第36話 カメラマンの仕事
テレビを消した部屋。
愛ちゃんが震えながら言った。
「おじさん……あの人、絶対ヤバいです……」
おじさん
「テレビだからね」
愛ちゃん
「もう見たくない……」
……翌朝。
おはようございます。
天動説ニュースの時間です。
昨夜未明――
街頭インタビューの撮影現場が
独自取材により公開されました。
スタジオ
「おおおお……」
映像が流れる。
夜の街。
ライト。
カメラ。
そして
あのカメラマン。
カメラマン
「はい」
「もう一回お願いします」
市民
「え?」
カメラマン
「そのまま言ってください」
「夜も安心して歩けます」
市民
「夜も安心して歩けます」
愛ちゃん
「言わせとるやないか!!」
スタジオ
「ざわざわ」
カメラマン
「いいですね」
「もう一回」
市民
「夜も安心して歩けます」
愛ちゃん
「何回言わせんねん!!」
その時。
スタッフが近づく。
スタッフ
「カメラ回ってます」
「社長が見てます」
愛ちゃん
「社長?」
映像の奥。
中継車。
車体ロゴ。
**MUSCLE TV**
おじさん
「筋トレ番組かな?」
愛ちゃん
「絶対違う!!」
スタジオ
「おおお……」
専門家が登場する。
専門家(真顔)
「解析の結果」
「街頭インタビューの99割は」
演出です
記者
「残り1割は?」
専門家
「多分演出です」
愛ちゃん
「全部ヤラセやないか!!」
街頭インタビュー
市民A
「テレビがあるので安心です」
市民B
「夜も安心して歩けます」
愛ちゃん
「安心する理由ない!!」
その時。
カメラマンが
静かに言った。
カメラマン
「もう一回」
市民
「夜も安心して歩けます」
愛ちゃん
「洗脳や!!」
ニュースキャスター
「なお専門家によると」
「テレビの99割は」
雰囲気です
記者
「残り1割は?」
専門家
「多分雰囲気です」
街頭インタビュー
市民
「雰囲気があるので安心です」
「夜も安心して歩けます」
愛ちゃん
「何も解決してへん!!」
画面の端。
カメラマンは
まだ
撮影を続けていた。
……レンズが、ゆっくりとこちらを向いた。




