第20話 「サポートセンター」 (提供テキストを基にブラッシュアップ・19話直結版)
第19話の続きから)俺はスマホを耳に当てた。
マッスルシャーク・サポートセンターへ電話。
呼び出し音が鳴る。 機械音声
「ただいま電話が大変混み合っております」 俺
「そうか」 機械音声
「現在の待ち時間は」 少し間が空いた。
そして言った。
「99時間です」 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 俺
「長いな」 愛ちゃん
「長いですね」 機械音声は続けた。
「この待ち時間は」
「専門家の計算によると」
「99割正常です」 俺
「そうか」 愛ちゃん
「おじさん」 俺
「なんだ」 愛ちゃん
「それ」
「異常ですわ」 俺は首を振った。
「違う」
「専門家が言っている」
「99割天動説や」
「残り1割女児向け(怖)」
愛ちゃん
「…………」 そのとき。
テレビがついた。
また勝手に。 ニュースだった。
ニュースキャスター
「速報です」
「現在、全国でサポートセンターへの電話が急増しています」 映像が切り替わる。
街頭インタビュー。 男性(いつもの人)
「これで夜も安心して歩けます」 通行人
「……あれサクラだろ」 別の通行人
「絶対サクラだろ」 カメラマン
「続けてください」 男性
「これで夜も安心して歩けます」 スタジオに戻る。
ニュースキャスター
「なお政府は今回の件を受け」
「夜間の外出は安全になったと発表しています」 愛ちゃん
「意味がわかりませんわ」 俺
「安心できるならいいだろ」 愛ちゃん
「よくありません」 電話の保留音が流れていた。
ずっと同じ音楽だ。
(どこかで聞いたマダムの笑い声が混じってる気がする……) そして。
ついに声が聞こえた。 オペレーター
「お電話ありがとうございます」 俺
「つながった」 愛ちゃん
「奇跡ですね」 オペレーターは静かに言った。
「症状を教えてください」 俺は答えた。
「エアロバイクが」
「バキンって言いました」
「今は回らんくなって」 沈黙。 オペレーター
「ペダルは締めましたか?」 俺
「締めた」 オペレーター
「もう一度締めてください」 俺
「締めた」 オペレーター
「もう一度お願いします」 俺
「締めた」 オペレーター
「もう一度お願いします」 俺
「締めた」 沈黙。 愛ちゃん
「おじさん」 俺
「なんだ」
愛ちゃん
「無限ループですわ」 俺は言った。
「安心しろ」 愛ちゃん
「何がですか」 俺は静かに答えた。
「365日保証だ」
「従順の証明や」 電話の向こうで。
誰かが笑った気がした。
その笑い声は。
どこか遠くで聞いたことがある声だった。 「ホーーッホッホッホ」 愛ちゃん
「……」 俺
「……」 俺はゆっくり言った。
「今」
「笑ったか?」 電話は切れた。 沈黙。 壊れたエアロバイクが。
また。
小さく鳴った。 ゴン。 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 俺はつぶやいた。
「これは」
「本当に」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃん
「……はい」 テレビのニュースが続く。
ニュースキャスター
「専門家によれば」
「電話が切れても」
「99割安心です」 マダム(画面隅から)
「ホーッホッホッホ!!」
(続く……きっとまたネジ締めろって言われるんだろうな)




