけていたら気づかないような小さな音。窓を見ると手の平くらいしかない子供がベランダからこちらを見ている。私はコートとマフラーニット帽を被って窓を開けた。
冷たさが空気に触れている部分の皮膚を刺す。呼吸をする度、鼻の奥に冷気が入ってツンとする。
「うー、寒。」
身震いしながら窓辺に座ると、子供が笑いながら足元と駆け回る。
無邪気に、一生懸命に。
絶対に触れたりはしない。触れたらおそらくこの子たちは消えてしまうだろう。
だからわざわざ窓辺に座っても見てるだけ。
こんなに寒い中窓を開けてるからもう部屋に暖かさなんて無くなった。
( まあ、いっか。)
子供が笑いながら走り回っているのを黙ってみる。よく数えると増えた気がする。子供の笑い声は聞こえない。
ずっと見ていると歌がふと浮かんだ。
「ゆーきやこんこ、あられやこんこ。」
言葉に出すとさっきまで走り回っていた足が止まり、小さな小さな目がこちらを向いた。
途端、満面の笑みを浮かべながら踊り始めた。
「降っても降ってもまだふりやまぬ。」
「いーぬはよろこび庭かけまわり」
「ねーこはこたつで・・・」
ぶわ、という音が聞こえて来そうな風が吹くと、足元の子供たちはみんないなくなっていた。
雪が止み、ほんの少しだけ陽が顔を見せた。
「また、来年もおいで。」
私の声だけがどこへともなく風に運ばれて飛んでいった。