研修旅行編①
「研修旅行?」
「そう、3年生は5月の末に2泊3日、研修旅行に行くんだよ、知らなかったの!?」
奈々は呆れ顔だ。そういえば、そんな用事もあった、ような気がする。別に特に学校に興味がある訳じゃないし、そんなことすっかり忘れてた。
と、いうことは。もしかしたら、はやこさんともお近づきになれるチャンスがあるのかも!?っと、ちょっと期待してる。私はわくわくした気持ちで研修旅行in長野を心待ちにした。
そして、当日。私はオタク仲間の沙織と席を隣同士にして、バスに乗った。前から5列目の、補助席。はやこさんは.....前から2列目の補助席!ちゃんと見える位置だ。嬉しくてちょっとニヤニヤしてしまう。
「朱里、なーにニヤニヤしてんの?」
沙織はリュックの中に隠したスマホでゲームをしながら声をかけてきた。
「ううん、ちょっとね。」
私がはやこさんとお近づきになりたいことを言っているのは、奈々だけ。別に言ってもいいんだけど本人に気持ち悪がられたくなくて、あまり公にはしてない。
私はバス酔いが激しく、沙織に寄っかかってずっと寝ていた。もちろんはやこさんをチラ見するのはわすれずに。はやこさんはその間も、バレー部の華やあいちゃんと盛り上がっていた。いいなぁ......と思いつつも、そんなのは高望みだと分かってたから、見てるだけで幸せだ。
私は揺れるバスに身を任せ、これからの2泊3日に大いに期待した。