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6.ソル君の実家 1

「じゃあそろそろ俺の実家に行こうか」

 ある程度、近場のマリアージュ様に関する資料や跡地などを見て回った後に興奮している私にソル君は笑いかけた。

 私はマリアージュ様の事が知れて、胸が高鳴って仕方がなかった。そんな中で、ソル君の実家に今から行くことをソル君の言葉で思い出した。

「……着替えた方がいいわよね」

「大丈夫だって。そのままの格好でも俺の実家は気にしないよ。俺が冒険者としてうろうろしている事、実家は知っているしね」

 冒険者としての動きやすい恰好よりも、もっと着飾った方がいいのではないかと思ってならない。だけど、ソル君はそのままで大丈夫などといって笑みを浮かべている。

「どっちにしろ、実家についたらケーシィもミレーナもアレーナも、着せ替え人形みたいにはされそう」

「着せ替え人形?」

「うん。綺麗な見た目している子の事、母さん好きだからね。どうせ、俺の実家で強制的に着飾る事になるだろうから」

 強制的に着飾る事になるか。行く前からソル君のお母様に気に入ってもらえると言ってもらえる事は嬉しいけれど、本当に気に入ってもらえるのだろうか。気に入ってもらえなくてもいいから、嫌われたり、ソル君にふさわしくないって言われなければそれでいいと思ってしまう。そんな風に言われてしまったら私はどうしたらいいか分からなくなってしまうから。

「まぁ、とりあえず俺の実家についてはついてからちゃんと説明するから、それまでは質問なしね」

 続けて告げたソル君は、それはもう楽しそうな笑みを浮かべていた。なんというか、面白がっているというか、何かを企んでいるような少しだけ悪い笑み。ああ、でもこういう表情を浮かべているソル君もかっこよくて仕方がない。胸がときめく。

 ソル君の表情を沢山知っていきたい。様々なソル君の事を知って、ソル君の事を一番知っているのが私であったらいい。なんて、そんな独占欲のようなものを持っている事をソル君が知ったら引かれてしまうだろうか。

「ええ。分かったわ」

「ソル君がそんな風に言うとか、どんな実家か楽しみ」

「私達を驚かせようとしているのかな? ソル君の実家、わくわく」

 頷いた私に対して、ミレーナとアレーナは口元を緩めて楽しそうだ。

 ソル君の実家は、資料館のある場所から少しだけ馬車で進んだ場所にあるらしい。と言う事で、馬車に乗ってそちらに向かう。

 ……馬車の御者の人も、ソル君の事を知っているみたいでソル君を見て笑みを浮かべていた。ただソル君の実家については一切、誰も口にしていない。最初にフロネア伯爵領にたどり着いた時に、ソル君が秘密にするように見たいな仕草をしていたのが、全員に伝わっているのだろうか。ソル君の影響力が凄まじすぎて私は戦慄してしまう。

 ソル君がどういう立場の人間なのだろうかって、正直気になって緊張している。でも今日、ソル君の事をもっと知れるんだと思うと私は嬉しくて仕方がない。

 緊張と、嬉しさと、不安と、期待。

 そんな感情が私の心の中を渦巻いている。

「ふふふ、シィ姉様、凄い緊張してるー」

「緊張してるシィ姉様可愛いー」

「……二人はそういう緊張とかないの?」

 私と違って、不安も何も感じていない様子の二人に思わず聞いてしまった。

「全然! 寧ろ、楽しみで仕方がないよ。ソル君が何か企んでいるように笑ってるしさ。絶対に面白い事になるの確定しているもんね」

「だよね。確実に面白い展開にしかならないよ。それが分かっているのに緊張なんてしないよ」

「シィ姉様も、ソル君が大丈夫だって言ってるんだろうし、笑おうよ。シィ姉様の可愛いスマイルでソル君のご家族もノックアウトさせちゃおう!」

「美女が好きだっていうならシィ姉様なら何も問題なしだもんね。シィ姉様、凄く綺麗だからもっと自信持てばいいんだよ!」

 ミレーナもアレーナも本当に元気だ。この二人ならば恋人の家族に出会うという状況になっても、常にこんな調子かもしれない。二人があまりにも元気だから、思わず私も笑ってしまう。私が笑みを溢せば、二人はまた嬉しそうに笑った。

 

 そんな会話を交わしていれば、目的地についたらしい。


 ソル君に促されて馬車から降りる。そして視界に入った建物に私は目を見開いてしまった。

 屋敷があった。——明らかに貴族が住まうような外周が壁に囲まれた、大きな屋敷。ソル君は驚愕している私やミレーナ、アレーナを置いてすたすたと正門の方へと向かう。正門には警備の兵士が立っている。私達は慌ててソル君の後を追った。

「何か御用ですか?」

「あれ? 最近、ここに配属になった人? 俺はソル。二年ぶりに帰ってきたんだけど、それで分かるよね?」

「えっと――」

 新人らしき兵士とソル君が話していれば、奥から別の兵士がやってきた。その人はソル君の事を見て、声を上げる。

「ソル様!? お帰りになられたのですね、どうぞ!!」

 ソル君の事を、”ソル様”と呼んで、中へと入るように促す。

「じゃあ、ケーシィ、ミレーナ、アレーナ、どうぞ」

「え、ええ」

「「うん」」

 そしてソル君に促されて、私達はその門を潜った。








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