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16.ジェネット王国へ向けて

4/8 三話目

 お祭りの後、ソル君と手を繋いで宿に戻った。ミレーナとアレーナもそれぞれ祭りを楽しんだようで、お祭りで手に入れた景品などを手に沢山持っていた。

 私とソル君が手を繋いでいるのを見て、目をキラキラさせて、「良かったね、シィ姉様」、「ソル君、シィ姉様の事、よろしくね!!」と駆け寄って言っていた。私が告白をしていないとは思わなかったようで、手を繋いでいるならば告白が上手くいったという事だろうと推測したらしい。

 この街を出る前に、エウフェー様達の元へも寄った。私の告白が上手くいった事を、心から喜んでくれていたけれど、何だか祝福されるのが嬉しくて恥ずかしかった。

「シィ姉様、ソル君、次はジェネット王国に行くんだよね?」

「やっと、目的地にもうすぐつくんだねー」

 ソル君への告白が成功した数日後、私達は宿をチェックアウトして街を出る事になっている。ミレーナとアレーナが言うように、私が祖国を出てからの一先ずの目的地であったジェネット王国にこれから向かうのだ。

 ――私の憧れの『炎剣帝』マリアージュ・フロネア様の祖国に。そして、ソル君の故郷でもある地に。

 ソル君の家については、ジェネット王国に辿り着いてから教えてくれるって言っていたけれど、結局どんな事情があるんだろうか。十一歳の頃からぶらぶらしているという事は、跡取りではないって事なんだと思うけれど。貴族だとは思うけれど、やっぱりソル君は謎だわ。でも、ソル君がどんな事情を抱えていても、ソル君とずっと一緒に居るの。

 私は一人で、そんな決意をする。

「ええ。まずは、フロネア伯爵領に向かいたいのだけど、いいかしら」

「うん、それでいいよ」

 憧れのマリアージュ様の治める領地。まずは、そこに向かおうと口にすれば、ソル君は笑顔で頷いている。そういえば、ソル君の出身領ってどこなのかしら。でもまぁ、着いたら教えてくれると言っていたから、しつこく聞くのはやめておこう。

「ねーねー、シィ姉様、ジェネット王国に行った後はどうするの?」

「そのあとって決めてないよね、確か」

「そうね……、しばらくジェネット王国に滞在した後は、出来たらもっと他の国も見てみたいわ」

 ジェネット王国に向かうというのが最初の目標。それを叶えた後はどうしようかと考えてみると、もっと他の国も見てみたい。見た事がない景色を見てみたいって思ったの。

「俺もまだ色んな所を見てみたいから、賛成」

「私も賛成ー」

「私もー」

 三人とも賛成してくれたので、次の目標も決まった。これで意見が分かれたらどうしようって思ったから良かった。沢山の場所を放浪した後はどこかの国に滞在して、魔法に関連する仕事をしたい。──もちろん、ソル君の隣で。恋人になってすぐに、こう、もしソル君と結婚出来たらって妄想までしてしまう。でもまぁ、ソル君もまだ十三歳だし、そういう話が出たとしても先の話だろうけど。

 でも、いつか――そういう未来が来たら嬉しい。そういう未来がくるように頑張りたい。

 ソル君の横顔を見ながらそう思った。

「ケーシィ、どうしたの?」

「……なんでもないわ。行きましょう」

 流石に、ソル君と結婚したいなんて思ってるなんて付き合いだして数日で口には出来ない。なのではぐらかして、行こうと促す。

 それにしてもジェネット王国はどんな所だろうか。マリアージュ様の故郷。ずっと、足を踏み入れてみたいと思っていた場所。そして今はそれだけじゃなくて、大好きなソル君の故郷でもある場所。きっと、ジェネット王国の事を私は好きになれる。まだ足を踏み入れてさえないのに、そんな考えに陥っている。

「ねー、ソル君、ここから馬車ですぐなんだよね?」

「うん。国境越えるのはすぐだよ。ただフロネア伯爵領だともう少しかかるけどね」

 すぐに国境を越えられる。ジェネット王国に足を踏み入れられる。そう思うと興奮してくる。

「マリアージュ様のいる場所……。そして、ソル君の故郷」

「あはは、俺、おまけ?」

「いえ、そんなことないわ! ソル君の故郷も、凄く気になってるわ。ソル君が幼少期を過ごした地やソル君の家族――私は沢山の事が知りたいもの」

「うん。ついたら教えるよ」

 ソル君がそう言ってくれるから、視線を合わせて笑いあう。

「シィ姉様とソル君、仲良しだね! ラブラブー」

「ラブラブな事は良い事だよね!」

 ミレーナとアレーナがからかうように笑っていて、顔が赤くなる。私、赤面してばかりな気がする。恥ずかしい。

「シィ姉様、すぐ赤くなって可愛いー」

「ねー、ソル君、シィ姉様、可愛いでしょー?」

「うん。可愛い」

 ……追い打ちのようにそんな会話がされて、私の顔は益々赤くなっていくのだった。

 そしてそんな会話をしながら私達は、街を後にするのだった。





 第三章 完




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