13.盗賊への対処 2
違和感のある場所へとソル君、ミレーナ、アレーナと共に向かう。
思ったよりも森の奥へと延びている。
そちらへと共に向かう。その最中に魔物が襲い掛かってきたけれども、ソル君が剣で対処していた。本当にソル君の剣捌きは素晴らしい。洗練されていた動きで、一閃。たったそれだけで的確に魔物の命を奪う。
ソル君は魔法があまり得意ではないというけれど、魔法が使えなかったとしてもこれだけ剣が使えて他者を圧倒出来ているのだから本当に凄いと思う。
私もソル君みたいに剣も扱えるようになりたいと思うけれど、あのレベルまで持っていくのは相当の努力が必要だろう。
そんな事を考えながら奥へと向かえば、巨大な岩の元へとたどり着いた。私の違和感は確かにこの巨大な岩だ。
――ひっそりとその岩を見ても、何の変哲もない巨大な岩にしか見えない。
だけど、私の魔法では違和感が大きい。
魔力を瞳に込める。
そして、魔力越しにその岩を見る。
魔力を通してみるその巨大な岩は、別の物に見えた。
幻覚の魔法により、通常ならば入り口が見えないがその岩の奥に入り口を見た。
高度な技術によって編みこまれた魔法の術式。
これだけの力があるのならば、もっと他の事に使えるだろうにとそれを目の当たりにして思ってならなかった。
「ソル君、あの岩が本拠地だと思う。不思議な入口があるの」
「そう、見張りとかは?」
「ちょっと待って」
私はソル君の問いかけにそう言ってまた巨大な岩を見る。そして魔力を使って誰かがそこに居るかどうかを探る。
入口の奥には居るのは分かったが、見える範囲にはいない。見張りもいないようだ。それは自分の幻覚の魔法の力を過信しているからだろうか。それとも私が気づかないだけでどこかに見張りがいるのだろうか。
「ミレーナ、アレーナ、貴方たちも見張りがいるか見てもらっていい?」
「「うん」」
二人は私の言葉に頷いて、私と同じように周りに誰かいないか探り始める。
「シィ姉様、居ないみたいだよ」
「私も分からなかった」
ミレーナとアレーナの二人もそういうという事は、本当に誰もいないのだろう。それが分かってホッとする。もしかしたら私達三人の目を掻い潜って存在している見張りがいるかもしれないが流石にそこまでは対処しきれない。本当にそういう存在が居たら即急に逃げなければと思った。
そのことをソル君に相談すれば、「そうだね、それなら引かないと」と私の意見に同意してくれた。
私たちは恐る恐るその岩にまず近づく。魔力を通してみる目ではこの先に入り口がある。手を伸ばして、入り口に入ろうとする。流石に入れないようにちょっとした工夫がされている。魔力で出来た壁がある。この壁を壊したらこの壁を構築した人には悟られてしまう気がする。
「ソル君、どうする?」
「そうだね、俺は悟られても対処できると思うけどケーシィは?」
「私達なら、大丈夫だとは思うわ」
ソル君の言葉に私も答える。例え、この壁を壊して盗賊たちが出てきたとしても私たちは恐らくやれると思った。
ソル君の実力を私は知っている。ミレーナやアレーナ達が頼り甲斐があることを私は知っている。なら、大丈夫。
そう思えた。
どちらにせよ、この壁を壊さなければ中に突入など出来ない。
盗賊たちの対処をするのならば、この壁をどうにかしなければならない。下手にこちらが盗賊たちの棲家を把握したというのが彼らにばれるとまた場所を変えられてしまう恐れもある。一気に、こちらの存在に気づかれていないうちに対処をする。
それが一番良いと私達は考えた。
だから、私はその魔力で出来た壁に手を伸ばす。
そして、思いっきり自分の魔力を叩き込んだ。
力技だけど、私には一番やりやすい障壁の壊し方。私の魔力量が多いからこそ出来る技。
それと同時に幻覚の魔法も崩壊していく。そこに現れるのは、地下への入り口だ。
「行くよ、ケーシィ、ミレーナ、アレーナ」
「ええ」
「「うん」」
先手必勝とばかりに地下への入り口にかけていくソル君を私たちは追いかける。
地下へと降りれば、バタバタとした足音が響いた。
私たちが障壁を壊したことに気づき、侵入者が現れたと気付いた盗賊たちの足音だ。
「侵入者だ!!」
「女ばかりだぞ!! やってしまえ!!」
「捕まえろ、高く売れるぞ」
何人かの男たちが奥から出てきた。手には武器を持っている。私やミレーナ、アレーナの事を舌なめずりしてみてきてぞっとした。捕まれば奴隷とかに落とされるのだろうか。……まぁ、捕まる気はないけれど。
ミレーナとアレーナは「ミレーナと「アレーナの」名のもとに魔法を行使する」そう詠唱をはじめて、二人がかりで魔法を構築した。
双子の二人は魔力の相性もとてもよくて、二人で行使する二重詠唱の魔法がとても得意なのだ。その魔法で出てきたばかりの男たちはあっという間に命を散らした。
今出てきた盗賊たちは下っ端だったのだろう。……幻覚魔法や障壁を作り出した存在が奥にいるのだから気を引き締めなければならない。そう思いながら私たちは奥に進んだ。




