表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/76

11.調査に向かう

 異常発生しているゴブリンの調査。正直私が役に立つだろうかという思いも強い。緊張している。ゴブリンの退治の依頼がこんなゴブリンの異常繁殖の問題につながるなんて、本当に世の中どんなふうになるか分からないものだ。

 ……まぁ、婚約者が他の異性に惚れてその結果婚約破棄されて、国外追放を言い渡されるなんて幼い頃は考えもしなかった事態に陥った結果、今私はここにいるわけだから世の中ってどうなるか分からないというのはよく実感している事だけれども。

 今、私はミレーナとアレーナと、ソル君と一緒にゴブリンの調査に出かけている。

 ソル君は、慣れた様子で前を歩いている。私より年下なのに、こうも魔物退治などに慣れているなんてどういう環境に居たのだろうか。そもそも一人旅をしているのも何故だろうか。自分の事情もソル君に話していないけど、ソル君を見ながら、ちょっと疑問に思ってしまった。

 まず最初にこの前ソル君が多くのゴブリンたちと戦っていた周辺に来ている。あの辺で見かけたという事は、繁殖しているのならばまた見かけるのではないかという事であった。

 実際、数匹のゴブリンを発見した。

 そのゴブリンをすぐに殺すという事はしなかった。

 ゴブリンという生物は単独生活を行わない。一匹だけで生きているゴブリンというものは基本的にはいない。ゴブリンの中でも強い存在がいたとしても、配下を持つものである。この数匹のゴブリンたちは、集団生活をしている場所へと戻ると思われるため、そこまで様子見をして集団の規模の確認をすることが第一にすべきこと。

 ソル君は全然緊張した様子などなく、平然としている。私はこんなに緊張してしまっているというのに。ミレーナとアレーナも、普段は賑やかだけれども今は口数が少ない。

 「ケーシィたち、大丈夫?」

 ふと、ソル君がこちらを振り返って私たちに問いかけた。

 「ええ。大丈夫よ。少しだけ緊張しているだけだから」

 魔法を使う事は好きだ。魔法を使うとどうしようもなく気分がよくて、胸が鼓動する。魔物退治だってそれなりにしていたけれどもそれでもついこの前のゴブリン退治が冒険者としての本格的な討伐依頼だった。

 それからとんとん拍子で、ゴブリンの繁殖に関わる事になって、緊張しないわけはなかった。

 そんな私に、ソル君は笑った。

 「大丈夫だよ。魔法があれだけ使えるんだからもっと自信を持っていいよ。偵察だけだし、それに本当に危険だったとしても守ってあげるから」

 そんな風に安心させるように言われた。それにしても、本当になんでソル君はこんなに落ち着いているのだろうか。それはミレーナとアレーナも思っている事のようだ。

 「ソル君ってさ、何でそんなに場馴れしているの?」

 「んー、俺の場合は親がちょっと無茶を言ってくる人だったから。それにもう一人でそれなりに冒険者として生活しているし」

 親の無茶ぶりか。でも、この前の会話からしてソル君も貴族なのかなと思ったのだけど、結局どういう立場なのか、聞けば聞くほど分からない。

 「だから、ケーシィも、ミレーナもアレーナも、魔法の腕あるんだからどんどん経験していったら冒険者として生活するのは普通に出来ると思うよ」

 「ええ。頑張るわ。今回のゴブリンの繁殖の調査も、初めての事だから少し緊張しているけれど、いい経験になるもの。ソル君、誘ってくれてありがとう」

 「うん」

 ソル君は私の言葉に頷いた。そんな会話をこそこそと小声で交わしていれば、追いかけていたゴブリンたちが集落にたどり着いたようだ。集落にいるゴブリンに悟られないように距離を取って、覗き込む。ソル君が双眼鏡を取り出して覗き込んでいる。

 「あー……、数が思ったよりも多いね」

 ソル君は少し嫌そうにそういった。その後、双眼鏡を私たちに渡してくれる。それを覗き込めば、大勢のゴブリンたちの姿が視界に映った。これだけの数がいれば、対処をしなければ街に被害が出るだろう。そう思うと、ごくりと息を呑んでしまった。

 「……ソル君、一際大きなゴブリンが居るわ」

 私が討伐したゴブリンよりも体の大きさが明らかに大きなゴブリンが居る。それも、一匹だけではない。少なくとも現段階で数匹は確認できる。

 そのことを言えば、ソル君は難しい顔になった。

 「それはちょっと問題かも。もしかしたらキングが生まれている可能性もあるし、ちょっともう少しだけ集落を確認して戻ろうか。そして、緊急依頼として冒険者の召集をかけてもらって、早急に退治したほうがいい。放っておけばおくほど、こういう集落は数が増えるから」

 ソル君はそういって、集落の観察を続けた。私たちも、それに倣って気づいた事をソル君にどんどん報告していった。



 確認できた限りでも、ゴブリンは百匹近くは居る。プラスしてリーダークラスのゴブリンが数匹と、それよりも大きなゴブリンが一体いた。ソル君がアイラールドの街でこのゴブリンの集落の被害があまり見られていない事から考えると最近アイラールドの街の近くに移動してきたゴブリンたちの集落かもしれないと言っていた。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ