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7.家庭教師の仕事 3

本日二話目 3/23

「ふぅー、疲れたわ」

 エウフェー様の魔力が回復してから、少しずつまた魔法を教えた。エウフェー様は呑み込みが早くて、教え甲斐があった。

 魔力を回復させながらやっていたのだが流石にエウフェー様も疲れたようだった。

「そろそろ疲れたし、他の事を教えてほしいわ」

「では、どうしましょうか。他の属性を教えましょうか?」

「……いえ、魔法は一旦休憩ね。魔法以外の事よ。ケーシィ先生がそれなりの教育も受けてるっていうのはソル兄に聞いているもの。ソル兄がケーシィ先生なら大丈夫だって言ってたわ」

 ……ソル君は私がどこの家の出とか、どこの国の人間かとか、そういうのも何も知らないのにちゃんと私の事を把握している。私が貴族の出であることをソル君は私が言っていなくても把握しているのだ。私がソル君が良い所の出だと把握しているように。

 それに私が出来もしない仕事をやりたいと言わない、とソル君はちゃんと分かってくれていたのだと思う。貴族へ何かを教える役目。それを私は出来ないとは思わなかった。だからこそやりたいと口にした事をちゃんとソル君は分かっていた。本当にソル君って、私より年下なのに人の事を見ていて凄い。

 そういう所も含めて、ソル君の事が好きだなと思う。ジェネット王国にたどり着くまでに、ソル君に告白をしないと。改めてソル君が好きだという気持ちを自覚して私は決意する。

 どのタイミングでするべきだろうか。家庭教師の仕事で私は今、ソル君やミレーナ、アレーナと別行動している。三人はそれぞれ単独で依頼を受けたり、三人で依頼を受けたりしている。もちろん、宿に帰れば会えるけれど。

「それにしてもケーシィ先生は本当に魔法が大好きなのね。幾らでも魔法を教えたいという顔をしているわ」

「申し訳ありません。魔法が好きで、思わずそちらを教えたいという気持ちが強かったのです」

「ふふ、いいわ。とりあえず部屋に戻りましょう。そこで他の話をしましょう」

「はい」

 エウフェー様と共に、室内へと向かう。向かったのはエウフェー様の部屋である。他にこの家に仕える執事や侍女が居るにしても、私とエウフェー様を二人にするというのは本当にソル君が信頼されているが故なのだと思う。もちろん、ソル君が信頼しているからとはいえ、私の事を警戒していないわけではないのは分かる。でもただ冒険者としてこの屋敷の門をくぐるのと、ソル君の紹介でくぐるのとでは雲泥の差があるだろう。うん、やっぱりソル君はすごい人なのだと思う。

 それからエウフェー様の質問に応答する形で、いろいろな事を教える。脇にいる執事たちがにこやかなのを見るに、変な受け答えはしていないだろうとほっとする。

 元々冒険者の家庭教師を募集したのは、エウフェー様が冒険者に少なからず興味を持っていたかららしい。ただの好奇心からの依頼だったらしいが、エウフェー様は「ケーシィ先生が来てくれてよかったわ。それにしてもソル兄がこの街に来ているって把握してなかったからびっくりしたけど」と言っていた。適任者が見つからなくて依頼が破棄されたらその時はその時と思って出された依頼だったらしいのだ。

「エウフェー様はソル君と昔からの付き合いなのですか?」

「ええ、そうよ」

「……ソル君の事を聞いてもいいですか? ただ、あの、ソル君の家の事情とかはソル君本人から聞きたいのでソル君がどんな子供だったかなどを聞きたいのですが」

「まぁ……!」

 私の言葉にエウフェー様は大きな声を上げた。

「まぁまぁまぁ、そうなのですわね!」

 ……これはもしかして私がソル君の事を好いている事を気づかれてしまったのだろうか。私ってそんなに分かりやすいのかしら。

 ソル君の事情とかはソル君自身から聞きたい。だけど、ソル君の子供時代とか、そういうのをエウフェー様が知っているのならば聞いてみたいと思ってしまったのだ。

「ふふふ、教えて差し上げますわ! ソル兄の事情とかをなしにしてですわよね。私の知っている事ならいくらでも!!」

 にこにこと笑ったエウフェー様はそういって、ソル君の話をする。

「ソル兄は昔からとても綺麗な子供だったの。もっと幼いころなんて女の子と見間違うぐらいで、……ソル兄のお母様が気まぐれに女装させていたぐらいで。今でもドレスがすごく似合うと思うのだけど、昔のソル兄はとても似あってたの」

 なんて聞かされて、当時のソル君をみたいななどと思ってしまった。だって今のソル君も女装したらとても似合いそうだもの。

「あとソル兄は子供の頃――」

 それからエウフェー様はソル君の家の事などは一切話さずに、ただソル君がどんな子供だったかなどを私に聞かせてくれた。

 それから私が帰宅する時間になって、「ソル兄は聞いたらケーシィ先生に教えてくれると思うわ」とにこにこと笑いながら言うのだった。


 ……執事や侍女たちの目も何だか生温かくて恥ずかしかった。ああ、一瞬でばれたなんて、恥ずかしい。



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