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3.国境を越えました。

 私とミレーナとアレーナはとりあえず国境を越える事をまず最初の目標に動いた。だってこの国の中で魔法使ったらアレな目で見られちゃうもの。私は魔法を使いたい。思いっきり使って気分良くなりたいとそんな風に思っていたわけだから、早く国境を越えたいと思うのも当然だよね。

 そんなわけで私たちは風の魔法を足に乗せてさささと国境を越えたの。

 「隣国フィルアラ共和国に到着したわね。マリアージュ様のいるジェネット王国までは遠いけど、頑張って目指しましょう」

 「シィ姉様は本当マリアージュ様が大好きだよね。会った事もないのに。遠い国の英雄様だから何処まで本当かもわからないのに」

 国境を越えて《アイテムボックス》の中からテントを取り出してテキパキと組み立て、のんびりしながら目指せ、ジェネット王国と告げればミレーナにそう言われた。

 確かにジェネット王国は私たちの国であるスペル王国からは随分離れている。ジェネット王国は何度か戦争をしていて、そこで英雄として名を響かせたのがマリアージュ・フロネア様だ。有名な方だから噂も沢山あって、離れた国であるスペル王国に広まっている噂が何処まで本当かもわからない。

 それは十分承知しているのだ。

 「本当ではなかったとしてもドラゴンを一刀両断したとか、敵国の兵士を震え上がらせてその場で戦況が決着したとか、そういう噂があるだけでも凄いと思えるし、何よりマリアージュ様は私と同じ年の頃にはもう英雄だったのよ。そんなかっこよくて強い女性なら憧れて当然よ」

 そうなのだ。マリアージュ様は、私と同じ年の十五歳の頃にはもう英雄として名を響かせていた。噂では十二、三歳の頃には戦場を駆け廻って武功を立てていたという話だから本当に素晴らしいわ。マリアージュ様は魔法の腕も素晴らしいと聞くのだけど、剣の腕も素晴らしくて、故に《炎剣帝》なんていう呼び名で呼ばれているの。

 ちなみに今この場にアレーナは居ない。何をしているかというと見張りよ。魔物が来たり、ならず者が来た時の対処のために交代で見張りをしている。

 私たちは女性の社会進出を! を目標にしていたし、私はマリアージュ様への憧れから彼女と同じ事をしたいって幼い頃からお兄様についていって魔物退治をしたりとかしていたの。私が王妃になったら女性も色々出来る国にしたくて、それで戦いの場にも女性が居るようにしたかった。だから、女性でも野営とか出来るんだっていう証明を自分でしてこそ、相手に示せるって思ってたし、それもあって自分で魔物退治も解体も、野営も全部出来るように目指していたの。

 ミレーナとアレーナはそんな私についてきていたし、王妃教育で忙しい私と違って時間はあったから私以上にそういうことやっていた。マリアージュ様はね、幼い頃から魔物退治だって出来たし、頭角を現していたって話なのよ。というか、私貴族の令嬢としての生活よりも、のんびり野営して自由に過ごす方が好きだったから今の状況って凄い楽しいの。

 確かに危険はあるけれど、今まで堂々と野営とか魔物退治とか、魔法を使うとかできなかったのにこれからは出来るわけで、わくわくしてならない。

 「マリアージュ様が噂通り凄い人だったら私も憧れるなぁ。でも十五歳の女の子が英雄になっているって凄いよね。マリアージュ様って今何歳なんだっけ?」

 「確か、四十代前半のはず。でもいまだに現役でマリアージュ様がいるから他国はジェネット王国に手を出せないって聞くし、噂も沢山入ってくるし本当憧れるの」

 「魔力が多い人っていつまでも若々しいって聞くよね。マリアージュ様は魔法も凄いって噂だからまだまだ元気なのかもね」

 「でも凄いわよね。十五歳の時には英雄で、爵位までもらっていて、それでいて未だに現役で、国内最強の魔法剣士って話でしょう?」

 なんかもう私はマリアージュ様の話をするだけでわくわくしてくる。《炎剣帝》なんてかっこいい呼び名で呼ばれているマリアージュ様は、最強の魔法剣士と呼ばれもしていてその単語にもうわくわくしてくる。

 私は魔法の適性はあって、魔法は魔法師団長に習いもしたから得意なんだけれど剣は不得意というよりほとんど握った事がない。剣を握って、剣を毎日振るっていると剣だこが出来てしまうし、流石に王妃になるものの手にそんなものがあったらという事で自重していた。才能はないかもしれないけれど、これからは剣もこれまでのように最低限ではなくて、ちゃんと習ってみたい。

 「本当にシィ姉様はマリアージュ様が大好きだね!」

 「ええ。これからマリアージュ様を一目でいいから見に行けて、マリアージュ様の故郷に行けるんだって思うだけでもわくわくして眠れなくなりそうなぐらいよ」

 「いや、寝てよ。折角アレーナが見張っててくれているんだから交互に寝ないと大変だよ」

 「わかっているわ。でも本当わくわくしているの」

 「うん……。というか、シィ姉様本当婚約破棄に勘当っていう普通の令嬢なら卒倒ものの出来事起きた後なのに元気だよね。そんなシィ姉様が私は大好きだけど」

 「カラッラ様に恋愛感情なかったし、こうして自由に出来る方が私は幸せだもの」

 「そうだね。シィ姉様、今の方が生き生きしているもんね。そういえばさ、街についたら冒険者登録するんだよね?」

 「ええ。お金を稼ぐにはそれが手っ取り早いもの。一応、宝石とかも入れてきたからそれを売ってもいいんだけど、それより冒険者として稼ぐ方がマリアージュ様に一歩近づける気がするし」

 冒険者というのは、冒険者ギルドに所属している何でも屋みたいなもので基本的に中立の立場にある組織よ。誰でも登録が出来て、旅をしながらお金を稼ぐにはぴったりなの。

 女は家でおとなしくしているべきっていうスペル王国では他国に女性が進んでいく事も咎められる事だったのよね。国王陛下は「我が国は遅れているから、少しずつ他国と交流していくことで女性も社会に出れるようにしていきたい」と言っていたけれど、他国の女性ってスペル王国の女性にとってはしたない存在って認識されてたし、皆進んで他国に行こうとしなかったのよね。私は魔法師団長に連れられて何度か出た事はあるけれど。次期王妃って立場だからあまり自由には出来なかったけど、今は自由の身だし、何でも出来るんだって思うと街につくのが本当に楽しみ。


 しばらく話した後、寝ようとしたのだけど、うずうずして中々私は寝付けないのであった。





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