10.ギルドへの報告
私、ミレーナ、アレーナ、ソル君でギルドへと戻る。ラカさんは、私たちがソル君と一緒に居るからか驚いた顔をしている。
というか、ソル君ってずっとソロって話だし、あまり人とかかわってこなかったのかもしれない。そういう人が急に誰かと一緒にいたら驚くのも当然かもしれない。
「ラカさん」
「……えっと、どうしてソルさんとケーシィさんたちが一緒に居るのでしょうか?」
ラカさんに声をかければ、驚いた声で問いかけられた。見れば、他のギルドの受付嬢たちも、どうしてだろうと聞き耳を立てている。
ソル君ってそれだけ注目を浴びている人なんだなと思うと、その年でそれだけの功績を収めていて、注目されているなんて本当に凄いと感じてしまう。
「ああ、そのことなんだけど、ゴブリンが異常発生してたんだよ。俺が相手にしていたらケーシィ達が助太刀してくれたって事。そのことでもしかしたら、ゴブリンが繁殖期が来ているか、リーダーが生まれたか、そういう兆候かもしれないから報告しとこうと思って」
ソル君が大雑把にいった。
繁殖か、リーダーが生まれたという可能性をソル君は考えていたようだ。私はそこまで考えが回っていなかったけれど、確かに、そういう事もあるのかもしれない。
そう思うと、少し怖くなる。もし、リーダーが生まれたのだとすれば……、この街が危険に陥る可能性がある。それを思うと、何だか不安になる。私は魔法を使えるし、魔物を倒すことはそれなりになれているけれど、本当に命の危険にさらされたことはない。冒険者として生きる事を思えば、そういう危険な目に陥ることも当然あるのだろうけれども……冒険者になってすぐにそんな風になるとは思わなかった。
まだ可能性の話だけれども……、ソル君は全然動じてもなくて、それだけ私よりも年下でもそういうことになれているという事なのだろうけれども、とソル君がどういう人なのかが益々気になってしまう。
「シィ姉様、どうかした?」
「いえ、何でもないわ……」
私はミレーナとアレーナよりも、年上なのだから、もっとしっかりしなければ。冒険者になれて、憧れのマリアージュ様への憧れから浮かれていたけれど、もっと色々しっかりしなきゃと思った。
「ラカさん、この三人、魔法の腕は相当あるから、この子ら連れて調査してきていい?」
「わ、私たち?」
思わず私たちの事を言われて、驚いてしまう。私がしっかりしなきゃと思っている間に話は進んでいたみたい。
「ケーシィさんたちはまだEランクですが」
「実力は俺が保証するし、大丈夫だと思うよ。もちろん、本人たちが承諾するならという話だけど」
そういって、ソル君がこちらをちらりと見る。
「えっと。私たち足手まといになるかもしれないけど……」
「大丈夫でしょ。魔法あれだけ使えるなら」
本当にソル君は、なれているんだろうなと感じる。ギルドのメンバーとしての経験をそれだけ積んでいるという証。それにギルド側からも、信頼をされている。それは、私がなりたいと思っている姿。
調査というのも、正直緊張するけど、折角そこまで言ってくれてるならと思った。
私の、大好きな魔法を、私の魔法の腕をかってくれているなら……、頑張りたいと思うから。
「なら、参加させてもらいたいわ。どれだけソル君の役に立てるかは分からないけれど」
「私も」
「私も頑張るよ!」
私の言葉にミレーナとアレーナも頷く。
その言葉を聞いて、ソル君が笑みを浮かべる。
「じゃあ、そういうことで。調べ終わったら報告来るから」
「はい。お願いします。でもくれぐれもケーシィさんたちに無茶をさせないようにしてくださいね。実力があったとしても、経験は低いのですから」
「それはもちろん」
「はい。では、その話をギルドマスターに報告しておきますね」
そんな感じで話はまとまった。話が終わった後、周りからの注目を受けながらも私たちはギルドの外に出る。ソル君が、「個室のお店行こうよ。調査とかの話するから」といわれて、四人でソル君がおすすめというお店に向かった。
結構お値段がするところだったのだけど、遠慮したけれどソル君が「あー、別におごるからいいよ」とさらっと言って押し切られた。
「とりあえずゴブリンがどれだけ増えているかとかの調査をするっていう事だけなんだけど。もし繁殖しすぎているとか、リーダーとかいるのならばさっさと対処しないと面倒な事になるからね。情報は重要だから色々知っとかなきゃ」
ソル君はそういいながらどんどん食べている。お腹がすいていたのかもしれない。私たちもソル君が頼んでくれたものを口に含む。少し値段がそれなりにするのもあって美味しい。国を飛び出してから、お金を貯めようと思ってあまり値段がしないところでばかり食べていたから余計にそれを感じる。
「美味しそうに食べるね」
「美味しいもの。ソル君、ありがとう。ごめんなさいね、私の方が年上なのに」
「んー、全然いいよ。俺が好きでおごっているし」
ソル君はそういいながら平然としている。ギルドの討伐依頼もこなしていればそれだけお金を稼いでいるのだろう。
「ソル君なんで、私たちを誘ったのー? 出会ったばっかなのに」
「気に入ったからというか、気になったからかな? あれだけ魔法使えるのも面白いし、どこか世間知らずにも思えるし。面白いなーと、もちろん魔法の実力でも選んだけどさ」
アレーナの言葉にソル君が笑う。
世間知らず……まぁ、確かにそうだけどそんな風にわかりやすいかしらと落ち込みそうになる。
「というか、動きとかが凄い貴族っぽいからね。わけありってのはバレバレかな」
ソル君が笑って続けた。
「えーと、それはその……」
「まぁ、言いたくないなら別に聞かなくていいけど。俺も似たようなもんだし。で、とりあえず明日―――」
ソル君の似たようなものという言葉が気になったけれど、ソル君も聞かれたくないのか調査の話になった。
明日、調査にさっそく行くことになった。