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1.私は国外追放を受け入れる。

 私、ケーシィ・ガランドは今学園の寮室で荷物をまとめていた。

 というのも、婚約者であり、王太子であるカラッラ様に国外追放を言い渡されたからである。

 フィーラ・エブリオという令嬢を苛めた罪らしいが、正直私はそんな事全くしていない。

 それにしてもフィーラさん、凄いなと私が思ったのはその逆ハーレムをナチュラルに形成している事である。

 確かにフィーラさんはかわいらしかった。

 真っ白な雪のような髪を腰まで伸ばしていて、目もくりくりとしていた。困った時に下がる眉は庇護欲を誘って、唇は桃色で。欠点といえば胸ぐらいだろうか。胸は制服の上からはほとんどわからないほどだった。良くて平均、悪くて絶壁といった所だろうか。

 今の私とは正反対である。

 現世の私は自分でいうと自意識過剰だといわれてしまうかもしれないが、美女である。そう、かわいらしい方の美少女ではなく、どちらかというと美しいとか妖艶とかそういう単語が頭につきそうな美女である。

 亡くなったお母様譲りの赤い髪は、血のようだなんて恐れられる事はあるけれど私は気に入っている。フィーラさんの髪のようにストレートではなくて、私の髪はふんわりとしている。目だって普通に見ているだけでも睨んでいるって勘違いされる事もあるぐらい吊り目。でもお兄様とお揃いの吊り目で、赤い目で私はお気に入りなの。背も平均からは高くて、胸は一般的に巨乳というぐらいの大きさはある。腰だって括れているし、体型のわかるドレスとかを着ると様になるのが私だ。

 それを思うと、フィーラさんに惚れているらしいカラッラ様が私に惚れないのも当然であろう。カラッラ様が私に興味がないのは知っていたが、これでも仲良くしようとはしていたのだ。しかしその努力は実らなかった。何故だろうと思っていたが、単純に好みの問題だったのかもしれない。

 「それにしても勘当状まで届くとか、お兄様が居ないからってお父様は……」

 私はガランド侯爵の娘である。いや、もうこの勘当の手紙が届いた時点で侯爵の娘だったというべきだろう。

 フィーラさんへの嫌がらせは冤罪だとは正直証明は出来なかった。なぜかっていうと、巧妙にはめられたのも理由だったし、国王陛下と王妃殿下が居ない今国の最高権力者である王太子殿下が率先して私を断罪したのも理由だ。加えて私のお父様は私を昔から疎んでいたのもあって、冤罪だったとしてもそれに便乗して勘当しているのだ。周りが何かしらいったとしても王太子が罪だと言い、実家も勘当までしているのならそれが事実として国内に浸透するのも当然であった。

 お兄様がいれば勘当なんてことはなかったのだろうが、お兄様は現在用事が入り国外に出ている。というよりカラッラ様は国王陛下たちとお兄様が居ないこの時期を見計らって私を落としにかかったのだと思う。正直、本当に私がフィーラさんを苛めて、それを罪だと考えているのならば国王陛下と王妃殿下、お兄様が居る時にやればいいのにと考える。だって国王陛下たちがいたら止められてしまうからやらないなんてヘタレじゃない? ずるくない? 本当に自分が正しいと思い込んでいるなら正々堂々とやればいいのに。

 まぁ、考えても仕方がない。勘当状も届いたし、寮長にも「残念だわ。でも、おいておくわけにはいかないの」といわれてしまったし、おとなしく国外追放を受け入れる。

 だから今荷造りをしているの。といっても、最低限だけれど。

 王妃になってかなえたい夢があったから王妃になることを受け入れて、一心に頑張ってきていたけれど正直それ以前に諦めた夢が私にはあった。

 だから、国外追放で、この国の貴族ではなくなるからこそその夢が叶えられるかもしれないという思いもあって冤罪で地位を追われたっていうのに私は能天気にわくわくしてしまっていた。

 不安よりも興奮が強いなんて、貴族の令嬢としておかしいかもしれないけれど、幾ら侯爵令嬢だからと取り繕っていても私はこういう人間なのだ。

 前の私は魔法がある世界にあこがれていた。前の私っていうのは、前世の私ってこと。前世の私は魔法もない世界で生きていて、物語の中で魔法の存在を見ていた。そういう世界にあこがれていた。

 だから、この世界に転生出来て当初は嬉しかった。でも、この国がどういう国か知った時、私は凹んだ。

 この国は、男尊女卑が抜けきっていない国なのだ。女は戦場に立たない方がいい。女は家でおとなしくしているべきだって。

 正直他の国では女性で有名な人とか結構いるのに、この国の考え方は遅れていてそんな調子なのだ。

 私は前世の記憶もあってそういう考え方に染まれなかった。でも侯爵令嬢だし、国王陛下からの提案もあって王妃になって色々頑張ろうと思っていたのだ。

 だけど、

 「……この国の貴族じゃなくなったのなら、自由に動いても問題ないんだなぁ」

 幾ら目立つ行為をしても問題はないし、おとなしくしていなくても外国でなら眉を顰められる事もない。

 お兄様にお別れの挨拶を出来ない事だけは心残りだけど、よくよく考えてみるとこの国で王妃になって色々変えていくよりも、外国に出て貴族の身分を捨てて自由に生きる方が当初の夢だし、私が最もやりたいことなのだ。

 それを考えると冤罪だろうが、国外追放は私にとって良い事尽くめではないか。

 でも魔法師団長には悪い事をしてしまった。私が王妃になった時は「全力で従います」って言ってくれていたのに。泣かれたし。私だって王妃になる気だったんだよ。でも、カラッラ様が冤罪かけてきたんだから仕方ないじゃない。

 「これぐらいでいいかな……」

 荷物を《アイテムボックス》の中に突っ込んで、動きやすい服に着替える。そして長い髪を結んで、帽子をかぶり、準備は出来た。

 



 準備を終えた私は、寮室を後にした。



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