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6.魔法具とお兄様のこと。

 魔法具の店には、様々な魔法具があった。見ていてとても楽しい。

 魔法具の店は店によって置かれている魔法具が違ったりして、国を越えればその国の特色にあったものが多くなったりもする。故郷で訪れた魔法具の店とはまた違った魔法具が置かれていて、本当に見ていてわくわくした。

 魔法具は作り手がどんなものを作りたいかによって、様々なものが出来る。普及すべきとされている魔法具は、量産されているけれど、世界に一つしかない魔法具なんてものも沢山世の中にはある。作り手が気まぐれに作ったものとか。

 泣き止む赤ちゃんを笑わせるための、魔法具も置いてあった。これは発動すると色々な絵が浮かぶようになっていて、興味を持ってきゃっきゃっと笑ってくれたりするという。

 私はまだ十五歳なのだけど、やっぱり年上に見られてしまうようで「お姉さん、子供にはこういうものがどうだい?」といわれて何とも言えない気持ちにはなった。この世界の結婚年齢は速い。20超えたら嫁き遅れである。私はそれぐらいか、それより上に見えるらしいのだ。大人っぽいと思われる事を喜んでいいのか、老けて見えるのだと落ち込んだ方がいいのか……何とも言えない気分になるものだ。

 学園の中でも同じ年や挙句は年上の生徒にお姉様呼ばわりされていたけど、本当に彼らはなんで私をお姉様などと呼んでいたのか……。今考えても謎である。

 十五歳なので結婚もしていないんですよと告げたら「大人っぽいね」と店主のおじさんに驚かれた。

 冒険者をしているというと、こんなのはどうだい? と攻撃用の魔法具を薦めてくれた。火属性の魔法具なのだけど、私の場合は自分で行使したほうがはやい。お金に余裕があったら何かに使えるかもと、買ってもよかったかもしれないけれど正直現状無駄にお金を使うのは得策ではない。

 結局おじさんに「ごめんなさい、今日は買うのをやめておきます」と告げて魔法具の店を後にした。

 宿へと向かいながら、魔法の適性の事を考えた。魔法というのは、適性がなければ使えないものだ。火、水、風、土、雷、光、闇という7つの属性があって、その適性が白銀、金、銀、銅というランクに分けられる。例えば火属性が銅でもあれば、火をおこしたりといった簡単な事は出来る。店主のおじさんが薦めた火属性の魔法具は銀以上の魔法の込められたものだった。だから適性がないものや、銅ぐらいの適性の人ならあの魔法具があった方が冒険者として魔物討伐などの危険な仕事もやりやすいだろう。

 でも私は嬉しい事に、魔法の適性だけは誰よりもある。白銀が一つでもあれば、それだけでも相当優秀だといわれる。ちなみに私の憧れるマリアージュ様は白銀が火属性で、金は雷と闇で、銀が風と水で、残り二つの属性だけだったはず。世の中には金が雷にあったってだけでも国外に名を響かせている優秀な人もいるのだから、マリアージュ様の魔法適性の凄さがわかるだろう。マリアージュ様の旦那様は全属性使えるという話だけど、人が持っている属性は平均的に2~3だ。マリアージュ様が5つ持っているだけでも驚異な事である。

 ……私の場合は白銀が水と風と光で、金が火と雷と闇、銀が土である。女は魔法適性なんて量らなくていいって考えのお父様だったから、こっそりお兄様に手伝ってもらって量った。そしたらこんなとんでもない適性で、それなのに魔法を使うなとか才能の無駄遣いすぎると正直思った。最高適性の属性が三つもあるのにつかわないのかもったいなさすぎると思うのも当然だろう。それからお兄様に手伝ってもらって魔法について学んだんだ。

 そんな昔の事を思い出しながら、お兄様はどうしているだろうかと思いを馳せる。

 お兄様は優秀な人で、陛下からの信頼も厚かった。私がお父様から疎まれている中で、私を可愛い妹だって言って可愛がってくれていた。

 他国に向かう時、「はやめに帰ってくるからね、私のお姫様」と言ってにこにこ笑っていたお兄様。

 お兄様が出国した時期から考えてもそのうちお兄様は帰国するだろう。

 今頃、帰国の手続きを進めている頃だろうか。いつも他国に赴くたびに、私にお土産を買ってきてくれた。他国の興味深い話を沢山してくれた。お兄様に「お帰りなさい」と言えない事に少し寂しくなった。

 宿に戻ったら、ミレーナとアレーナも戻ってきていた。

 「お帰り、シィ姉様」

 「シィ姉様、どうしたの?」

 私の顔を見て二人が言った。

 「少しお兄様の事を考えていたら、寂しく感じたの」

 そういったら何だか知らないけれどミレーナとアレーナがこそこそと何かを話していた。

 「ルド様ならシィ姉様が勘当されたって聞いたらさ……」

 「うん。寧ろ……」

 「どうしたの?」

 顔を寄せてこそこそと会話をする仲の良い二人を見ながら不思議に思って聞いた。

 「んー、ルド様なら会いに飛んできそうだなって」

 「うん。勘当ってご当主様がしただけで、ルド様納得してないだろうし」

 「そう?」

 「そうだよ。だから寂しがらなくてもいいと思うよ! それより、魔法具見にいったんだよね? どうだったの?」

 「それがね、魔法具の店で――」

 それから私たちは魔法具の話で盛り上がるのであった。




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