15.お祭りと、告白と 5
4/8 二話目
「……」
「ケーシィ、固まってるね」
キスされて、好きだと言われて、私はフリーズしてしまっていた。
目の前で、ソル君はにこにこしている。ソル君の笑顔、私は好きだなぁって、違う違うそうじゃない。
「はっ……え、えっと、キ、キス」
「うん。ごめんね、可愛いなと思って」
「……い、いえ、う、嬉しいからいいの。で、でもちょっと、び、びっくりして」
ソル君にキスされた。それを実感するだけで、益々私の顔は、真っ赤だと思う。というか、好きだって、ソル君が好きだって……言ってくれた。私の方が年上なのに、全然、余裕がない。ソル君の方がずっと、大人だ。二歳も年上なんだし、前世の記憶があるからもっと大人の余裕を見せれそうなのに……と少しショックを受ける。
「初めてだったの?」
「え、ええ。ソ、ソル君は……?」
さらっとキスされてしまったけれど、ソル君って手馴れているのかもしれない。そう思って問いかけてしまった。これで女遊びしてましたとか言われたらちょっとショックかもしれない。いえ、でもソル君ってかっこいいから、そういう過去があってもおかしくはないけど。
「いや、俺も初めてだけど」
「……でもなんか、手馴れてる感が」
「んー、まぁ、母さんと父さんが結構キスしてるの見てたしね」
どうやらソル君のご両親の仲はとても良好なようだ。
「あ、そうだ。俺の実家の事なんだけど」
「ええ」
「ジェネット王国についてからちゃんと説明するよ。それでもいい?」
「ええ、もちろん」
「まぁ、ケーシィが心配する事は全然ないから。寧ろ、ケーシィにとっては喜ばしいものだと思うよ」
何だか、ソル君がよく分からない事を言っているけれど、ソル君について知れるのならば今でも、後からでもどちらでも構わない。
「えっと、ソル君。……私達、恋人になったって事でいいんだよね?」
「うん」
「ふふ……私、恋人とか初めてだわ」
前世も含めて、初めての恋人。ソル君と、恋人になれたって何だか嬉しいなぁとそんな気持ちがあふれて、笑みが零れる。
「うん、俺も初めてだよ」
「嬉しい。私ね、告白が上手くいかなかったら、ソル君とこのまま別れようって思ってたの。だから、ソル君が、私の告白受けいれてくれて嬉しいの。ソル君と、もっと一緒に居れるのが嬉しいの」
嬉しくてたまらなくて、素直にそんな言葉が私の口から紡ぎだされる。誰か他の人がいる前では恥ずかしいからこんな風に口には出来ないけれど、今は私とソル君しかここにはいないから。
ソル君と、もっと一緒に居れるんだなぁと思うと心の奥が温かくなる。私、本当にソル君の事が好きだなぁ。
「さっきから、ずっと可愛い事言っているね、ケーシィ。あんまりそういう事、他の人に言ったらだめだよ?」
「……ソル君にしか、言わないもん」
「ならいいよ。花火、見ようか」
「……うん」
こうして話している間にも、花火はずっと上がっていた。ソル君への告白とかで、頭が一杯一杯になっていて、見れてなかった。この場所はソル君が言っていたように、花火がよく見える。
ソル君と手を繋いで、ソル君の温もりを感じながら花火を見ている。どんどん上がる打ち上げ花火。何て、綺麗なのだろうか。こんな光景をソル君と一緒に見る事が出来て、何だか嬉しい。
「綺麗だね、ソル君」
「うん」
「……また、一緒に花火見れたらいいな。ううん。花火だけじゃなくて、ソル君と、もっといろんなお祭りとか見て回りたい」
「うん。見て回りたいね」
ソル君が私の言葉に頷いてくれる事が嬉しい。同じ気持ちでいてくれているという事が嬉しい。こうして、好きな人が、私の事を好きだって言ってくれる。それってありふれているようで、奇跡的な事だと思う。人の気持ちというのは、他人がどうこう出来るわけではないから。だから――私を好きだと、ソル君が返してくれた事は奇跡なんだ。
「ソル君の事、私、もっともっと知りたいから、沢山教えてね」
「うん。俺もケーシィの事、そこまで知らないから知りたいかな」
「ふふ。ソル君になら幾らでも私の事を教えるわ。ソル君になら、私のすべてを見せたいもの」
ソル君の事が知りたい。そしてソル君に私の事を知ってもらいたい。私はソル君になら、幾らでも自分を見せられる。
十三歳のソル君と、十五歳の私。
私たちは、まだ、二十歳にもなっていなくて子供だ。一年後も、五年後も、十年後も――ずっとずっと先までソル君と一緒に居たい。私の未来にソル君がいてほしい。
人の心何て今後、どうなっていくか分からないけれどそうあってほしいと私は望んでいる。
それから私達は花火が終わるまで、ずっと手を繋いだままだった。




