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14.お祭りと、告白と 4

 好きだと、私は口にした。

 そして、ソル君の言葉を待たずに私は言う。

「あのね、私、ソル君の事が好きなの。恋愛感情を持っているの。ソル君はとても綺麗で、優しくて、強くて」

 私がソル君を好きな気持ちを、ソル君に伝えたい。そんな思いで、私は言葉を紡ぐ。

「ソル君を初めて見た時から、綺麗だなと思っていたの。初めて戦うのを見た時も、なんて洗練された動きをするんだろうって見惚れていたの。だから自覚したのは最近だけど、私は最初からソル君に惹かれていたんだと思う」

 ソル君を好きだと自覚したのは最近だ。

 でも、私はきっと最初からソル君に惹かれていた。初めて見た時から、気になっていた。

「ソル君は私より年下だけど、私より沢山の事を知っていて……。尊敬もしているわ。ゴブリンの殲滅が終わった後も、一緒にいられるのが嬉しかった」

 私とソル君が出会ったのは偶然で。何か一つでも違ったら、一緒に冒険何てきっと出来なかった。

 ソル君の事は最初から気になっていたから、私はゴブリンの集落の殲滅が終わった後も、ソル君と一緒にいられる事が嬉しかった。

「他の冒険者に絡まれた時だって、決闘して手出ししないようにしてくれた。十三歳なのにギルドランクも高くて、凄いなってずっと思ってた」

 ずっとずっと、凄いなと感じていた。ソル君は、凄いって。

「ソル君がキュノーユさんの事を紹介してくれた時、もやもやしていたの。ソル君の事を、私は知らないのにキュノーユさんは知っているんだと思うとうらやましいと思ったの。盗賊退治の時も、ソル君はかっこよくて、私は――ソル君の事が好きだと気づいたの」

 もやもやしていた。ソル君と仲が良い女の子がいる事に。恋人でもないのに嫉妬していた私の事を、ソル君はどんな風に思うだろうか。

「ソル君の事が好きなの。だから、もっとソル君の事を知りたいの。ソル君と、ずっと一緒に居たいの。……こんな気持ち、ソル君にとって重たいかもしれないけど、私は、ソル君と死ぬまで一緒に居たい……」

 そこまで口にして、思わず下を向いてしまう。

 死ぬまで一緒に居たいなんて、年下の男の子に何て重い言葉を私は口にしているんだろうか。ソル君の事、そんなに知っているわけでもない。寧ろ知らない事の方が、ずっとずっと多い。なのに、ソル君が好きだという気持ちを口にしたら、こんなに重い気持ちがすらすらと口から吐き出された。

 私は、こんなにもソル君の事が好きなのだ。改めてその気持ちを実感する。ああ、もう、ソル君の反応が怖い。怖いけど、でも――私はちゃんとソル君と向き合いたい。

 ぽかんとした顔をしていたソル君の事を見つめる。ソル君は、次の瞬間笑った。

「えっと、ソル君……?」

 何で、笑うんだろう、そう思って問いかける。

 そんな私に、ソル君が次に言った言葉は私を固まらせるには十分だった。

「ケーシィって、本当、可愛いよね」

 笑みを浮かべて、そんな事を言われて私は頭が追い付かない。可愛い、って。可愛いって、ソル君が私に告げた。……そう理解して、私の顔がみるみる赤くなっていくのが分かった。

「顔、赤くなったね」

「……だ、だって」

「どうしてこんな可愛い恰好しているんだろうって思ってたけど、俺に告白するためだったの?」

「……そ、そうよ。わ、悪いかしら?」

「ううん」

 ソル君はくすくすと笑いながら、私に向かって近づく。私の顔は、益々赤くなっていると思う。

「俺は最初からケーシィの事、気に入ってたんだよ。俺もケーシィと一緒で、綺麗だなぁと思って。だから話しかけたんだけど」

「う、うん」

 な、何で至近距離にいるのかしら。ドキドキしながら私はソル君の言葉を聞く。

「こんな見た目なのにまだ十五歳だってのに驚いたし、魔法があれだけ出来るのも驚いた。だから、一緒にジェネット王国に向かおうと思ったんだけどさ」

「え、ええ」

「魔法が大好きで、魔法に関する事だとすごく張り切ってたりさ。それにちょっとした事気にしてたり――、俺に告白するからってこんな可愛い恰好してたり、ケーシィは俺より年上だけど可愛いなぁって」

 また言われて、私の顔はずっと赤くなったままだと思う。

 顔を手で覆ってしまいたい気持ちになる。でも、ちゃんとソル君の言葉を聞きたいから、覆わない。

「ケーシィに告白されて、俺嬉しいとか、可愛いしか感じてないんだよね」

 そう言いながらソル君は私に向かって手を伸ばす。ソル君の手が私の頬に触れる。

「この気持ちなんだろうって、考えたらさ、ケーシィと同じなのかなって」

「えっと、そ、それって」

「うん、だから――」

 ソル君はそう言って、顔を近づけてくる。え、と思った次の瞬間には私の唇に、ソル君の唇が当たっていたって、キスされた? 私の頭の中は真っ白だ。そんな私の耳にソル君の声が聞こえてくる。

「俺もケーシィの事、好きだよ」

 そんな言葉と共に、丁度、後ろでは花火が上がっていた。





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