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その後の冒険者としての日々 ④

 詠唱を紡ごうとした瞬間、その魔法使い殺しが私に沈黙を付加する。

 喋れなくなるのって、こういう感覚なんだ……って私は驚いた。



 だって沈黙の状態異常を付加する魔物と戦うのは初めてだったのだもの。こういう他にはない能力がある魔物は警戒しなければならないわ。

 こういう相手でも私の憧れるマリアージュ様は、簡単に倒してしまえるはずだもの!!

 詠唱破棄で、私は魔法を行使する。水の魔法で魔法使い殺しを水中に留める。

 詠唱なしだと、魔法って本当に難しいわ……。でもマリアージュ様は詠唱破棄でも魔法をどんどん使える方なの。私は魔法をもっと上手に使えるようになりたい。それにソル君が私なら出来るって信頼してくれているのだもの。なら、それにこたえられる私でありたい。

 私はソル君に守られるだけの存在ではありたくない。だから、頑張るの。

 水中に閉じ込めたのだけど、魔法使い殺しは驚くことにそこから勢いよく飛び出した。魔法に対する対抗力でもあるのかもしれない。魔法使い殺しと言われる所以は沈黙の異常状態を付加することだけじゃなくて、そういった面も一つの理由なのかも。

 ソル君もアレーナもミレーナも、私が魔法使い殺しと対峙しているのを見守ってくれている。

 私が危険な目にあったら手助けはしてくれるだろうけれど、うん、私は一人で出来れば倒したい。

 《アイテムボックス》から魔法使い殺しを倒すために用意した拘束の魔法具を取り出す。

 すばしっこいから、このまま自由に動き回られるとこっちがやられてしまいそうだもの。

 私も武器の扱い方などは国を飛び出す前よりは得意になった。とはいえ、接近戦はやっぱり魔法と比べてみると得意ではないのだ。

 この魔法使い殺しは、魔法使いを沈黙状態にさせて一気にその力で押し切るタイプである。魔法使い殺し自体は魔法を使えるわけではない。

 というか、魔法使いは魔法だけに特化していて接近戦が苦手な人も多いのだ。そういう相手に対して魔法を使わせないようにして、そのまま押し切る……中々凄まじい能力の魔物だと思う。

 基本的に冒険者は魔法使い一人で行動したりはしない。大抵はパーティーを組んでいることも多い。だけど魔法使いだけのパーティーでこういう魔物に遭遇すると下手したら全滅してしまう可能性もあるらしい。

 魔法使い殺しと魔法使いの相性は悪い。剣士などであれば、魔法使い殺しを倒すことはそこまで苦ではないらしい。

 魔法を使って、この魔法使い殺しを倒せたらかっこいいと思う。それにマリアージュ様に近づけるようなそんな気分になれる。

 ――だから、絶対に私は倒したい。

 魔法具はきちんと効果を発揮してくれた。

 魔法使い殺しは、その特定の場所でしか身動きが取れなくなっている。

 自分の意思に反して拘束されていることがよっぽど気に食わないのだろう。キエエエエエエと鳴き声をあげている。どこか人を不快にさせるような鳴き声は、不気味である。

 それに私が魔法具で拘束をしているということが分かっているのだろう。その魔物の目は、こちらを向いている。

 ……魔法具の効果もずっと続くわけではないから、今のうちに倒してしまわないと。

 そう決断した私は、魔法具を壊さないように魔法を行使していく。自分の魔法で拘束の魔法具が壊れてしまったら大変だもの。

 そういうわけで慎重に魔法を使っていく。

 相変わらず沈黙の異常状態は付加されたままだから、詠唱破棄の状態で次々と魔法を使う。

 詠唱破棄は魔法の操作も難しいし、魔力も詠唱をするよりもずっと沢山持っていかれる。

 何度も何度も魔法を行使して、だけど魔法使い殺しの身体は固く中々絶命しない。

 これだけ防御力が高くて、身体能力も高く、沈黙状態を与えてくるなんて本当に厄介な魔物だと思う。

 少しずつ魔法使い殺しが息絶えてきた!

 そう思ったのだけど、その時に最後の力をふりしぼった魔法使い殺しが拘束の魔法具を破壊した。

 私は慌てて、魔法を行使する。

 操作なんてあったものじゃないものになった。威力も魔力を思いっきり込めて行われたので、凄まじいものである。

 風の刃が次々と、魔法使い殺しに襲い掛かる。

 そして、ぴたりと動かなくなった。

 それと同時に私にかけられていた沈黙の異常状態もなくなった。

 どうにか倒せたらしい。

「はぁ……倒せた!」

 ほっとした私はそのまま座り込んでしまった。

 一人で倒すと意気込んでいたけれど、難しいかもと言う気持ちも途中で芽生えていたから。

 だからこうして、なんとか倒せて嬉しかった。……まぁ、最後の魔法で周りの地形が若干ボロボロになってしまったけれど。

 ああいう時も焦らずに魔法を使えるようにならないとなとその点は反省している。

「ケーシィ、お疲れ様。ちゃんと倒せてよかった」

「……でも周りの地形崩してしまったわ」

「それでも一人で倒せるなら十分だよ」

 ソル君は私に近づくと、そう言ってにこにこと笑った。



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