12.盗賊への対処 1
盗賊たちの元へ、私たちは向かっている。
盗賊たちのアジトは魔法を使っていて確認しにくい状況であるらしく、まだ把握できていないという。まずは棲家を特定することが第一である。それにしてもそういう能力があればもっと別の事に使えばいいのにと正直考えてしまう。
ただ、何処の世にも自分の能力を悪い事に使うような人間はいる。それは前世でもあったことだ。この世界は前世よりも人の命が軽く、簡単に悪い方向に人が転がり落ちるものである。
私は対人戦をあまりやったことがない。
魔法には自信がある。冒険者としても少しずつランクをあげてきて、戦う事が故郷に居た頃よりも出来るようになってきたと思う。
――でも、人を相手にするのと魔物を相手にするということはやはり違う事なのだ。
そう思うと、緊張をする。
自分が本当に盗賊を相手に上手く出来るのだろうか。――それもマリアージュ様と対峙して生き延びたような、キュノーユさんが厄介だというような相手を前に。
不安で足がすくみそうになる。
だけど、頑張りたい。
私は、ソル君の期待に応えたい。そう思うから、私は一歩踏み出す事を決めたんだ。ソル君に出会わなければ此処まで頑張ろうと思わなかったかもしれない。そう考えると私の中でソル君の存在というのは大きくなっているのだと思う。
「ケーシィ、ミレーナ、アレーナ、ひとまず探索しようか」
「ええ」
「「うん」」
ソル君の言葉に私たちは頷く。
盗賊たちの出没する範囲からまずは盗賊たちの棲家を特定すること。それが第一の目標だ。そして棲家を特定出来たらすぐに掌握出来そうならば突撃すること。
ソル君は目標をそんな風に言った。
それにしてもソル君は、盗賊退治も慣れていてテキパキ指示を出してくれて助かる。ソル君は私よりも年下だけど、こういう時にとても心強くて頼もしい。
私たちは街の周辺を四人で歩く。
二手に分かれる案も出ていたが、それで盗賊に遭遇した場合に対処出来ない心配もあったため、全員でまとまって行動することになっていた。
そうやって探索をする間、ずっと私は周りの気配に気を配っていた。魔法を行使して、何かが近づいてくればすぐにわかるようにしていたのだ。それをすることによっての魔力消費は多いけれども、盗賊を警戒するのは当然だった。
それに魔力消費が多くなってもソル君やミレーナ、アレーナがいればどうにでもできるという信頼関係があったからというのもある。
ソル君は隠し事が多いし、私も故郷での事をソル君に話していない。
秘密があったとしても、私はソル君を信頼しているし、ソル君も私を信頼してくれている……と思う。そう思うと、そういうのって不思議だなと思った。
「ケーシィ、何か引っかかるものある?」
「ううん、今の所ない」
「そうか……もう少しあっちにいってみようか」
私は魔力を薄く広げるイメージで、周りに広げている。その魔力で何が何処にあるかを私は把握することが出来る。そういう事は、魔力の扱いが得意でないと出来ないとお兄様が言っていた。お兄様は私の事をよく褒めてくれて、あの国で最も私が魔法の腕を上げる事を喜んでくれていた。
薄く広げた魔力の膜で、何が何処にあるかを把握していく。
盗賊の棲家がその魔力に触れる事が出来たのならば、何かしら実感する事が出来るだろう。もちろん、その薄い魔力の膜は触れた人に悟られないようには努力をしている。もしかしたら魔法が得意な相手だとこちらが探られてしまう可能性もあるけれど……ひとまず、これで盗賊の棲家を探したいと思ったのだ。
ただ今の所、その魔力に何かが引っかかるということはない。
魔法か何かを使っているのか、棲家をきちんと把握できていないという話だったので、魔法を使って探れば簡単に見つけられるのではないかと思っていたけれども甘かったかもしれない。
「ごめんね、ソル君中々見つけられなくて」
「全然、気にしなくていいよ。俺なんて魔法そんなに使えないから正直現状役に立ってないし」
ソル君は私の言葉にそういって笑ってくれた。
それからしばらく街の周りをうろうろとする。
そして、森の奥まった所に入っていくと、ようやく何かが魔力に引っかかった。
「ソル君!」
私が声をあげれば、「見つかったの? ケーシィ」とソル君が声をかけてくる。そしてミレーナとアレーナも嬉しそうな声をあげる。
「うん、少しだけ変な感じがするところがあるの。そこが盗賊の棲家なのか分からないけれど……でもその可能性は十分あるから私はその場所に行ってみたい」
「そうだね。ちょっと覗いてみようか。難しそうだったら引き返すとして、現状まだ明るいしどうにもなるだろうし」
それから私たちは、その違和感のある場所に向かうことになった。
もしかしたら盗賊の棲家とは全然関係のない場所かもしれないけれど、ひとまず行ってみる。盗賊の棲家だといいなぁ。




