10.ソル君の知り合いの女の子。
「ケーシィ、アレーナ、ミレーナ、この人がこの領地の次期跡取り娘のキュノーユだよ。俺に頼みたい事があるってことだから、ケーシィ達にも話聞いてもらおうと思って」
後日、ソル君が例の貴族の令嬢を連れてきた。
私たちがいるのは、街中にあるおしゃれな喫茶店だ。貴族の姿も見られるので、それなりに高級店なのだろう。
美しい黄緑色の髪を持つ女性。私よりも見た感じ年上だろうか。とても気品に溢れている。彼女は私たちの事をにこやかな笑みで見ている。
「ソル、この方達は大丈夫なの? ソルがパーティーを組んでいるのも驚いたけれど……、私は余計なけが人は出したくないわよ?」
「問題ないよ」
その女性は、まず私たちを見た後、ソル君をとがめるように言う。それに対してソル君が笑った。それは、仲が良いからこその距離感。――それが見て取れて、感じ取れて、何とも言えない気持ちがやっぱり私の事を襲っていた。本当に、どうしてこんな気持ちがわいてきてしまうのだろうか。
それにしても、この貴族の方とソル君が何の話をしているのかよくわからない。
「そう、ソルがそこまで言うのならばこの方たちは見た目以上にとても優秀な方たちなのね」
「もちろん、俺は実力のない人を戦えるなんて言わないよ」
「ええ、そうね。ソルはそういう子だわ」
その人は穏やかにほほ笑んで、こちらを向いた。
「わたくしは、キュノーユ・ジュリよ。よろしくね」
「私はケーシィです。よろしくお願いします。」
「私はミレーナ! よろしくお願いします」
「私はアレーナ! よろしくお願いします」
彼女のあいさつに、私たちも返した。
「わたくしは名前からも分かる通り、この街を治める領主の娘ですわ。今回、ソルに頼みたい事があるの。貴方方もソルのパーティーということで、一緒にその頼みを聞いていただけないかと思ったの」
そういって、キュノーユさんは私の方を見ていう。
「……ところでケーシィさんはどのように戦う事が出来るのかしら? 正直想像がつかなくて」
「ケーシィは魔法が凄いよ。あと、キュノーユよりも、ケーシィ年下だよ」
「え、ケ、ケーシィさんはいくつなの?」
「十五歳だって」
「じゅ、十五? 十五歳でその色気……というか」
驚いた顔をしたキュノーユさんの視線は、私の胸に向けられていた。確かに私の胸は同年代よりも大きく育っているけれど、まじまじ見られて思わず胸元を隠してしまった。
「あ、ご、ごめんなさい。思わず見てしまいましたわ。それにしても、十五歳……とても大人っぽいですわ」
「ええと、ありがとうございます。それで、どういった頼みですか?」
「は、そうでしたわ。そう、この街で少し問題が起こっているのでその解決をソルに頼みたかったのですわ。ソルならば問題はありません」
キュノーユさんは、ソル君の事を信頼しているのがわかる。ソル君だってキュノーユさんの事を信頼しているだろう。それがわかる。私はそういう関係を見るのは好きだ。でも、何だか少しもやもやする。と、そんな思いはひとまず横に置いてしまおう。
それよりもキュノーユさんの話を聞かなければ。
「この街の周辺に盗賊たちが居を構えてしまっているの。街の中は問題がないけれども、一歩街の外を出ると危険な状況になっているわ。どうにか私兵を使って対応しようとしているのだけど、相手に厄介な存在が居てどうにも動きようがないの」
平和な街だと思っていたのだけれど、問題を抱えていたらしい。
それにしても、盗賊か。対人戦はそんなにしたことはない。だけどこの世界で生きてきて、前世とは違った倫理観を私は持っている。冒険者として生きていく上で、盗賊退治も立派な仕事だから。
「何でも魔法を使っていてその棲家を特定しにくい状況であるということ、あとは——《炎剣帝》と戦争で対峙して生き残った事があるって自慢している男が盗賊団のトップらしい。で、そいつがとっても厄介なんだって」
《炎剣帝》マリアージュ・フロネア様の名がここで出てくると思わなかった。私の憧れるマリアージュ様と戦争で対峙して、生き残ったと自慢している男。それが、盗賊団のトップに立っている。
「だからこそ、ソルに頼むんだけどね。ソルならば問題ないもの」
「キュノーユ、それよりもその男の話なんだけど——」
「……そうね、その男についてなのだけど、実際にマリアージュ様と戦った記録はあるわ。だけど、マリアージュ様ほどの強さはもちろんないわ」
「だろうね。あれだけの人はいないよ」
マリアージュ様と戦った記録のある人。そして死ななかった相手。……その人が盗賊団のトップにいる。ソル君は私やミレーナ、アレーナの事を信じてくれている。そういう相手でも大丈夫だって。
なら、頑張ろう。
キュノーユさんとソル君の関係とか、気になる事はあるけれどもひとまず盗賊退治を頑張ろうと思った。




