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2.ギルドで依頼を受けようとしていたら。

 私たちは、その日、ギルドへと向かうことになった。もちろん、依頼を受けるためだ。ゴブリンの殲滅の依頼の報酬で、お金がないわけではない。だからしばらく依頼を受けなくてもなんとかなるだろうけれど、ギルドのランクも上げたいし、いろんな依頼を受けたいのでギルドに行くことになった。

 ソル君は、ギルドランクも高く、私たちに付き合う必要はないのだけど、「一緒に行くよ」と言ってくれたので一緒に来てくれた。ソル君、私より年下なのにBランクで凄いと思う。しかも聞いた話だと、AランクよりのBランクらしいし、本当凄いと思う。

 ソル君がBランクだから、ソル君とパーティーだとBランクの依頼も受けられるのよ、確か。でもDランクが三人いる冒険者パーティーで、Bランクを受けるのも無謀な気もするのよね。

 「どんな依頼を受けようかしら、ソル君はおすすめの依頼とかある?」

 「んー、ケーシィって、《炎剣帝》に会いたいっていうのはわかるけど、ギルドランクはどうしたいとかあるの? やっぱり上げたい?」

 ギルドに向かいながら、私たちは言葉を交わす。

 「ええ。上げたいわ。《炎剣帝》様みたいにこういう呼び名ついたらって思うとわくわくするわ」

 「シィ姉様って、時々子供みたいなこといっているよね」

 「シィ姉様、笑顔で、可愛い!」

 ミレーナとアレーナにそんな風に言われてしまった。

 でもわくわくするのよ。特に前世の記憶がある影響か、二つ名とかそういうの少しだけ興奮するの。前世でも冒険譚とか好きだったから、そういうのつけられるのなんか少しわくわくするわ。

 憧れのマリアージュ・フロネア様は、私ぐらいの年にはもうすっかり《炎剣帝》と呼ばれるぐらいに有名だった。他国にまで広まっている名。《炎剣帝》の名は皆が知っている。そんなふうに、なれたらって、マリアージュ様に憧れるからこそそういう存在になりたいってそういう目標がある。

 「だって、私はマリアージュ様に憧れているもの」

 「本当に、ケーシィは憧れてるんだね」

 「ええ!!」

 噂でしか聞いたことない。会ったことなんてない。姿を見たことさえない。だけど、憧れた。

 《炎剣帝》という、圧倒的な存在に。その話を聞いて、なんてかっこいい存在だろうって、そんな純粋な憧れを抱いて。だからこそ、私は魔法を学んだ。魔法をもっと使えるようになりたいって思えたのは、マリアージュ様のおかげだし、私が魔法を使うのがこんなに楽しいのだって知れたのもマリアージュ様のおかげなのだ。本当に、心の底からの感謝しかない。

 「そっか。まぁ、それなら、依頼どんどん受けなきゃね。俺もいるしBランクの依頼うける?」

 「いや、それはまだいいわ。私たちはDランクだもの、二つ上の依頼を受けるのは無謀な気がするわ」

 「ケーシィたちは魔法の腕凄いし、大丈夫だと思うんだけど」

 「それでも、念のためよ」

 この世に絶対はない。

 私は前世で、転生なんて絶対ありえないと思っていたけど、こうして異世界転生なんてものを経験してしまっているのだ。だからこそ、余計にこの世に絶対はなくて、何かしら起こる可能性はある。早くギルドランクを上げたい気持ちはあるけれど、無理をして大変なことになっても困るのだ。

 「ケーシィって、案外、慎重だね。……《炎剣帝》に憧れているぐらいならもっと無謀なことするかと思ってた」

 「なんで、マリアージュ様に憧れていると、無謀なことすると思うのかしら?」

 「いや、だって《炎剣帝》って、色々無謀っていうか」

 「そうなの?」

 「うん、そんな感じ」

 ソル君がどうしてそんな年で旅をしているのかとか聞けないけれど、もしかしたらソル君ってマリアージュ様に会った事があるのかもしれない。本人が言おうとしていないのなら聞けないけれど。

 同じ国出身なら会う可能性もずっと高いだろう。マリアージュ様は戦争時以外はあまり国外に出ないという噂だったしなぁと噂を思い起こす。


 そんな会話を交わしているうちに私たちはギルドにたどり着いた。



 ソル君もいるし、Cランクの依頼を受けようということになって、皆で依頼の掲示板を見る。掲示板にはたくさんの依頼が張ってある。Cランクの依頼となると、討伐系の依頼や探索などの危険を伴う依頼が増えている。やっぱり、高ランクになるとそういう責任が重くなるのだろうと思った。

 「ソル君どんなのがいい?」

 「そうだね、俺は———」

 私たちは、どんな依頼を受けようかと掲示板の前で話し合っていた。そうしていたら、望まぬ客が訪れた。

 「よう、坊主。その嬢ちゃん、偉く別嬪じゃねぇか。坊主にはもったいないんじゃねぇか?」

 そんな荒い声が私たちにかけられ、そちらに視線を向ければ背の高いいかつい顔をした男が立っていた。その後ろには下品な笑みを浮かべた男が二人、私の方をニヤニヤしてみていた。その視線がちょっと気持ち悪かった。身体が少しだけ強張る。

 ソル君はそんな私を見て、にっこりと笑って、そして男たちに向き合った。

 「まぁ、もったいないかもだけど、あんたには関係ないよね?」

 ソル君は、挑発するように笑った。




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