8.魔物退治の依頼を受けます。
ミレーナとアレーナと共に、今ギルドの中にいる。
私たち三人が何をしているかというと、ギルドに登録して初めての討伐依頼をこなそうと決めたため、三人でどの依頼が良いか悩んでいたのだ。
魔物を討伐するという事だけなら、祖国に居た頃からやっていた。解体だってある程度は出来る。でも冒険者として討伐依頼を受けるのは初めてだし、討伐依頼もそれなりに数があるからどれか受けてみるべきかというのを悩んでいたの。
三人で考えていると、どの依頼を受けようか悩んで決まらなかったのでギルドの受付嬢のラカさんに相談してみる事にした。
「私たち、討伐依頼を受けようと思うのですが、どれがおすすめですか?」
「討伐依頼ですか……。ケーシィさんたちは武器を扱えるようにはあまり見えませんが、魔法が使えるのでしょうか?」
「はい。私たち三人とも魔法はそれなりに使えます。ギルドには登録していませんでしたが、魔物の討伐経験もあります。ただ、ギルドに登録して依頼という形で討伐をするのは初めてなのでどれがおすすめかなと思いまして」
私がそういうと、ラカさんは私たちをまじまじと見た。この世界は前世と違って見た目で実力を判断できない部分が大きいけれど、私たちはギルドに登録したばかりであるし、本当に討伐経験があるのだろうかと測りかねている部分もあるのかもしれない。
ギルドの登録したばかりの新人がそういう誇張をする場合もあると聞く。
「そうですか。討伐経験はあっても依頼をきちんと受けた事がないのでしたら、まずはゴブリンの退治からやってはどうでしょうか? ケーシィさんたちが討伐してきた魔物がどのような魔物かはわかりませんが、高位ランクに上がるにつれ人型の武器を持つような魔物たちと戦う事もあるでしょう。その練習も含めてゴブリン退治はやっておいた方がいいです。ゴブリンはにおいもしますし、新人は敬遠しがちですがそういう忌避される討伐依頼だからこそやっておいた方がのちのためになりますから」
ラカさんは少し考えてから、そういった。
ゴブリンは一般人でも倒せるぐらいの弱さであるが、繁殖率が高い生き物だ。数が少ないうちは脅威にはならないが、稀にゴブリンキングが現れるとものすごい数になり、村をいくつか滅ぼしたという例もある。単体では雑魚といえるけれど、群れると恐ろしい生き物だ。
ゴブリンは基本的にどこにでも生息していて、どこのギルドでもゴブリン退治は頻繁に依頼に出されていて、新人たちが受けていくものらしい。
ラカさんのアドバイスを聞いて、私たちはゴブリン数体の討伐依頼を受ける事になった。その依頼は、ゴブリンが畑の作物を盗んでいく事が数件おきて困っているというものだった。
被害を受けている畑は、大体同じ地域に存在し、同じゴブリンたちが窃盗をしているのではないかとされている。
ゴブリンは素材になる部位がほぼない魔物なので、討伐証明書であるゴブリンの耳を持ってきてくれと言われた。また殺したゴブリンはきちんと死体処理をするようにとも注意された。死体の処理をしなければ、死体に魔物がよってきたり、アンデット化したりといった問題が起こる。新人の中には死体をそのままにして問題になる冒険者も居るらしい。
ラカさんから魔物の討伐依頼の注意をいくつか受ける。
その話をきちんと聞いた後は、討伐依頼に出掛ける準備をするためにいくつか道具を買う。ゴブリン退治ぐらいなら準備をしなくてもどうにでもなるかもしれないが、世の中油断をしていると足元をすくわれる事もあるし、準備をするに越したことはない。
「シィ姉様と私たちの魔法があれば大丈夫だと思うけど」
「ミレーナ、そうだったとしても油断はしない方がいいわ。何があるか分からないでしょう?」
もしかしたらゴブリン退治の中で、他の強力な魔物に遭遇してしまうなんてこともあるかもしれない。それに前世の記憶があるからこそ余計何があるか分からないと思うのだ。前世の私は死ぬとは思っていなかった。でも、死んだ。そして転生した。
冒険に出掛ける準備をするというのも冒険者らしくて、何だか楽しい。準備を楽しそうにする私を見ながら、ミレーナとアレーナも笑っていた。
そして、準備をしていざ、ゴブリン退治に向かう事になった。
ゴブリンが畑の作物を盗みに来る時間は決まっておらず、不定期にやってくるという。依頼を出した農家さんたちの家にまず向かう。討伐依頼に来ましたといったが、農家さんは私たちにゴブリン退治なんて出来るのかと不安そうだった。
三人で畑を見張る事にした。
正直今日来るかもわからないが、見張るにこしたことはない。
最後にゴブリンたちが盗みに来たのは三日前と聞いた。今日は来るだろうか、そう思いながら見張っていたら一時間ほどして運よくゴブリンたちの姿が見えた。