表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/76

2.フロネア伯爵領に向かう道中

 フロネア伯爵領に向かう。

 それを考えるだけで私は緊張をしてならない。フロネア伯爵領に向かって、マリアージュ様の居る場所を堪能して、それからソル君のご実家に向かう。マリアージュ様の地にたどり着けるというだけでも緊張するし、ソル君のご実家に行くのも緊張するし……。もう私は緊張しすぎてる。

「ケーシィ、緊張しているの?」

「……ええ。恋人何て出来るのも初めてだし、恋人の実家に行くのも初めてだし、マリアージュ様の居る場所を見て回れるのも緊張するし……」

 フロネア伯爵領に向かう馬車の中――たまたま、席が空いていたのでこの場には私達しかいない――で私達はそんな会話を交わす。

「ソル君のご実家もフロネア伯爵領の方にあるんでしょ?」

「ソル君の実家とマリアージュ様の故郷が一緒とか、凄い偶然だよね」

 にこにこと笑いながらミレーナとアレーナが言う。

 ミレーナとアレーナも、ソル君が実家についてから家庭の事を話してくれるという事を私から聞いている。ただフロネア伯爵領に向かうにあたって、ソル君のご実家から距離が離れていくのではないかと思って聞いたら、フロネア伯爵領方面にソル君の実家があるという事が聞けたのだ。それにしてもソル君はどうしてついてから話すと言っているんだろうか。少し疑問が残るけれど、ソル君の事を信頼しているから何も不安はない。

「……まぁ、本当、俺も凄い偶然だなと思うよ」

 ソル君は何か言いたそうな顔をしながらそう告げる。

 私が憧れてやまないマリアージュ様の所属国であるジェネット王国。そこの出身であるソル君と出会って、ソル君に恋して、ソル君と恋人になった。そしてフロネア伯爵領の方に実家がある。それってなんていう奇跡だろうか。

「フロネア伯爵領って、どんな所なの? ソル君」

「マリアージュ様が治める地なんでしょ?」

「フロネア伯爵領はマリアージュ・フロネアが治めているというよりも、実質的に内政をやっているのはグラン・フロネアや内政担当の者だけどね。……マリアージュ・フロネアはあくまでその実力をもってして、伯爵の地位をもらった英雄だ。内政をやっていないというわけではないだろうけど、どちらかというと戦う事がメインだろうから」

 フロネア伯爵領に近づいてきているからだろうか、ソル君がジェネット王国に入国するよりもマリアージュ様の事をよく口にするようになった気がする。

「マリアージュ様って、幼いころから凄かったのでしょう?」

「スペル王国にもそういう噂が入ってきているもの!」

「ふふふ、マリアージュ様がいる場所に行けるなんて夢みたいだわ」

 ミレーナ、アレーナ、私がそれぞれ口にすると、ソル君は楽しそうに笑っていた。マリアージュ様の事を私達が興味津々で聞いているのが面白いようだ。

「フロネア伯爵領では――というか、これはジェネット王国全体での話にもなるんだけど、マリアージュ・フロネアは恥ずかしがっていたけどその偉業をたたえて、資料館なども出来ている。マリアージュ・フロネアは王族とも、交流が深いから、それもあって全体的に伝えられている。フロネア伯爵領にも、マリアージュ・フロネアの銅像とかもあるし、そういうのを見て見たらきっとケーシィ達には楽しいと思うよ」

 《炎剣帝》マリアージュ・フロネア。それはジェネット王国が誇る英雄だ。歴史に残る英雄。生きる英雄である彼女の偉業を、王国が残さないはずもない。その《炎剣帝》の名は誰もが知っているだろう。教科書にも載っているらしいし。

 それにしてもジェネット王国は入国してみて改めて感じたけれど、スペル王国と比べて女性が表に出ている。爵位持ちの女性も多くいる。マリアージュ様もフロネア伯爵家の当主である。

「楽しみだわ!! マリアージュ様の銅像も見たいし、マリアージュ様の資料館も見れるだけみたいわ。マリアージュ様に関連するものをこうしてマリアージュ様の国で見れるなんて!」

 私はもう大興奮していた。だってマリアージュ様の居るこの国で、マリアージュ様の事を沢山知る事が出来るなんて興奮しかないわ。

「フロネア伯爵領についたら、まずはマリアージュ・フロネアに関連するものをみようか」

「宿をとるのはいいの?」

「フロネア伯爵領って旅行客も多いんでしょ。大丈夫?」

「問題ないよ。俺の実家に泊まればいいだけだし」

 ……ソル君のご実家、すぐに行ける距離なのかぁ。結局ソル君ってどういう家の出なんだろう。ソル君がどんな家の出身でも受け入れる気はあるけど、気になるから早めに知りたいなぁ。

 ソル君のご実家、ソル君のご家族。……本当に私がいきなりソル君の恋人ですって言っても大丈夫なのだろうか。ソル君のご家族に気に入られるように頑張ろう。……だって、ずっとソル君と一緒に居たいもの。ソル君は緊張しなくてもいいと言っていたけど、やっぱり緊張してならない。


 四人で会話を続けながら、私達は馬車に揺られた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ