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3.フロネア伯爵領 1

 フロネア伯爵領に到着した。まずはマリアージュ様の資料館などを見に行く予定なのだ。

「ソル――」

 フロネア伯爵領に入ったらソル君に声をかけようとする領民たちがそれなりにいた。ソル君がしーっと口元に指をあてれば、何だか了承したようにうなずいていた。ソル君がまだ秘密にしている実家の事と関係あるのだろうか。泊まるのはソル君の実家に案内してくれるという話だから、今日中にはソル君の事がもっと知れるんだなぁと思うと、嬉しくて仕方がない。

 それにしてもソル君って有名人なんだろうか。これだけ綺麗な顔をしていて、強くて、優しければそれは有名にもなるだろうと思うけれど……。

 マリアージュ様と夫であるグラン様についての資料館がそれぞれあるらしいのでそこに向かう。資料館の中へと入る時にまた、何かソル君が視線を浴びていた。……やっぱりソル君ってマリアージュ様と少なからず関係があるのかしら。これだけ強くてかっこいいのだから、領主に目をつけられて注目されている事もあるかもしれないし。

 マリアージュ様とグラン様の資料館はまとまっていた。まぁ、ご夫婦だからね。中に入ると一番最初に見えたのは、お二人の像であった。マリアージュ様とグラン様の等身大の像らしい。像という姿でもマリアージュ様の姿を拝見出来た事に私は感動してしまう。これが、マリアージュ様のお姿! と感動からその姿ばかりを見つめてしまう。

「あはは、と……グラン・フロネアじゃなくて、そっちの方ばっか見るんだね、ケーシィ」

「それはそうよ……。だってマリアージュ様は私の憧れなんだもの。お姿なんてスペル王国までは届いてなかったの。ようやく拝見出来たのよ。これが、《炎剣帝》マリアージュ・フロネア様……」

 もうこの像を見られただけでも私にとっては此処に来た甲斐があったと言えるわ。ソル君はその様子におかしそうにくすくすと笑っている。

「それにしても、マリアージュ様って……、思ったより普通?」

「もっと見た目からして美人系かと思ってた」

「ミレーナ、アレーナ、そんな失礼な言い方をしないの」

 でも確かに、スペル王国には噂でしかマリアージュ様の噂は舞い込んでこなくて、マリアージュ様はどんな方だろうって想像するしか出来なかった。圧倒的な力を若い頃から――それこそ少女と呼ばれるような年から見せつけていたジェネット王国の英雄。最強と名高い魔法剣士。圧巻するような炎を纏う女性。

 どれだけ気高く、どれだけ美しい人だろうかと想像していた。それか、スペル王国に噂として流れている女性とは思えないように背が高くて筋肉がついているような方なのだろうかとか。実際の姿が分からないからこそ、そんな事ばかりずっと考えていたのだ。でも実際の――像で見るマリアージュ様は想像していたよりもずっと普通な女性だった。背はそこまで高くなくて、それこそ平民にまぎれても分からないようなそんな素朴さを持っているように思えた。英雄だと最初から知らなければ、英雄だと思えないような。

 でもそんな想像とは違った姿だったとしても、私はマリアージュ様のお姿を拝見出来た事が嬉しくて仕方がなかった。

 私とミレーナとアレーナがそんな会話をしている中で、ソル君は資料館の人と何かを話していた。私がしばらくぼーっとマリアージュ様の像に見とれていれば、ようやくソル君が戻ってきた。それから資料館の資料を一つ一つ見ていく。私はそれだけでも嬉しくて仕方がなかった。

 今まで話でしか聞いた事がなかったけれど、憧れだった人。噂だけでも私の心を引き付けて、ああなりたいと願った人。もしかしたら噂しか知らないからこそ、近づけば近づくほど、マリアージュ様が理想と違うと思ってしまうかもしれないとさえ思ってた。でもそんな事はなかったと、像を見て確信した。

 マリアージュ様がお生まれになったのは、ジェネット王国の子爵家。田舎の子爵家で生まれたマリアージュ様にはご両親とお兄様がいた。お兄様は実家の子爵家を継いでいるようだ。下級貴族として生まれたマリアージュ様は昔から自由に生きていたようで、子供の頃の逸話なども書かれている。

「五歳の時にはもう魔法を使ってたって、規格外だよね」

「そのころから独学で魔法も使えていたって流石、英雄だよね」

 ミレーナとアレーナが言うように、資料によると五歳の頃にはもうすでに魔法を使えていたらしい。それも独学で使えていたなんて、どれだけ素晴らしいのだろう。私はずっと興奮している。それにそのころにはもう武器を手にしていたようだし。

「幼いころは感覚で魔法を使っていたみたいだよ」

「そうなの?」

「うん。だからこっちの資料みてもわかるけど、七歳の時に誘拐されかかって魔力を暴走させてる。これは制御とかを学んでなかったからだね」

「マリアージュ様は魔力量も多いそうだから、魔力暴走は大変なことになったでしょうね……」

「魔力暴走した跡地は、地面が変形しているよ。マリアージュ・フロネアの実家の領地だから少し行くのに時間がかかるけど、見に行きたいなら行く?」

「ええ。行きたいわ」

 ソル君と会話をしながらも私は興奮した心が治まらなかった。

 幼い頃のマリアージュ様の資料を見るだけでもこんなに高ぶっているのだから、もっと英雄として活躍しているマリアージュ様の事を私が知ったらどれだけ興奮するのだろうか。わくわくしながら私はマリアージュ様の英雄としての軌跡を追うのだった。





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