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12.調査を終えたあと

 調査を終えたあと、私たちはギルドに報告に向かった。あれだけの数の魔物を目にしたのは初めてで、正直街に戻ってからも緊張していた。

 年下なのに、慣れた様子で、あれだけのゴブリンたちを見ても平然としているソル君のことを本当に凄いと思った。

 あれだけのゴブリンたちに関する報告なのもあって、冒険者ギルドの受付での報告ではなく、奥の部屋へと通された。

 奥の部屋に足を踏み入れたのは初めてだった。赤いソファが二つ向かい合うように設置されていて、その片方に一人の感じのよさそうな男性が居た。

 「久しぶりだね、ソル。そしてそちらは初めまして。私はここのギルドマスターをしているトドッタエイという」

 通された先に、この街のギルドのギルドマスターがいて驚いた。

 でもそうか、あれだけの規模のゴブリンの集落に対する報告なのだからギルドマスターへの報告にもなるか。

 それにしてもソル君はギルドマスターとも知り合いなのね。やっぱり、凄いなと思ってしまう。

 「初めまして。ケーシィです」

 「アレーナです」

 「ミレーナです」

 私たちは、それぞれ名を告げる。

 ギルドマスターであるトドッタエイさんは、私たちを見て柔らかな笑みを浮かべた。

 「それで、ゴブリンの調査に対する報告だったね」

 「はい。それが——」

 ソル君は、淡々と、自分が見たものについて語り始めた。ゴブリンの集落についての情報を、余すことなく、伝える。最後に私たちに向かってソル君は何か伝えそびれがないかと聞いてきたけれど、聞いている限りそんなことはなかった。

 それにしてもソル君、報告も上手だ。私たちはソル君に誘われて一緒に調査に向かったけれど、ソル君一人でもどうにか出来たんじゃないかって思う。

 「それほどの集落か。ならばこちらに被害が出る前に迅速に動くべきだね」

 「その通りです」

 「それにしても、ソルは本当に仕事が早い。流石、彼らの息子だよ」

 「俺なんてまだまだですよ」

 ”彼らの息子”とギルドマスターはソル君のことを称した。ソル君の両親をギルドマスターは知っているということなのだろうか。その年で世界を旅して冒険者として一人前になっている事情にその両親のことも含まれているのだろうか。

 「ソルも、当然、討伐には参加してくれるのだろう?」

 「当然です。被害が出るとわかっているものを放っておくわけにはいきませんから」

 「そちらの三人も……ソルが調査に連れ出すほどの実力者なのだろう? なら、参加してくれるかい?」

 トドッタエイさんはそういって私たちの方を見た。

 私たちの答えはすぐに出た。

 「はい。参加させていただきます。力になれるのなら」

 「シィ姉様の決定に私たちはついていきます」

 「頑張ります!」

 私は、ゴブリン退治に参加する。



 その日のうちに、ゴブリンの集落退治の募集が始まった。



 私、ミレーナ、アレーナは二日後のゴブリンの集落退治のための準備を行うことにした。二日間で出来ることなど限られているが、何も準備をしないよりも、準備をする方がいいに決まっているのが当然のことである。

 そもそも、私たちは大規模な魔物の討伐依頼など受けるのは初めてなのだ。

 魔法には自信はあるけれども、ギルドにも登録をしたばかりで、他の冒険者たちの足を引っ張る可能性も十分ある。

 「シィ姉様、ゴブリンの集落の退治なんて、ドキドキするね」

 「武功を挙げられたらギルドランクも上げられるかな……」

 ミレーナとアレーナは、私にそんな言葉をかける。

 魔法には自信がある。けれど、集落という規模の魔物を退治するのは初めてで、緊張する。

 それにアレーナが言うように、活躍すればギルドランクを上げられる可能性が高い。これから旅をしていく上で、ランクはあげられるならあげたほうがいい。

 「そうね、頑張りましょう。あと———」

 それからゴブリンの集落の殲滅に対する話を私たちはした。

 「そういえば、シィ姉様、ソル君って不思議だね」

 ふと、ミレーナが話を変える。

 「そうね」

 私もその言葉に頷く。

 ソル君は、本当に不思議だ。

 「シィ姉様、ソル君に興味あるでしょ?」

 「それはそうよ。ソル君って、色々凄いもの」

 興味があるかどうかでいえば、興味はある。ソル君は凄い。あの歳で冒険者として大成しているだなんて、どういう育ちなのか、どんな生き方をしてきたのか、前にいっていた私たちと似たようなものといった意味はなんなのか。それらの全てが気になってしまう。

 「シィ姉様が、他人にそんな興味を持つの、珍しいなーって思って」

 「ミレーナ、そんなことないと思うけど……」

 「あると思うよ?」

 「んー、まぁ、それはソル君が今までいなかったような子だからだと思うわ」

 ソル君は、私が今まで見たことがないような子なのだ。どういう子なのだろうか、と思わせる節が沢山あって、興味がわいてしまう。

 このゴブリンの集落の殲滅でソル君はどんな活躍を見せるのだろうか、そう思うと少しだけ緊張していた心がほぐれていった。



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[一言] 「そもそも、私たちは大規模な魔物の討伐依頼など受けるのは初めてなのだ。魔法には自信はあるけれども、ギルドにも登録をしたばかりで、他の冒険者たちの足を引っ張る可能性も十分ある」 そんな大きな…
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