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16.自覚と新しい街への旅立ち

 キュノーユさんは、ソル君と仲良しだ。

 私の知らないソル君を、きっと、ずっと知っている。

 私とソル君は出会ってそんなに経っていない。私も、私自身の事をソル君に言えてはいない。だけど、それでも、私は——ソル君の事をもっともっと知っていきたいとそう願ってしまうのだ。

 この気持ちはなんだろうと、そんな風に疑問に思う。私はこんな感情を誰かに対して感じるのは初めてだったから。

 だけれども——考えて、考えて、すとんと落ちてきた結論は私がソル君の事を好きなのではないかというその想いだった。前世の私も含めて、恋愛をすることはなかった。前世の私は本を読むことに夢中だったし、現世の私は魔法に夢中だった。

 ――ソル君の事が私は好きなのだ、そのことを自覚すると不思議な気持ちになった。それと同時に何だか嬉しかった。

 元々、王妃に私はなる予定だった。婚約者であったカラッラ様に対して愛情はなかったけれども、スペル王国を王妃になって変えていこうと思っていた。愛なんて感情がなくても、貴族として生まれたからこそ国のために頑張ろうと思っていた。だけど、冤罪で国外追放をされた。だからこそ、私はこうしてソル君に出会う事が出来たし、ソル君に恋をする事が出来たのだ。そう思うと、本当に国外追放してくれてありがとうという気持ちがわいてきてならなかった。

 でも、好きだと気付いたからと言って何が出来るのかしら。正直誰かを好きになったからとどんな行動を起こしていいのかそれが私にはさっぱり分からない。

 そんな私はミレーナとアレーナにこっそり聞いて見た。

「誰かを好きになった時って、どんな行動を起こすべきなのかしら?」

「……シィ姉まさか、ソル君のこと!?」

「おおお、手伝うよー!!」

 ミレーナとアレーナに問いかけたら、私が好きになってしまった相手がソル君だとバレバレだった。そんなにわかりやすいのか。

 とりあえず手伝ってくれるそうだけど、「その大きい胸で誘惑しちゃえば!?」とか、無理よ。

 そもそもこう……好きだと気づけて、一緒に冒険出来ているだけでもなんか嬉しいというか……私はとても喜んでいるの。

 もし、告白でもしてそれで振られたらソル君と一緒に居れなくなってしまうかもしれない。……正直それは嫌だなぁと思うから、しばらくはソル君を知っていく事に専念する事にした。だって私はソル君の事をそんなに知らないのだもの。だから、ソル君の事を知っていきたい。……いつか、キュノーユさん以上にソル君の事、知りたいなぁと思うのだ。

「ケーシィ、ミレーナ、アレーナ、そろそろ次の街行こうか?」

「ええ!」

 私はソル君に次の街に行こうかといわれた時、喜んで頷いた。だってここにはキュノーユさんが居るもの。……正直、とても心が狭い話だと思うのだけどソル君とキュノーユさんが仲良さそうに話していると嫉妬してしまっていたみたいなの。だから……なるべく早くこの街を離れられるのならば離れたいと思っていた。

 ソル君は私が街を早く離れたさそうな様子に一瞬だけ不思議そうな顔をしていた。

 だけど、次の瞬間、納得したように言った。

「ああ、そうか。早く『炎剣帝』に会いたいんだね。ジェネット王国も近づいてきているからね」

 ……それもあるけれど、ソル君の事が一番の理由。でも、それをソル君に気づかれなくてよかった。だって恥ずかしいもの。それでソル君と一緒に居れなくなったら正直悲しいから。

 そもそもソル君って恐らく良い所の出だと思うけれど、故郷に戻ったら婚約者が居たりとかする可能性もあるのよね……。ソル君ほど綺麗で強かったら、きっと他の異性もソル君の事を放ってはおかないだろうし。

 よく考えたらソル君にそういう相手が居るかも聞いていない。突然聞いたらどうしてそんな事を聞くのだろうって思われそうな気もする。ひとまず、ソル君にそういう相手が居るか聞くのが目標ね。

 ソル君はジェネット王国が故郷だから、それで一緒に行ってくれているだけだ。だから、ジェネット王国にたどり着くまでに……ソル君に告白してみよう。

 私は一人でそんな決意を持った。

「……私、頑張るわ」

「どうしたの、ケーシィ」

「なんでもないわ」

 頑張るわ、と呟いた言葉にソル君が反応した。それに、何でもないと首を振る。

 好きだという気持ちに気づいたから、どう行動したらいいのか正直わからないけれども——、頑張ろうと思う。ジェネット王国にたどり着くまでは一緒にソル君が居てくれるのだから、それまでには言ってみよう。

 そんな決意を胸に、私はソル君、ミレーナ、アレーナと共にその街を後にした。





 第二章 完



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