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その後の冒険者としての日々 ②


「ソル君、どんな依頼が受けたい?」

「俺は討伐依頼がいい」

 私とソル君は冒険者ギルドにやってきている。

 こうして冒険者として活動するのはやっぱり楽しくて、私は冒険者ギルドで依頼を選ぶのが凄く好きだ。冒険者になって時間が経っているのに、いつまでもドキドキが止まらない。

 私たちパーティーは少しずつ有名になっているのかなとは思うけれど、マリアージュ様のようにはまだまだなれていないから。

 もっと有名になって、そしてもっと魔法を使えるようになりたい。そんな願望がずっと渦巻いていて、私は時々、もっと上を目指したいなと無茶をしそうになる。

 その時はソル君やミレーナ、アレーナが止めてくれる。

 一人ですべてを決めてしまうと、やっぱり失敗してしまうことも多いもの。だから相談は大事だわ。

「ケーシィは、どんな魔物の討伐をしたい?」

「そうね……。あまり戦ったことのない魔物と戦ってみたいかも」

「じゃあ、この魔物にしようか」

 ソル君はそう言って一つの依頼書を手に取る。

 その魔物は、沈黙の異常状態を敵対する相手に付加してくるという恐ろしい習性を持つ魔物である。所謂魔法使い殺しと呼ばれるようなそういう魔物が、街からすぐ近い位置にある川に出没しているようだ。

「……詠唱破棄して魔法を使わなければならないわね。でも戦ったことがない魔物だから、良い経験になるわ。マリアージュ様ならこういう魔物でも簡単に倒すはずだもの」

「そうだね。母さんなら簡単に倒すだろうね。あの人、本当に色々おかしいから」

 ソル君はそう言いながら少しだけ遠い目をする。

 ソル君もギルドで有名になっているのに、活躍している凄い人なのに、それでもやっぱりマリアージュ様はずっと先に居る人なんだ。

 私だって前よりも強くなれたと思う。冒険者として少しずつ有名になれたと思う。

 だけれども、まだまだだなと思う。

「私もどんな魔物だって倒せるようになりたいわ!」

「ケーシィならきっと出来るようになるよ。ただちゃんと準備はしておいた方がいいだろうね。慢心は怪我の元だし」

「そうね。ソル君も冒険者になってすぐの頃は怪我をしたりしてしまったこともあったの?」

「うん。俺も仮にも母さんと父さんの息子だから、なんでもできるって思っていたんだ。特に他国に行ってからは結構大変だった」

 ソル君は本当に、色んな経験をしているなぁと思う。

 そんな会話をしながら依頼を受注し、一旦宿へと戻ってからミレーナとアレーナにも連携することにした。

 そういえば宿の部屋は、私とソル君、そしてミレーナとアレーナで二部屋取っているの。

 最初は二人で一部屋なのは緊張したけれど、恋人として過ごすことにも慣れてきた。

 ソル君と一緒に過ごせることが楽しくて、毎日幸せで……結構ふわふわした気持ちになっていたりもする。でもそういうふわふわした気持ちでいると怪我をしてしまうかもしれないもの。ちゃんと気を引き締めないと!

「シィ姉様、魔法使い殺しと戦うの?」

「楽しみだね! 私たちは魔法を使うから、ちゃんと対応しないと!」

「シィ姉様が魔法使い殺しを上手く倒すのを想像するだけでワクワクするね」

「シィ姉様の戦う姿って凄くかっこいいもんね」

 ミレーナとアレーナに次の依頼のことを告げれば、嬉しそうににこにこ笑いながらそんなことを言う。

 二人とも魔法使い殺しと戦うとなっても全然気にした様子はない。不安とかも一切なくて、どこまでも楽しそうで。

 そういうまっすぐで、前向きなところがミレーナとアレーナの素敵なところだと思う。

「見たことがない魔物と一緒に戦うことは私も楽しみだけど、もう少し気を引き締めましょう。私はミレーナとアレーナが怪我をしたら嫌だわ」

「ふふっ、シィ姉様は心配性だね」

「私はちゃーんと、気を付けるよ! 怪我をしたら悲しいもんね」

 私の言葉に二人は笑ってそう言った。

 冒険者なんて職業をしていると、怪我をしたり死にかけたり――そういうことがないわけではない。私たちが出来ることはそういう事態にならないように気を付けることが第一だ。

 マリアージュ様みたいに大活躍したいと思うけれど、そういう焦りで再起不能とかになったら大変だもの。

 私たちはその後、魔法使い殺しを倒すためにはどういった準備をした方がいいか、ということを話しあった。

 道具を購入したり、情報を集めたり……そういう準備をきっちりして、私たちは魔物討伐に向かった。



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