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4.決闘が起こった後のこと。

 ソル君が決闘を行った翌日、私たちはまたギルドに来ていた。ギルドに私たちが入った瞬間、中にいた人々が一斉に静まり返る。それは昨日の決闘が原因であるというのは私にもすぐに分かった。受付まで歩く私たちの邪魔をするものは誰もいない。これが昨日の決闘の効果……と私は考える。

 ソル君は、冒険者として私よりもずっと先輩だ。年下だけど、私よりずっと凄い。私は魔法はずっとならってきたけれども、貴族令嬢として、王太子の婚約者として限られた世界で生きてきたのだから。……もっと、色々なことを知りたいと思った。

「依頼を受けたいんだけど」

 ソル君がそういったら、受付嬢が少しだけ強張った顔をしていた。昨日の一件でそんな顔をしているのだろうか。

「……は、はい」

「まず、この依頼を頼みます」

 ソル君がそういって、依頼を選んで受けてくれた。ソル君が選んでくれた依頼なら間違いがないだろう。そう思えるだけ、私はソル君のことを信頼している。短い付き合いだけど、ソル君の事は信頼できると、そんな風に私は思っているから。



 ソル君が選んだ依頼は、討伐依頼だった。



 猿のような姿のグリーンモンキーという魔物の討伐依頼だった。私はその魔物に会ったことはない。どんな魔物だろうか。

 ソル君に聞いてみたら、すばしっこい猿型の魔物で、葉っぱと同じ色をしているらしい。森の中が生息圏なんだって。私はもちろん、このあたりの森に行くのも初めてだし、グリーンモンキーを倒すのも初めてだけれど……、ソル君は経験しているとのこと。

 本当に、どれだけの経験をソル君は積んできたのだろうか。どれだけの場所を訪れてきたのだろうか。ソル君は、沢山の経験をしている。

 私たちは、グリーンモンキー討伐のために森の中へとやってきた。初めての場所、というのもあって私は正直ドキドキしていた。けど、ソル君は慣れた様子だし、アレーナとミレーナはどちらかというと楽しそうにしていて、私一人だけ一番年上なのに少しだけドキドキしているなって改めて思った。

 もちろん、魔法を使えるってことで嬉しかったりはするけど。

「ケーシィ、大丈夫?」

「大丈夫よ。ただ、初めての場所での魔物退治だから少しだけ緊張しているの」

「大丈夫だよ。グリーンモンキーはそんなに強い魔物ではないから」

 ソル君にそういわれる。

 私はその言葉に頷いて、魔物退治に励んだ。

 グリーンモンキーを倒すのは、ソル君がいっているように難しくなかった。確かにすばしっこい所はあったけれど、私たちの魔法と、ソル君の剣技で倒せない相手ではなかった。

「問題なかったでしょ?」

「ええ」

 ソル君が笑って、私も頷いた。

 一匹狩ったら、少しだけリラックスできて、私はそれからの討伐でリラックスして戦うことが出来た。もっと冒険者として、沢山の魔物を狩って、経験していきたい。そうしたら、憧れのマリアージュ様に近づいていける、そんな気がして仕方がないから。

 

 それから、私たちはギルドに戻って報告をした。私たちの討伐があまりにも早かったらしく、驚かれた。



 ソル君が昨日決闘をしたことに加えて、短時間で依頼を終えたということで少しだけ注目されてしまった。

 もっともっと、いずれ、マリアージュ様のように。マリアージュ様に憧れているから、マリアージュ様に近づきたくて。だから私はどんどん依頼を受けたいって言った。マリアージュ様のように強くなりたいからって。

 そういった私にソル君も、アレーナも、ミレーナももっと依頼をどんどん受けようかってそういってくれた。私の、憧れからの思いに三人とも一緒に頑張ろうっていってくれた。

 嬉しくて、私は恵まれているって思う。

 故郷では、婚約破棄されて、国外追放とか言われてしまって、それで飛び出した。本当に飛び出せてよかったって私は思う。こうやってのびのびとしながら冒険者生活が出来ることが本当に嬉しいと思う。

 ソル君と出会えたことも嬉しい。

 ソル君と出会えてなかったら、私やミレーナ、アレーナは、冒険者としてやっていけたかもしれないけど、こんな風に余裕は持てなかったかもしれない。ううん、持てなかったって思う。ソル君っていう、冒険者としての先輩がいたからこそ、こんな風に過ごせているんだって思う。

 私たちが注目されているとすれば、ソル君のおかげなのだ。ソル君が居るからだ。

「私、ソル君と会えてよかったわ」

「俺もケーシィたちと会えて楽しいよ」

 ソル君は素直で、感情を偽らないなって思う。私と同じように——貴族の出なのかと思うけど、貴族らしくないところも多くある。本当に不思議だ。そもそも貴族の出だというなら、どうしてその年で旅しているのかさっぱり分からないけど。普通、その年ごろなら国外で冒険者をやってないだろうし。

 でもまぁ、どちらでもいいや。ソル君がソル君であるというのが重要で、ソル君がどういう境遇なのか気になるけど、関係ない話だから。

 私はソル君の笑顔を見ながらそんなことを思った。

 

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