第18話「専門家の見解」(17話直結・加筆修正版)
(第17話の続きから)自動音声がまだ耳に残っている。
「6を押してください」
……「7を押してください」
俺はスマホをテーブルに叩きつけた。
(優しく) エアロバイクのペダルを回す。
ガッ……ガッ……ガッ…… 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 俺は言った。
「これは」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃんは黙っていた。 さらに回す。
ガッ……ガッ……ガッ……
明らかに異音が悪化してる。 愛ちゃん
「おじさん」 俺
「なんだ」 愛ちゃん
「壊れてると思いますわ」 俺
「違う」 首を振った。
「これは」
「仕様や」 愛ちゃん
「仕様?」 俺
「ああ」 真顔で言った。
「三百六十五日保証やからな」 愛ちゃん
「…………」 そのときだった。
テレビが勝手に音量アップ。
(リモコン触ってないのに) 画面の中、アナウンサー。
「続いて専門家の見解です」 白衣の男が映る。
(なんか見覚えある……?) 専門家
「この異音はですね」
「九九割の確率で正常です」 俺は頷いた。
「やっぱりな」 愛ちゃん
「おじさん」 俺
「なんだ」 愛ちゃん
「その専門家」
「さっきのくまちゃんCMに出てた人ですわ」
「唐揚げノーベル賞の人やなくて」
「マッスルシャークの専属コメンテーターちゃう?」 俺
「……」 テレビの専門家は続けた。
専門家
「音が出るということは」
「動いている証拠です」
「つまり健康的です」
専門家
「加護の音が響く限り」
「マッスルシャーク製品は生きています」 俺はエアロバイクを回した。
ガッ……ガッ……ガッ…… 俺
「ほらな」
「専門家が言ってる」 愛ちゃん
「…………」 愛ちゃんは静かに言った。
「嫌な予感しかしませんわ」 俺は笑った。
「大丈夫や」
「専門家が言ってるんやから」 テレビの男はさらに続けた。
専門家
「これで」
「夜も安心して歩けます」 通行人(同じ人、ループ)
「これで夜も安心して歩けます」 カメラマン
「続けてください」 俺はペダルを強く回した。
ガッ……ガッ……
ガッ…… バキン!! 沈黙。 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 ペダルが完全に止まった。
何か大事な部品が飛んだ音がした。 俺はつぶやいた。
「これは」
「本当に」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃんは小さく言った。
「おじさん」
「夜は安心して歩けませんわ」 テレビのニュースが続く。
専門家
「なお、異音が止まった場合は」
「さらに健康的です」
「九九割安心です」 マダム(画面隅から)
「ホーッホッホッホ!!」
「えーん!! くまちゃーん!!」 俺
「……」 愛ちゃん
「おじさん」
「もう」
「専門家なんか信用せん方が」 俺はエアロバイクを見つめた。
止まったペダル。
飛んだネジ。 俺は静かに言った。
「保証……」
「まだ365日あるよな」 愛ちゃん
「……はい」 テレビの専門家
「次回の異音は」
「さらに加護が強まります」
バキン!! 沈黙。 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 ペダルが完全に止まった。
ネジが飛んで床に転がる。 俺はつぶやいた。
「これは」
「本当に」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃん
「おじさん」
「夜は安心して歩けませんわ」 テレビのニュース続く。
専門家
「なお、異音が止まった場合は」
「さらに健康的です」
「九九割安心です」 マダム(隅から)
「ホーッホッホッホ!!」
「保証の意味は」
「まだありますわ」 俺
「……」 愛ちゃん
「おじさん」
「もう」
「専門家なんか信用せん方が」 俺は壊れたエアロバイクを見た。
止まったペダル。
飛んだネジ。 俺
「保証……」
「まだ365日あるよな」 愛ちゃん
「……はい」 テレビ専門家
「次回は」
「保証の意味について」
「専門家の見解をお届けします」 (続く……)




