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1.新しい街

 「ケーシィも、ミレーナ、アレーナも本当凄いね」

 「凄い?」

 「うん。旅慣れしているというか、一緒に旅していて楽だし」

 「それ言うなら、ソル君だって。ソル君の歳で一人で旅をしているなんて凄いもの」

 今、私たちは次の街に向かって進んでいる。ソル君が同行しての旅は、私たちだけでの旅よりも楽だった。ソル君って、本当に凄いと思う。

 「俺は色々慣れかな」

 「慣れってー?」

 「ソル君、そういうことずっとやってたのー?」

 ミレーナとアレーナが興味津々で問いかける。

 「そうだね。俺は実家にいた頃から、割と自給自足してたしなぁ」

 「実家で?」

 私は思わず問いかける。実家でも自給自足していたとはどういうことなのだろうか。私は家から追い出されるまでは自給自足なんてしていなかった。ふかふかのベッドで、お父様には疎まれていたけど、不自由なく暮らしていた。

 ソル君も、貴族の家の出かと思っていたのだけど、見当違いだったのだろうか。ソル君って、やっぱり謎だ。

 「そうそう。うちの親はちょっと無茶ぶりをしてきたから、その影響かな」

 「へ、へぇ……」

 ソル君の両親ってどういう人なのだろうと、ちょっと気になった。でも私もソル君に私の事情を話そうとは今は考えてもない。なのにソル君がどういう経緯で旅に出ているかなどを、こちらから聞きだすだけというのはどうかと思ってそれ以上は問いかけなかった。

 「ねぇ、ねぇ、ソル君、剣の扱いうまいよね」

 「私たちも教わりたいなー」

 話を変えるように、ミレーナとアレーナが言った。

 その話に私も乗る。

 「ソル君、私も剣の扱い上手くなりたいわ」

 「うん、じゃあ俺が教えられる範囲のことになるけれど———」

 ソル君は、嫌な顔一つせずに道中で剣の扱い方を教えてくれた。私も代わりに魔法を教えた。



 そんな風に楽しく旅を過ごすうちに目的の街にたどり着いた。




 ジェネット王国にはまだまだつかないけれど、一歩ずつマリアージュ様のいる国に近づいているのだと思うとわくわくして仕方がなかった。そのことをソル君に話したら、ちょっと笑われてしまった。

 新しい街にたどり着いて真っ先にしたことは、宿をとることだった。ソル君はこの街に訪れたことがあったらしく、ソル君が以前泊まっていた宿に私たちは向かった。

 宿のおかみさんはソル君のことを覚えていたらしくて、

 「ソル君じゃないかい、また戻ってきたのかい?」

 とにこやかに話しかけていた。

 沢山の場所を旅していたら、それだけ知り合いが多く増えていくってことなのだとそれを改めて思った。人とつないだ絆が、こうしてつながっているのはいいなぁと思った。私が例えば、もしまたこの街を訪れた時、こんな風に親しげに話しかけられる関係を誰かと作れていればいいなと、そうとも考えた。

 おかみさんはソル君が私たちとパーティーを組んでいるのを知って驚いた顔をしていた。おかみさんに話を聞いたところによると、ソル君は誘われてもパーティーを組んだり全然しないでいたらしいのだ。だから、パーティーを組んだことに驚いていたそうだ。

 「ケーシィたちは興味深いからね。あとは目的地が一緒だったからっていうのもあるんだけど」

 「へぇ、ソル君に興味深いといわれるなんて、あんたたち凄いんだね」

 ソル君の言葉におかみさんにそんなことを言われた。ソル君が私に興味を持っていてくれているのは、ちょっとだけ、嬉しい。

 それから、宿の部屋は二つ取った。三人部屋と一人部屋である。男女で別れている。ソル君は一人で知り合いとかに挨拶してくると去っていったので、私たち三人も自由行動をすることになった。

 私が街を探索するといえば、アレーナはついてくるといった。ミレーナは疲れたから宿で休んでおくそうだ。

 アレーナと二人並んで、街の中を歩く。

 新しい街、というのは何もかも楽しい。どのような店があるかとか、見て回るのも楽しい。アレーナと一緒に街を見ていく中で、洋服の店を見つけた。私は、最低限の荷物しか《アイテムボックス》にいれてこなかった。服も数えられるだけしかない。折角だから見てみようと思った。冒険者だから、動きやすい服を着るのは当然のことだけれども、……可愛い服だって時々着たくなるもの。洋服って、買わなくても見るだけでも楽しいものなの。アレーナと一緒にお店の中に入って、洋服を見る。

 「シィ姉様にはこれが似合いそう」

 「お客様にはこちらが———」

 入ったのはいいのだけど、にこにことしているアレーナと、こちらをキラキラした目で見ている店員に洋服を色々と勧められる。試着を是非してくださいと言われて、試着をすると、アレーナと店員は目を輝かせて、感想を告げた。

 「お客様、とてもお似合いです!!」

 「流石、シィ姉様、こういう服似合うね!!」

 「この服ならきっと旦那様も喜ばれますよ!」

 「店員さん、シィ姉様はまだ十五歳だよ!」

 「まぁ! とても大人っぽいのですね!!」

 「うん! シィ姉様はとっても大人っぽくて、綺麗なんだよ!」

 ……なんだか店員とアレーナが白熱して意気投合していた。

 その後二人に勧められるままに色々試着をした。店を出る頃には度重なる試着につかれてしまった私の横で、店員とアレーナは凄く仲良くなっていた。また来る約束までしていた。

 宿に戻って、疲れている私を見てミレーナに「何をしてきたの!?」と言われてしまった。




 

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