第32話 視聴率
ニュースはまだ続いていた。ニュースキャスターが真顔で言う。「続いてのニュースです」「現在、全国で発生している」「ツチノコの天ぷら人気について」「専門家の追加コメントが入りました」画面が切り替わる。専門家が頷く。「今回のツチノコですが」「99割ツチノコです」スタジオが静まり返る。キャスター「99割ツチノコ」専門家「はい」「残りの1割は」「ほぼツチノコです」キャスター「なるほど」「安全性は?」専門家「問題ありません」「夜も安心して歩けます」画面が街頭インタビューへ切り替わる。男性「夜も安心して歩けます」女性「夜も安心して歩けます」サラリーマン「夜も安心して歩けます」通行人「ヤラセだろ」一瞬の沈黙。カメラの奥から声がした。「いいから続けて」カメラが少し近づく。別の男性が答える。「夜も安心して歩けます」テレビの前。俺はエアロバイクを漕いでいた。バチン!ペダルが鳴る。俺「……また鳴った」愛ちゃん「完全に壊れてます」俺「違う」「これは加護だ」愛ちゃん「違います」テレビではまだ街頭インタビューが続いていた。女性「夜も安心して歩けます」その時。画面の端にカメラマンの姿が一瞬映った。黒いシャツ。筋肉質。そして胸のロゴ。MUSCLE TV愛ちゃんが言う。「おじさん」俺「なんだ」愛ちゃん「今の見ました?」俺「何をだ」愛ちゃん「カメラマンの服」俺「……」バチン!またエアロバイクが鳴る。俺はテレビを見る。ニュースキャスターが言った。「なお今回の件について」「政府は」「非常事態宣言を検討しています」「不要不急の外出は控えてください」「しかし」「専門家によると」「夜も安心して歩けます」俺「……」愛ちゃん「完全に矛盾してます」その時。テレビの奥からカメラマンの声が聞こえた。小さく。本当に小さく。「……視聴率」愛ちゃんが言う。「今」「何て言いました?」俺「……」テレビ画面が切り替わる。街頭インタビュー。男性「夜も安心して歩けます」カメラの奥からまた声がした。「いいぞ」「そのまま」「続けて」




