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1.ジェネット王国に近づいてきた

 ソル君の事が好きだと自覚をした。

 でも、自覚をしたからと言って何かが変わったわけではない。私はまだ、ソル君に婚約者などが居るのかどうかというのが聞けないでいる。

 ソル君に恋人がいるのか、好きな相手が居るのか。そういう事をちゃんと聞いて、ジェネット王国にたどり着くまでに告白をしたいと思っている。

 ――でも、前世も含めて誰かに告白をしようとするのは初めてだった。だからこそ、恥ずかしくて、緊張して踏み出せなかった。

 もし、踏み出せたのならば——、いえ、でもそれで断られたらジェネット王国にたどり着く前にソル君と別れなければならないかもしれない。それを考えると、中々踏み出せない。

 ソル君を好きだという、温かい気持ちを感じられる事が私は嬉しい。誰かを愛しいと思う気持ちがこれだけ心の奥で大事な気持ちになるとは思わなかった。

 ソル君の事が好きだ。

 ソル君の綺麗な顔立ちにも惹かれる。それだけ綺麗で、戦う事を知らなさそうに見えるけれどとても強くて……。魔法が苦手だからと剣技を磨いて、それでギルドで認められている。私よりも年下なのに、努力家で、綺麗な戦い方をしている。貴族令嬢として国から出た事がなかった私と違って、他国を一人で放浪していて——だからこそ、私より物知りだ。頼りになって、優しくて……うん、こう考えるといい所しか見えない。好きだと自覚したからこそ、余計にソル君のいい所しか私には見えなくて、どうしようもないぐらい盲目的になっている気がする。

「シィ姉様、告白しないの?」

「シィ姉様、最近にこにこしてるね」

 ミレーナとアレーナは私がソル君の事を好きだと知ってから、何度も何度もそんな風に言う。告白をさっさとすればいいのにと言った態度をされてもやっぱり中々踏み出せない。私はこんなに臆病だったかと自分で驚いてしまう。

 ソル君と、ミレーナとアレーナと一緒にキュノーユさんのいた街を後にして既に一月ほど経過している。大分、ジェネット王国に近づいてきた。

 私達は結構なハイペースでジェネット王国に向かっているというのもあって、ジェネット王国には私が当初想定していたよりもずっとはやくにたどり着いてしまう気もした。

「……告白って、どんな風にしたらいいのかしら」

「好きって言えばいいんじゃないの?」

「大好きって伝えればいいんだよ」

 年下の妹分に相談をすれば、そんな風にさらりと言われた。ミレーナもアレーナも結構思った事をさらりと言う姉妹だから、好きな人が出来てもさらっと言ってしまうのかもしれない。私みたいに、悩んでしまう事なく。

 そういう思いっきりの良さが私にあったらよかったのだけど。

 ……でもそうね、きちんとソル君に好きだとごまかさずには伝えたい。

 そして伝える場合は、自分の事も言いたい。私の事を知ってほしい。私はソル君に隠し事をしている状況だ。……貴族として生きていた事実をソル君は勘付いてはいるだろうけど、聞いてはこないけれど、出来たらそういう事もきちんと告げた上で、好きだって言いたい。

 でも、どういうタイミングで言うべきかしら。

 なんて、言った方がソル君に伝わるだろうか。

 ソル君は私が突然こんな事を言って、なんていうだろうか。

 最近、ずっとそんなことばかりを考えてしまっている。元からソル君の事を気にしてはいたけれど、好きだと気付いたからこそ、余計に私はソル君の事ばかり考えてしまっている。

 ……寧ろ、ソル君の事を考えない時はないぐらいに。

 ソル君のほっぺを触りたいなと見つめてしまったり……私は変態なのだろうかとちょっと悩んでしまうぐらい、結構ソル君を見てしまっている。

「ケーシィ、最近どうかしたの?」

「……なんでもないわ、気にしないで。ソル君」

 此処でミレーナとかアレーナならさらっと「好きなの」とでも言ってしまうのかもしれないけれど、私は躊躇してしまう。ソル君は私がソル君の事好いている事は気づいてないだろうけれど、私の様子が何処かおかしい事は把握している。……ソル君ってソル君の名前呼ぶたびに、いつか、呼び捨てにしたいなとか、ソル君も同じ気持ちだったらいいのにとか、そういうもんもんとした気持ちになってしまっている。

 いろいろと、私は重症な気がする。

「シィ姉様、押せ押せでやっちゃえばいいのに」

「シィ姉様、可愛い!!」

 私のそんな様子にミレーナとアレーナは私に向かって、ニコニコと笑っているし、気持ちを知られてしまっているというのは恥ずかしいものだわ。

 今は躊躇してしまっているけれど、きちんと告白の練習をして、ジェネット王国にたどり着くまでの間に絶対にソル君に告白して見せる、と、私はそんな決意を胸に掲げるのだった。




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