11.パーティー 1
七人兄妹なのに一人書き忘れてたので前話で追加してます。
マリアージュ様に出会って、数日。
私達はまだフロネア伯爵家に滞在している。フロネア伯爵家はとても居心地が良い。私やミレーナ、アレーナの事を本当に娘のように受け入れてくれていて、フロネア伯爵家の事が大好きになった。
この一週間、私は出来うる限りマリアージュ様の傍にいるようにしていた。というのも、やはり私は憧れの人の傍に居たくて仕方がないのだ。マリアージュ様は領主とはいえ、内政はグラン様や文官にほぼ任せているので、空いている時間はあった。
その空いている時間に、沢山お話をしてくれた。マリアージュ様に憧れてやまない私は、マリアージュ様とお話が出来るだけでも嬉しくて仕方がなかった。
他のフロネア伯爵家の方々とも、沢山のお話をした。
フロネア伯爵家の方々は皆が忙しそうだ。
マリッサ様とメリッサ様はこの前は領地に帰ってきていたが、二人とも王都で魔法の研究職をしているらしくて、王都に行ってしまった。ラト様も同じように王都で騎士をしていると王都に行った。
十歳のマヒーユ君と七歳のガジュダ君と五歳のヤージュちゃんは、貴族の子息としての勉強をしたり、剣や魔法を習ったり、友達と遊んだりと忙しいらしい。
丁度、初めてフロネア伯爵家にやってきた時に、マリッサ様とメリッサ様、ラト様がフロネア伯爵家にいたのはたまたま運が良かったようだ。タイミングが悪ければ兄妹全員に当日に会えなかっただろうという話だった。
「マリアージュ様、ヤージュちゃん、凄いですね……」
「ヤージュは私の子供の中で一番、私に似てるのよね」
ヤージュちゃんが魔法の練習を中庭でしていた。それを私とマリアージュ様は室内から見ていた。ヤージュちゃん、まだ五歳なのに魔法を上手に使っていた。それもほとんど詠唱をせずに操っている。魔法が大好きだからこそ、五歳であれは異常だというのがよく分かる。
「マリアージュ様に似ている、ですか」
「ええ。見た目もそうだけど、中身も似ているわ。私も昔からあんなふうに魔法を使っていたのが思い出されて懐かしい」
幼い頃のマリアージュ様と重なる姿。——ヤージュちゃんは、凄い。見ていればそのすごさが実感出来て、そのずっと先にマリアージュ様がいるのだと思うと、本当に尊敬する。
マリアージュ様が魔法を使っているのを見させてもらったけれど、マリアージュ様は本当に簡単に魔法を使うのだ。それでいて剣技も誰よりも持ち合わせているなんて本当に凄すぎる。私はマリアージュ様ほど魔法が使えないし、剣もそこまで出来るわけではない。そう思うと、本当に私の憧れの《炎剣帝》は凄いと思ってならない。
「ケーシィ、また、母さんといたの?」
マリアージュ様と話していれば、ソル君がその場にやってきた。ソル君は少しだけ不満そうな顔をしていた。
「ソル君、どうしたの?」
「どうしたのって、ケーシィ、母さんの事、本当に好きだよね」
「ええ。憧れているもの」
ソル君が何を言いたいか分からずに、少しだけ首をかしげてしまう。ソル君はどうしたのだろうか。そんな風に思っていたら、マリアージュ様がクスクスと笑う。
「ソルは私に嫉妬していると思うわ」
「え」
「ふふふ、可愛い恋人が私の傍にばっかり来るからソルってば嫉妬しているんでしょ? うちの息子、可愛いわー」
マリアージュ様はにこにこ笑いながらそう告げて、ソル君に近づいたかと思うと、その頭を抱える。
「よしよし、お母さんは可愛い恋人をソルから取ったりしないから安心してね。寧ろ、まとめて愛でたいから」
「……母さん、子供扱いはやめてくれる?」
「十三歳なんてまだ子供よ。というか、いつまでたっても我が子は可愛い子供でしかないもの。本当可愛いわ!!」
マリアージュ様の言葉を聞きながら、私はマリアージュ様の言葉を頭の中で反芻する。ソル君が、嫉妬。私がマリアージュ様の傍にばかりいるから不満に思ってた。……それって、嬉しい。ソル君はいつも余裕そうで、そういう感情をあらわにしてこなかった。
私がマリアージュ様の傍にばかり行くからって、そういう風に思ってくれてたんだと思うと嬉しかった。それにソル君が可愛い、と思ってならなかった。
「ソル君、ごめんね? ちゃんとソル君の事も大好きよ」
「……うん。知ってる。でもちょっと、俺の事を放置しすぎだと思う」
「ごめんね、ソル君」
私がそう言って笑えば、ソル君は仕方がないなぁとでもいうような笑みを溢してくれた。
「はぁ、可愛いわー。うちの子可愛い。美少年と美女が相思相愛でにこにこ笑いあっているとか、ヤバい。此処は楽園かな? やばいやばい」
……ソル君を離したマリアージュ様が鼻を抑えてなんかぶつぶつ言っているが、小さすぎてその声はよく聞こえなかった。こうやってマリアージュ様が自分の世界に入ってしまう事はよくある事らしい。
その後、ソル君に思いっきり構った。ソル君に構うのは楽しかった。ソル君が可愛くていとおしくて仕方がなかった。
ソル君をかまってしばからくして、グラン様がやってきた。私やソル君に話があるという事だった。なんだろうと思っていたら、「今度パーティーがあるから出ないか?」というお誘いだった。
ちなみにその間もマリアージュ様はずっとぶつぶつと言いながら自分の世界にトリップしていた。




