3.ソル君と決闘
「てめぇ、馬鹿にしてんのか!!」
ソル君の挑発するような言葉に対して、冒険者の男たちは怒りの声を上げる。このように怒らせて大丈夫なのだろうかと、そう思って、心配になってみたら、大丈夫だよとでもいう風に笑われた。だから、私は大丈夫だと思ってソル君に任せることにした。だってソル君は私より年下だけど、でも私よりも冒険者として先輩なのだから。
だから私もミレーナもアレーナもソル君をじっと見つめたままだ。
「馬鹿になんかしていないよ。それより、冒険者ギルドで他のパーティーに絡む行為はやめた方がいいと俺は思う。あんまりそういうことすると、雑魚に見えるよ?」
「雑魚だと……てめぇ、調子にのるなよ!! 表出ろ!!」
「うん、いいよ」
ソル君は、冒険者の男たちの言葉に躊躇いもせずに頷いた。って、のるんだ。ソル君何を考えているか分からないけれど、ソル君に任せておこう、私たちはそう思いながら冒険者ギルドの外に出るソル君と冒険者たちについていった。
冒険者ギルドで起こった諍いからの決闘ということで、冒険者ギルドの職員も出てきた。
こういう諍いはそれなりに多くあるものらしい。でも互いで殺し合いはなるべく避けるべきことだから、こういう場合はギルドの職員が出てくるようになっているらしい。見物人が結構な数いる。
ソル君はまだ子供といえる年齢で、それもあって心配そうに見ている人も結構いる。ソル君は私たちが原因で絡まれたのもあって、私に向かって「止めなくていいの?」とか、「貴方のせいで絡まれているのに」と言ってくる人もいたけれど、私はソル君が自信満々だから大丈夫だろうと思って「ソル君に任せています」とだけいっておいた。
ソル君は、向かい合う冒険者五名ほどに言う。
「……全員で来ていいよ」
「はぁあ!? てめぇ、馬鹿にしてんのか!!」
「馬鹿になんかしてないから、きていいよ」
ソル君は笑みを浮かべたままだ。ソル君の余裕そうな表情は変わらない。五名全員にかかってきていいなんていうソル君に、少しだけ不安になる。本当に大丈夫かなって。だけど、ソル君と目が合った時、ソル君が大丈夫だという風に笑うから、私は動かない。多分、私が余計なことをしたら、ソル君は困るだろう。だから、私は黙ってソル君のことを見つめている。
「はっ、後悔してもしらねぇよ」
「痛い目あわせてやるからな!!」
そんな風に言う男たちは、ソル君と向かい合っている。その手に武器を取る。ギルドの職員の女性がはらはらしたようにこちらに目配せしている。止めてくれないかと期待しているようにみえる。
だけど、私はそのギルドの職員さんの期待には応えない。
不敵に笑ったままのソル君に対して男たちが切りかかる。私の目から見ても、ただ、勢いに任せて切りかかっているだけにしか見えない、そんな剣技。ソル君は、五人に切りかかられても、全てを躱し、自分の長剣でいなしていく。
美しく、洗練された動き。
何度見てもソル君の戦い方は美しい。
そして躱しながら、一人、一人と意識を削っていく。殺さないようにしながら、ソル君は一人一人気絶させていく。
その精錬された動きに、周りが息を呑んでいた。気づいたら、男たちは倒れていて、ソル君だけが立っている。
ああ、本当に、ソル君は凄い。
ソル君は、その年にして驚くほどに戦う術を身につけている。不思議な少年だと何度も思う。十三歳という年で旅をしてこれだけ強い。そしてこれだけ人の目を引き付ける。凄いなって思う。
「ケーシィたちは俺のパーティーメンバーだから、痛い目にあいたくなかったら手を出さないようにね?」
ソル君は周りに向かってにっこりと笑ってそういった。そうすれば、見物者たちは、頷くのだった。
こちらに歩いてきたソル君は、「目立っちゃったね、とりあえず依頼は今度にしようか」といった。私たちはその言葉に頷いてその場を後にする。
「ソル君、決闘どうして受けたの?」
「ああしたほうがいいと思ったから。一度実力を出しておけば、下手に絡んではこないだろうからね」
ソル君はそんな風に言った。確かに、ソル君があれだけ強いことがわかれば、ソル君と進んで決闘しようなんてしないだろう。
私はソル君が絡まれた時、どうしようっていうそればかり考えていた。それ以外のことに、その先のことまで考えていなかった。ソル君は本当にすごいなって私は思う。冒険者としての経験値が違う、私ももっと色々経験したらソル君みたいになれるだろうか。
「ソル君、対人戦も凄いんだね」
「ソル君、かっこよかったよ!」
ミレーナとアレーナがそういえば、ソル君は笑った。
「対人戦というか……模擬戦みたいなのは昔からやってたから。多対一もよくやってたし」
「そうなんだ……」
本当に、どういう風に育ったのか聞きたくなった。でも、私も自分のこと話していないのにソル君に聞くのはなという躊躇いもあった。
いつか、私はソル君に自分のことを話す日が来るだろうか。そしてソル君から話を聞ける日が来るのだろうか。いつか、そんな日が来たらいいなって思った。




