9.ソル君の実家 4
「ケーシィって十五歳なの!? そんなにボンキュッボンなのに? 私が十五歳の頃と比べたらくらべものにならないぐらいなんだけど。……ケーシィ、一緒にお風呂入らない?」
年齢を聞かれたので、告げるとマリアージュ様が何だか興奮したように迫ってきた。……マリアージュ様って、ソル君が言っていたように私の見た目を気に入ってくれているみたい。時々、変態みたいな発言をしているけれど、それでも私のマリアージュ様に対する憧れの気持ちは薄れない。
こんな個性的な性格をしていようとも、マリアージュ様はやっぱり私のあこがれている英雄なのだから―――。
私は今、ソファに腰かけてソル君の家族たちと雑談をしている。
「母さん。俺の恋人に変な事しようとしないでね」
「もー、ソルってばケチね。いいじゃない、別に。だってソルの恋人って事は私の娘みたいなものでしょ? それに私の事キラキラした目で見てて可愛いじゃない! 私の娘達ってこんな目で私の事見てくれないんだもん」
「それはお母さんが変態だからだよ」
「それはお母さんが残念な英雄だからだよ」
ソル君が”俺の恋人”って言ってくれた。それだけでも何だか胸が熱くなる。ソル君の言葉の一つ一つにときめいてしまって、好きだなぁと思うんだ。
それにしてもフロネア伯爵家の方々は本当に仲が良いんだなぁ。ご家族と話しているソル君は、また違った一面を見せている気がして、何だか嬉しい。
「シィお姉さんもミレーナお姉さんもアレーナお姉さんも綺麗だね!!」
フロネア伯爵家の一番末っ子であるという五歳のヤージュちゃんは目をキラキラ輝かせていて、何だかかわいらしい。
グラン様もマリッサ様もメリッサ様も、そしてソル君も人形みたいな美しさを持っているけれど、末っ子のヤージュちゃんはマリアージュ様にそっくりだ。でも表情とかが豊かでかわいらしくて、思わず頭を撫でてしまった。
「それにしてもソルとケーシィの差は二歳差か。最初、お前もか……と思ったんだけどな」
「グラン様、それってどういう事ですか?」
「……俺とマリアージュが八歳差で、結構年が離れているのは知っているか?」
「はい。存じております」
「……なぜか知らないが、子供達も割と年の差が激しい相手を好きだったりするんだよ。だからソルがケーシィを連れてきた時はソルも年上連れてきたなぁと思ったんだが」
どうやらフロネア伯爵家は、年の差がある相手を好きだったりする事が多いようだ。マリアージュ様とグラン様が年の差結婚しているからそれに似たのだろうか。……というか、それにしてもやっぱり私は十五歳より年上に見られてしまうのね。
「年の差がある相手が好きって、マリッサ様達も?」
「そうなの? 何だか面白いですねー」
ミレーナとアレーナはグラン様の話を聞いて、何だか面白い事を発見したとでもいう風に好奇心旺盛な目でマリッサ様達に視線を向けた。
「そうね。私は十五歳年上の騎士様が好きなの!! そろそろ陥落してくれそうなので頑張ってるのよ」
「私は私の事好き好きいってくれる子が可愛くて可愛くて仕方がなくて……。大人になるまで嫁き遅れと言われても待とうと思っているの。それで結婚出来なかったとしても可愛いからもう、問題ないもの」
マリッサ様は十五歳年上の騎士様が好きで迫っているようだ。マリッサ様が十六歳らしいので、三十一歳? それでメリッサ様は何歳かは言っていないけどまだ子供の男の子が可愛くて仕方がないようだ。
思ったよりも年の差があったので少しびっくりした。
流石に五歳のヤージュちゃんはまだ恋とかしていないようだが、割と皆年の差がある相手に恋慕を抱いているようだ。
「むふふっ。マリッサとメリッサの相手もかっこよかったりするからいいわよねー。是非並べてこう愛でたいわ。子供達の結婚式には女神であるサーラ様も呼んで、こう素晴らしい楽園を私は見たい」
何だか妄想しているのか、マリアージュ様がニヤニヤしながらぶつぶつ言っていた。ソル君に聞いたらよくある事らしい。ちらっと聞こえてきたサーラ様というのは、降嫁した元王女でマリアージュ様と仲が良いようだ。
ぶつぶつ言っているマリアージュ様をどうするのかと思えば、グラン様が、キスを落として停止させていた。
「マリアージュ、俺の顔好きなんでしょ? 他の人の事色々言うより、俺の事もっと見てよ」
「……もー、可愛いなぁ、グランは!!」
本当にマリアージュ様とグラン様は仲が良いなぁ。それにしてもキスをするのをソル君がためらわないのはグラン様に似たのだろうか。
そこまで考えてはっとなった。そういえば、買ってきたお菓子を出していなかった。
慌てて気づいて色々なお菓子を出せば、嬉しそうにお礼を言ってくれた。マリアージュ様がバクバクとお菓子を口に含み、その様子をグラン様が優しく見つめている。ああいう表情とか、ソル君に似てるなぁと思った。
そんなこんなしていれば、どうやら屋敷に居なかった残りの兄弟がかえってきたようだった。




