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12.お祭りと、告白と 2

 ソル君と手を繋いでいる。——その事実だけで、私はドキドキしている。前世の記憶持ちで、ソル君より精神年齢はずっと年上なのに、私には余裕がなかった。

「ケーシィ、どうしようか。何か見たいのとかある?」

「ええっと……私、このお祭りについて詳しくないの。だからソル君のお勧めを見せてもらってもいい?」

「いいよ」

 もう少しお祭りについて調べておけば良かったかもしれない。でもソル君をお祭りに誘う! そして告白するんだ! っていうその気持ちばかりに囚われていて、そこまで考える余裕がなかった。

 ソル君に手を引かれて向かったのは、この街の中心部にある広場だった。その広場ではこれから一つの劇が行われるらしい。ソル君と隣り合わせに座って、劇が始まるのを待った。始まるまでの間にソル君が教えてくれたけど、お祭りが何故今日行われているか劇を見たらわかるのだって。

「街には優しい領主がおりました。その領主の元で我々は笑顔で暮らしておりました。しかし、領主がなくなってから、街には暗雲が立ち込めました」

 そんな言葉から始まった劇。

 話の内容はこうだった。

 元々この街は、穏やかな街だった。優しい領主の元でのびのびと暮らしていた街の人々。しかし、優しい領主亡き後に後を継いだ新領主はそういう人間ではなかった。自らの贅沢のために税をあげ、民を苦しめた。挙句のはて、税が払えないとなると娘を税として徴収し、その処女を奪った。

 民達の訴えは、何一つ新領主に届く事はなかった。苦しみと悲しみの中にいた住民達はある時、領主を討つ事を決意する。——そしてその革命がなされ、そのリーダーが新しい領主となり、街は平和を取り戻した。

 そういった内容だった。これは史実に基づいた内容であるそうだ。

 エウフェー様の家は、そういう革命の結果、領主になった家であるようだ。そして今日はその革命が成功した日という事で、お祭りがなされるらしい。

 だからこそ、これだけ盛大に、街全体で行っているのだろう。

「どうだった? 俺は結構、この劇好きなんだけど」

「楽しかったわ」

「じゃあ、次は他の所行こうか」

 そう言ったソル君にまた手を引かれる。ソル君は私と手を繋いでいて、何も思ってないのかしら。何も思ってないというのなら、少しだけ悔しいかもしれない。私だけがこんなにドキドキしているのかなって、何とも言えない気持ちになる。って、折角のソル君とのデートなんだから、そういう事は考えないようにしよう。

「ソル君、あれは?」

「ああ。あれは祭りの名物で――」

 気持ちを切り替えて、質問をすればソル君は答えてくれる。ソル君は色々な場所を一人で旅をしていて、色々な事を知っていて――やっぱり、凄いなと思った。

 手を繋ぎながらソル君の横顔を見る。ソル君は整った顔立ちをしている。綺麗、という言葉がよく似合う人形のような美しさ。だからソル君の事をちらちら見ている女性も結構いる。私が隣にいるのもあって、声をかけてくる事はないみたいだけど、ソル君はもてるんだろうな。

「ケーシィの事、やっぱり結構皆見ているね」

「え? いえ、ソル君の方が見られていると思うのだけど」

 急にソル君に言われて、そんな風に返事をする。私も見られてはいるけれど、ソル君がかっこいいからこそ視線を集めていると思う。

「いや、ケーシィも見られてるよ。元々美人だし、今日は可愛い恰好してるから」

「いえ、ソル君も、その、か、かっこいいから視線を集めているわよ」

 二人でそんな言い合いをしてしまい、互いに目を合わせて笑ってしまった。

 ソル君と一緒に、お祭りの屋台で見つけた軽食を食べ歩きする。地球のお祭りで見たようなものもちらほら見られる。林檎飴だったりとか、串焼きだったりとか。

 ソル君と一緒に、こうしてお祭りを過ごせるのが本当に楽しかった。

 また、これからもこうしてソル君と一緒にお祭りに来たい。こうしてソル君と一緒に笑いあいたい。そんな願望が、私の心の中で燻っている。

 ど、どのタイミングで告白をしようかしら。誰もいない所で、誰も話を聞いていない所で、ちゃんと告白をしたいのだけど。

 どこで告白をしようか、そんな風に考えながらお祭りを楽しんでいるうちにすっかりあたりは暗くなっていった。

 そしてもうすぐ花火が始まる時間に差し掛かっていた。

「ケーシィ、よく見える所知っているんだ」

 ソル君はそう言って、私の事を街の高台へと案内してくれた。そこには丁度、ひとけがない場所だった。私はこのタイミングを逃すと、ソル君に自分の事を話すことも、告白することも出来ない! とそう思ってソル君に言う。

「ソル君、聞いて欲しい事があるんだけど、いいかしら?」

「聞いて欲しい事?」

「ええ」

 私の言葉に、ソル君はいいよ、と笑ってくれた。





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