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11.お祭りと、告白と 1

 今日は、街が騒がしい。

 それもそのはずだ。今日、この街ではお祭りが行われる。私は宿の部屋の中で、緊張してままならなかった。

 私は先日買ったワンピースを着ている。あの体のラインがよく分かる真っ白なワンピース。頭には髪飾りをして、化粧もしている。冒険者として動いているときはずっと動きやすい服を着ていた。それにおしゃれも何もなかった。好みの服は着ていたけれど……、おしゃれと言えるものではない。それがお祭りで、ソル君と二人っきりだからとこんなに張り切った格好をしていたら、ソル君何て思うかしら。

 私はソル君より年上だし、こんな気合の入った服装に引かれたりしないだろうか。そう思うとハラハラしてしまう。いや、もちろん、ソル君がそういう人じゃないというのは分かっているけれど。

「シィ姉様、似合ってる!」

「これでソル君もいちころだよ!」

 キラキラした目でミレーナとアレーナが言う。

「ルド様にも見せたい! 可愛いシィ姉様を」

「でもルド様なら、可愛い妹が告白するってなったら平常心じゃいられなさそう」

「わかるわ。ルド様だもんね。そう考えると、ルド様いなくて良かったかも」

「でもルド様、いつかシィ姉様追ってきそうだよね」

「追ってきた後に、可愛い妹の隣に男の影が……。なんかちょっと面白そう」

「だよね。でもソル君ならルド様のお眼鏡にもかなうでしょうし」

 ミレーナとアレーナはなぜかお兄様の話題を口にしていた。確かにお兄様は私の事を大切にしてくれている。でも、そこまでの反応はしないと思うのだけど……。そう口にしたら二人に「シィ姉様は分かってないなー」と笑顔で言われた。

 その後、ワンピース姿のまま宿の部屋を出るのに時間がかかった。だって、今まで動きにくいからとこういう服を着ていなかった。ソル君にこういう格好見せた事ないんだもの。ソル君、なんていうかな。ソル君が何か感じてくれたら――、嬉しいのだけど。

 ドキドキしていたら中々、部屋の外に出られなかったのだけどミレーナとアレーナに背中を押されて部屋の外に出る。……同じ宿に泊まっている人にもちらちら見られるし、本当に恥ずかしい。食堂でミレーナとアレーナと一緒に、椅子に座る。

 そこにソル君がやってきた。

「おはよう。ケーシィ、今日可愛い恰好しているね」

「せ、折角のお祭りだからって、ミレーナとアレーナが選んでくれたの」

 ソル君をドキドキさせるために選んでくれた、とは言えないのでそう言っておく。ああもう、心臓がバクバクいっている。

「似合ってるね。ケーシィ」

「あ、ありがとう」

 にこにこと笑っているソル君の笑顔に、また心臓が鼓動する。もうこんなにドキドキしていたらソル君に聞こえてしまうのではないかとそんな気持ちにさえなってしまう。まぁ、そんな事はありえないのだけど。

「ねぇねぇ、ソル君、シィ姉様、可愛いよねー!!」

「こんなに可愛い恰好しているんだから、男もくぎ付けだよ! だからソル君、シィ姉様の事、ちゃーんとエスコートしてね!!」

「ちょ、二人とも何を言っているの……」

 ミレーナとアレーナがにこにこして言い放った言葉に、思わず制止の言葉をかけてしまう。何をソル君に言っているのかと……、だけどソル君はミレーナとアレーナの言葉にも笑っていた。

「わかっているよ。元々美人さんなケーシィがこんな格好していたら、皆見ちゃうもんね。ちゃんとエスコートするから安心してね、ケーシィ」

「う、うん」

 ソル君がかっこいい。恋をしているから補正がかかっているのかもしれないけれど、かっこいいと思ってしまう。

 ソル君が似合ってると言ってくれた。可愛い恰好してるって言ってくれた。もうそれだけで満足しそうになってしまう。けど、駄目よ、ちゃんとタイミング見つけて告白するって決めたんだから。

「ソル君、男前ー!」

「ソル君が一緒なら、私達も安心!」

 ミレーナとアレーナはきゃっきゃっと声を上げている。私は恥ずかしかったり、心臓の鼓動がすごかったりしている中で、二人は心から楽しそうだ。

「とりあえず朝ごはん食べようか」

「ええ」

「「うん!!」」

 ソル君の言葉に私達は頷いて、それぞれ朝食を注文して食べる。ご飯を食べ終わってから、ソル君とデート。ソル君に告白をする。……そう思うと、朝食を食べている間も私は落ち着かなかった。

 ソル君と一緒にお祭りを楽しめると思うと、嬉しくて仕方がない。お祭りを楽しめる想像をするだけでこんな気持ちなのに、実際にデートしたら私はどういう気持ちになるのだろうか。そんな心配もしてしまうぐらい、私の心は満たされている。

 朝食を食べ終わるとソル君が立ち上がって、私の方に手を差し伸べてくる。

「じゃあケーシィ、お祭り見に行こうか」

 こ、この手は繋いでくれるって事なのだろうか。ドキドキしながらその手を取った。

「ふふふ、行ってらっしゃい、シィ姉様、ソル君」

「あはは、二人とも楽しんできてねー。ソル君、シィ姉様の事をよろしく」

 そして二人に見送られながら、私とソル君は宿の外に出るのだった。





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