12.パーティー 2
パーティーとグラン様に突然言われて、私は一瞬何の事なのだろうかと思った。そんなグラン様が私に語ったのは、今度行われるジェネット王国のパーティーにソル君と共に出席しないかという事だった。それもソル君の恋人として出席してもらって構わないと言われて、すぐに返事が出来なかった。
いえ、もちろん、ソル君の恋人としてパーティーに出席できるというのは嬉しいと思った。皆にソル君は私のものだっていうのを他の人に示す事が出来るのは私にとって喜ばしい事だ。だってソル君はとても綺麗な顔をしていて、かっこよくて、優しくて、私にとっては一番の男の子なんだから。
だからこそ、私はソル君は自分の恋人なんだというのを周りに示したいっていうあさましい気持ちを感じてしまっていた。だって、ソル君の事が好きだからこそこんな思いになってしまうのだ。
でも、私は他国で国外追放にされた身であるし、そんなパーティーになど参加していいのだろうかと思ってしまった。
だけど答えにためらっている私とは違って、ソル君とマリアージュ様は私がパーティーに参加する事に対してどこまでも乗り気だった。
ソル君に一緒にパーティーに参加したいと言われ、マリアージュ様にも大丈夫よ、私が守ってあげるからと言われ、大好きな人と憧れの人に勢いよくそんな風に言われて私は勢いに流されるままに頷いてしまった。
そのころにはちゃんと私がどういう事情で祖国に足を踏み入れられないかとかも言っていたけれど、マリアージュ様達は一切気にしなかった。マリアージュ様は自分が見たものや感じたものの方が信じられるからとにこにこと笑って告げて、私の事を抱きしめてくれた。
ソル君の恋人として、パーティーに参加する。そのことを考えただけで何だか緊張する。次期王妃として散々、パーティーには参加していたのに、こんな風に大好きな人の恋人としてパーティーに参加する事が出来るなんて嬉しくて仕方がない。こんな日が来るなんて考えてもいなかった。
「ふふふ、シィ姉様、良かったね」
「私達もフロネア伯爵家の客人として参加するから、楽しみー」
ミレーナとアレーナはスペル王国でパーティーなどに参加する事はほぼなかったはずだから、これが初めてのパーティーともいえるかもしれない。二人ともそれもあって楽しみで仕方がないのだろう。
ミレーナもアレーナも可愛いから、ドレス姿が似合うだろう。私も着飾った二人とパーティーに参加できるのは楽しみだ。
「パーティーは二週間後だけど、急げばドレスぐらい一から作るのも出来るわ! まぁ、新調しなくても全然いいんだけどね! どっちがいい? とりあえず商人呼んでるから! ケーシィもミレーナもアレーナもきっと似合うもの。メリッサとマリッサは今回王都にいるから参加しないのよね。それに二人とも私と一緒にドレス選び中々してくれないのよねー。まぁ、私もあんまりパーティーとか参加しないんだけど、今回は可愛い義理の娘のために参加するからね。あー、楽しみぃ!!」
マリアージュ様はとても興奮した様子で、私達にそう言った。そしてやってきた商人は、女商人で、マリアージュ様のすぐそばにいる私たちを見て目を輝かせた。
「まぁまぁまぁ、マリアージュ様、こちらのお嬢様方は?」
「ふふふ、私の息子の恋人とその妹分二人なのよ。綺麗だし可愛いでしょー。今回ね、この三人のドレスをって事で持ってきてもらったの。一から新調してもいいんだけど、二週間後だしね。三人とも遠慮して新調はしなくていいって言ってるし。まぁ、そんなわけで一先ず、新調はまた次の機会って事で」
「まぁまぁまぁ! どの息子様の恋人でしょうか? ラト様は恋愛に興味ないと聞きますし、マヒーユ様とガジュ様となると年が離れておりますものね。となると、ソル様でしょうか? ソル様もお帰りになられたのですか?」
「そうなの!! 色んな場所を見に行きたいって外に出ていったソルがこんなに美人さんを恋人として連れてきたの。凄く、綺麗でしょう? それに私に憧れているらしくて、凄く可愛いのよ!! その妹分たちもとってもかわいくて、私の娘が三人も増えたのよ!! あ、そうそう、ソルにもパーティー用のタキシードを用意してほしいの。まぁ、先にこの三人のね」
「かしこまりましたわ。それにしてもとても美しい方とかわいらしい方ですわ。これなら色んなドレスが似合いそうですわ。一から作れないのは残念ですけれども、今回ですね、カタログとドレスを何着も持ってきましたので是非どちらがよろしいか考えてもらいたいですわ」
女商人さんもマリアージュ様と似たような興奮具合で話している。私達が口を挟む暇がない。ミレーナとアレーナはとても面白そうににこにこしているけれど。
「双子様と言う事でしたら、同じような色違いのドレスはどうでしょうか。お揃いというのはとてもかわいらしいですもの!!」
「そうね。こんなに可愛い双子だからそれもいいわ!! メリッサとマリッサってば、この年頃では選ばせてくれなかったもの。すごく嬉しいわ。ああ、もう可愛い双子のドレスを選べるとか、いいわー」
お二人とも興奮した様子でまずはミレーナとアレーナのドレスを選んでいる。その横で私と双子はカタログに目を通している。
ミレーナとアレーナはマリアージュ様が選んだもので構わないと思っているのか、なぜか私のドレスについて選んでいる。
「ねぇねぇ、やっぱシィ姉様は体のラインが分かるものとかがいいって」
「ほらほら、こういう胸を強調させているものとか!!」
二人とも意気揚々としている。私はもう少し恥ずかしくないものがいい。……だって谷間とか分かるようなのとか、恥ずかしいじゃない。
って、思っているんだけど、ミレーナとアレーナのドレスを選び終えた商人とマリアージュ様も加わって、私のドレスはちょっと胸とかが強調されているものになってしまった。




