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1.ジェネット王国に入国する。

 ジェネット王国についに足を踏み入れた。

 まだフロネア伯爵領についているわけではないけれど、それでも私の興奮は最高潮だった。

 だってマリアージュ様のいる国で、ソル君の故郷だよ。興奮しないはずもない。

「ジェネット王国についにたどり着いたのね!!」

「シィ姉様、大興奮~」

「まぁ、仕方ないね。シィ姉様、ずっとマリアージュ様の国に来てみたいって言ってたもんね」

 思わず大きな声を上げてしまった私に、ミレーナとアレーナも嬉しそうに笑っている。ミレーナとアレーナは、昔から私がマリアージュ様に憧れている事や、マリアージュ様の居るジェネット王国に行きたいと思っていた事をよくよく知っている。だからこそ自分の事のように喜んでくれているのだ。

「……入国しただけでこれなら、母さんに会ったらどうなるかな」

 ソル君がにこにこしながらぼそっと呟いていた言葉は、私には聞こえなかった。何か言ったか聞いてもはぐらかされたので、それ以上は追求しなかった。

「それにソル君のご家族と会うんだものね」

「何だか結婚の挨拶みたいだよね、シィ姉様」

「け、結婚って! ま、まだそんなのではないわ!!」

 そうだわ。ずっと来たかったジェネット王国に辿り着いたと興奮してならないけれど、ソル君のご家族にも会うんだわ。ソル君のご家族はどんな方かしら。

 それに一人で旅をしていたソル君が、旅から帰って来たら恋人を作っているって家族からしたらどう思えるんだろうか。……緊張してきた。ソル君は心配はないと言っていたけれど、冤罪とはいえ国外追放された私で反対されないだろうか。

「まぁ、ソル君もシィ姉様もまだ十三歳と十五歳だもんね」

「でも親への挨拶って婚姻の挨拶みたいだよね」

 ミレーナとアレーナは、それはもう楽しそうにからかうように笑みを溢している。

 ……本当にこの二人は私に恋人が出来たり、恋人の実家に行ったりすることが楽しみで仕方がないらしい。反対されるよりは良い事だろうし、応援してもらえるのは嬉しいのだけど、やはり恥ずかしい。

 私が恥ずかしがっているのを分かっていて、余計に二人とも楽しんでいるのは分かるけれど、すぐに顔を赤くしてしまう。

「ミレーナもアレーナもケーシィをそんなにからかわない。確かにからかうとケーシィは可愛いかもしれないけど」

「ふふ、ごめんね、ソル君」

「ふふ。そうだね、ソル君のシィ姉様だもんね!」

 ……私はそんな会話を聞きながら益々顔を赤くするのだった。何だろう、好きな人に可愛いと言われるだけで、こう……どうしようもない気持ちになる。心の奥底が温かくなっていくというか、満たされている気持ちというか。私って、単純だな。

「そ、そうだわ。ソル君の実家にお邪魔するのならば、何かお菓子でも買っていきたいわ」

「ケーシィ、そんなに気を使わなくていいのに。手ぶらでもうちの家族は特に気にしないよ」

 思わず話を変えるために告げた言葉にはそんな風に返された。でも流石に手ぶらでも気にしないと言われても、手ぶらで行くのはどうかと思うのよね。やはり、ここはきちんと好印象を持たれた方がいいわけで……。

「いえ、やはり手ぶらは駄目だわ。ソル君のご家族は好きなお菓子とかあるかしら?」

「うーん、皆割と好み、バラバラだからな。俺の家」

「そうなの?」

「うん。俺の家、兄妹多いし。……まぁ、無難に行くなら母さんの好みのお菓子を買っていけば、一先ず母さんと父さんの機嫌は良くなると思う」

「ソル君のお母様のお好みのもので、お父様も?」

「うん。父さん、母さんの事、大好きだからね」

 ソル君にそんな風に言われたので、ソル君のお母様が好きなお菓子を買ってフロネア伯爵領に向かう事になった。

 というわけで、ジェネット王国に辿り着いて、宿を取った後に向かったのはお土産売り場だった。

「シィ姉様、これとかは?」

「ソル君、これって、ソル君のお母さん好き?」

 などと、ミレーナとアレーナも問いかけながら一生懸命選んでくれていた。

 結局、ソル君の家族は多いとの事なので、一種類だけではなく何種類かの菓子を購入する事になった。すべて、ソル君に聞きながらソル君のお母様が好むものを購入する事になった。……ソル君のお母様ってどういう方なんだろうか。美女が好きとか、よく分からない事は聞いたけれど。

 ソル君の実家についたらソル君のご家族に、恋人として紹介される。それを思うだけで、体温が何度も上がる感覚がする。ソル君のご家族に挨拶……、いつか、お兄様にもソル君の事を恋人として紹介したい。

 お兄様は今頃、どうしているだろうか。ミレーナとアレーナは追いかけてくるにきまってる、などと言っていたけれど……。もう少ししたらスペル王国の情報を集めておこう。

「……ねぇ、ソル君。いつか、機会があったら私のお兄様に会ってくれる?」

 そう問いかければ、ソル君は笑顔で頷いてくれた。





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