表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/76

13.ゴブリンの集落の殲滅1

 ゴブリンの集落の殲滅を決行する日が訪れた。その日、多くの冒険者たちが、その場にそろった。

 私は大規模な戦は初めてで、正直緊張して仕方がなかった。これだけ多くの冒険者たちと共に、これから、戦をするのだとそれを実感する。

 私は、マリアージュ・フロネア様に憧れていた。戦場で活躍し、数多の偉業をなしてきた女傑。『炎剣帝』などと呼ばれる、英雄。

 彼女に幼い頃から憧れて、彼女のようになりたいと考えていた。

 いつか、あの人のように。

 だから、この戦闘で活躍出来たら——、という思いももちろんある。緊張と、わくわくした気持ち。それが、私の心にはある。

 「シィ姉様、どうしたの?」

 「なんとも形容しがたい顔をしているけれど……」

 「……緊張と、恐怖と、わくわくがあって複雑なの」

 緊張している。恐怖している。それは事実だ。でも、わくわくもしている。

 その自分の気持ちに何とも言えない気持ちになっている。

 魔法が好きで、魔法を放つのも快感で、魔法をいっぱい使えるんだっていうのに興奮している。そしてマリアージュ様のように、という憧れからもドキドキしている。

 「怯えて本来の力を発揮できないよりは、断然そっちの方がいいよ」

 「そう? ってソル君、何時の間に傍にいたの?」

 突然の声に驚く。ソル君が傍に居た。

 全然気づかなかった。

 「いま来たところ、初の大規模な戦闘でケーシィ達も不安かなと思ってたけどそうでもないみたいだね。とりあえずケーシィたちは魔法の腕凄いんだから、どんどん魔法放って数を減らしてよ。そしたら俺も、他の冒険者たちもやりやすくなるからさ」

 ソル君はそういって笑った。その後、続ける。

 「ただ、味方を巻き添えにしないように。大規模な戦闘だと、そういうことも稀にあるから」

 「気を付ける」

 ソル君の真剣な目に、私はそう答える。

 私は大勢と共に戦ったことはなかった。少数での戦闘しか経験をしたことがない。それを考えると、確かに巻き添えにしてしまわないように気を付けなければならない。

 冒険者としてやっていくのならば、大規模な戦闘は良い経験になるし、足手まといにならないように頑張ろうと私は決意した。



 そして、ゴブリンたちの集落の近くまで私たちはやってきた。



 まずは、奇襲を仕掛ける予定となっている。ゴブリンたちの集落の数は驚くほどだ。しかもリーダーも多数いる。ならば、真正面から戦うなどということは愚策だということは私でも分かる。

 目標は殲滅。

 出来る限りこちらに被害を出さないようにした形でだ。それはあくまで理想であり、無傷で、誰ひとり亡くならずにこれだけの集落を突破できはしないだろう。

 でも、私は人が死ぬのは見たくはない。白銀の適性がある光属性の魔法の中には傷を回復させる魔法もあるそうだけど、残念なことに適性はあっても回復魔法を学べてはこれなかった。ちょっとは出来るかもしれないけれど、適性だけあってもうまく使える自信がない。傷を治すような魔法は制御が難しいから、悪化させかねない。

 折角これだけの適性があるのに、私は祖国で存分に適性に相応しい努力が出来なかった。やっぱりもっと学ぶことは沢山ある。

 ひとまず、使えるか分からない回復の魔法はおいておいて、攻撃系魔法で相手を殲滅するのが私がすべきこと。私は接近戦は苦手だから、離れた位置から魔法を放つ。それでいて近接攻撃をしている剣士たちに魔法を間違って放ってしまわないようにちゃんと調整しなければ……。誤爆して、怪我を私が負わせてしまったら大変だもの。

 「では、これよりゴブリン殲滅作戦を開始する」

 命をつなぐことが第一。死んでしまったら元も子もない。真正面から馬鹿正直に行く必要はない。そんなことをして、命が散ってしまったらたまったものではない。やることは、まず奇襲。

 魔法を扱えるものたちによる、奇襲がいいだろうといわれた。

 ただ魔法を使えるだけの魔力を持ち、ゴブリンを奇襲できるほどの適性があるものとなるとそうはいない。私たちを含めて、数えられるだけしかいない。

 白銀の適性を持っているのなんて、私たちだけである。ミレーナもアレーナも、白銀の適性を一つずつもっている。ミレーナは闇で、アレーナは光。それでいて、二人はほかに三つの魔法適性を持っている。

 ゴブリンを殲滅するための会議で、私たちの魔法適性を言ったら驚かれたのも記憶に新しい。

 私たち冒険者は、いくつかのグループに分かれてゴブリンの集落を襲撃する。ミレーナとアレーナと私は、それぞればらけている。というのも同時に魔法での奇襲を行うという話だったからだ。

 ただ、ソル君は同じグループだった。

 「――ソル君、私、やるわ」

 「うん、お願い」

 ふぅと、息を吐く。

 極限にまで、私ができうる限りの魔法の威力を出すために魔力を練る。

 私の中の魔力が、一か所に集まる。それを、魔法という名の形にする。

 「大いなる水よ、飲み込みなさい!!」

 白銀適性のある水を、出現させる。五メートル×五メートルほどある大きさの正方形を保った水の塊を、ゴブリンたちが集まっている場所に落とす。水の塊はどすんっという大きな音をたててゴブリンたちを飲み込んだ。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ