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15.ゴブリンの集落の殲滅3

 ゴブリンキングの方へと向かっていく火の玉。これがゴブリンキングに傷を与えられるかどうかは分からなかった。だけど、一瞬の隙がつければソル君なら大丈夫だと思った。

 だからこその、魔法。

 その魔法はゴブリンキングにあたりはしなかった。ゴブリンキングは私の魔法を簡単によけてしまったから。だけど、そこで一瞬の隙が出来た。

 ソル君から、ゴブリンキングが視線を外した。

 それだけで十分だった。ソル君が動いた。

 ソル君が跳躍して、長剣を振り下ろす。

 それは、ゴブリンキングの首を狙っている。首を切り落とそうとしたソル君の長剣は結局かするだけに終わった。だけど、首に傷を刻むことは出来た。傷を負わせることが出来たということは大事な一歩だ。小さな傷だろうとも、それがゴブリンキングの動きを阻害する。そして、それが隙につながる。ゴブリンキングは私のことも警戒している。私がまた魔法を放ってくるのではないかと。それも含めて、ソル君の助けになっていればいいと思った。

 魔法は使えても、まだまだ未熟な私には、ゴブリンキングを倒すための手助けぐらいしか出来ない。私は魔法の才能は驚くほどあるけれども、それ以上のものは何も持っていない。だから、動けない。

 ソル君とゴブリンキングの動きを予想する。

 このタイミングで魔法を放ったら、ソル君を巻き込んでしまう恐れがある。だから、動けない。そういうことが多すぎて、私はゴブリンキングとソル君の戦いを気にしながらも、他のゴブリンたちの殲滅をする。

 ソル君は、少しずつだけどゴブリンキングを追い詰めている。

 傷を増やし、動きを鈍くしていき、そして最終的にその首を切り落とした。

 絶叫をあげて、ゴブリンキングが絶命するのを見た。

 ソル君の身体は、ゴブリンキングの緑色の血液を浴びてしまっていた。

 

 その頃には周りのゴブリンたちは一通り殲滅し終えていた。



 「ケーシィ、魔法の手助けありがとう」

 「当然のことをしただけだよ。それにしても、ソル君は凄いわ」

 ソル君は凄い。

 本当に心の底から私はそう思う。

 ゴブリンキングを倒してしまうなんて、と。ソル君がゴブリンキングを引き受けてくれたからこそ、周りが全員動きやすくなった。そういう動きも含めて、凄いと思った。

 「俺なんて、まだまだだよ。俺より凄い人はいくらでもいる」

 ソル君はそういって、続けた。

 「それより、まだ終わってないよ。ここら辺は片付いたけど他はまだやっているだろう。そっちの加勢しに行かなきゃ」

 「ええ」

 ソル君の言葉に私は頷いた。

 それから私たちのグループはまだ終わってないグループの加勢に向かった。それらの加勢をして、ゴブリンの集落の殲滅は終わった。

 悲しいことに死者がゼロではなかった。二人だけ、ゴブリンのリーダー格の襲撃により亡くなっていた。

 でもソル君がこの規模の魔物の集落の殲滅で二人で済んだことは幸いだって言っていた。正直ショックを受けた。でも冒険者としてやっていくならば、そういうことになれなければならないとソル君に言われた。

 ソル君は、私より年下なのに本当に大人びている。色々なことを知っていて、色々なことを経験していて。私なんてこの世界で王太子の婚約者としてそういう勉強はしてきたけれど、知らないことが多すぎる。

 限られた世界しか知らない私にとって、こうして冒険者として生活していくことは知らないことを沢山経験させてくれる。

 こういう殲滅の作戦だと、功績者に多くの褒美を与えるという形で、全員一律同じ報酬というわけではないらしい。ソル君が一番もらっていた。私やミレーナとアレーナも嬉しいことに、平均より多い報酬を受け取ることが出来た。それに今回の討伐の結果として、私たちは冒険者ランクDにあげられることになった。

 これから上のランクに上がるにはランクアップクエストを受ける必要があるから、これから上げるのには少し時間がかかるかもしれない。けど、Dランクになれたことは私にとって嬉しいことだった。

 「シィ姉様、お金も手に入ったし、そろそろこの街から出ていく?」

 報酬を受け取った翌日、ミレーナにそういわれた。

 元々この街にずっととどまるつもりはなかった。ゴブリンの殲滅という大規模な殲滅作戦に参加し、報酬も手に入ったから次の街に行くのもいいだろう。

 「そうね。ジェネット王国に向かいたいから、もう出ましょうか」

 「あれ、ケーシィたちってジェネット王国に向かうの?」

 食事をしながら話していたら、見知った声が聞こえた。そちらを向いたらソル君が一人で食事をしていた。

 「ソル君……、そうよ。ひとまず向かおうと思っていて」

 「ふぅん、そっか」

 ソル君はそういって、何か考えたような仕草をして続けた。

 「じゃあ、俺も一緒にいっていい?」

 続けられた言葉に驚いた。

 「え、どうして?」

 「んー、ケーシィたち面白いし、興味を持っているっていうのもあるんだよね。あと、俺の故郷ジェネット王国だから里帰りしてもいいかなと」

 ソル君はそういって笑った。

 言われて考えてみる。ソル君が旅に同行することを。ソル君はギルドの先輩で、一人で旅をしていて、色々なことを知っている。それに私もソル君に興味がある。目的地が同じ。

 それで断る理由は特にないと思った。

 「ミレーナ、アレーナ、私はいいと思うけどどう思う?」

 「私はソル君ならいいよ」

 「私も歓迎します」

 二人もそういってくれたので、私はソル君の申し出を受け入れることにした。




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