第17話「保証の安心」(加筆修正・復元ブラッシュアップ版
テレビではニュースが続いていた。
男性インタビュー(いつもの同じ人)
「これで夜も安心して歩けます」 通行人(同じ人)
「もう何回目やねん……」 カメラマン
「続けてください」 男性
「これで夜も安心して歩けます」 愛ちゃんが小さく言った。
「おじさん」 俺
「なんだ」 愛ちゃん
「夜、怖くて歩けませんわ」 俺はエアロバイクのペダルを回した。
ゴン……バチン!! ゴンバチン!! 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 俺はつぶやいた。
「これは」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃん
「完全に壊れとるやんけ」 俺
「でも」
「三百六十五日保証やで」 愛ちゃん
「…………」 愛ちゃんは静かに言った。
「保証あるのと」
「交換してくれるんは別問題ですわ」 俺
「そんなアホな」 箱を確認。
デカデカと書かれている。
365日保証 俺
「ほら」
「保証あるやん」 愛ちゃん
「嫌な予感しかしませんわ」 スマホでサポートページを開く。
問い合わせフォーム。 Q:異音がします
A:ネジを締めてください Q:ペダルから音が出ます
A:ネジを締めてください Q:ガタつきます
A:ネジを締めてください Q:完全に壊れました
A:ネジを締めてください Q:もう音が怖いです
A:ネジを締めてください 俺
「……」 愛ちゃん
「最初っから言うてるやん」 俺は工具箱持ってきた。
ギリギリギリ……ギリギリ!! 俺
「完璧や」 ペダル回す。
バチン!! ゴン!! バチンゴンゴン!! 俺
「……」 愛ちゃん
「……」 スマホ見る。
まだデカデカと。
365日保証 俺
「これは」
「安心やな」 愛ちゃん
「おじさん」
「全く安心できひんわ」 テレビのニュース。
マダム・シャークが新CMで登場。
くまちゃん(ぬいぐるみ)抱きしめて。 マダム
「ホーッホッホッホ!!」
「わたくしのくまちゃんですわ!」 くまちゃん、ポロッと落ちる。 マダム
「きゃあああ!!」
くまちゃんポロ マダム
「くまちゃーん!!」
「えーん!! えーん!!」 (CMテロップ)
※くまちゃんは無事です
(ネジが代わりに飛んでいきました) 愛ちゃん
「ただの落とし物やんけ……」 俺
「えーんいけます? いけます?」 愛ちゃん
「いけません」
「おじさんまで泣き真似せんといて」 俺はスマホ握りしめて問い合わせボタン押す。
画面:
「現在混雑中。お待ち時間:365日」 自動音声
「ようこそ、マッスルシャークサポートへ」
「異音でお困りですか?」
「1を押してください」 俺、1押す。 自動音声
「ネジを締めてください」
「締めても直らない場合は2を」 俺、2押す。 自動音声
「ネジを締めてください」
「締めても直らない場合は3を」 俺、3押す。 自動音声
「ネジを締めてください」
「締めても直らない場合は4を」 愛ちゃん
「おじさん」
「無限ループですわ」
「もう切った方が」 俺
「まだや」
「保証あるんやから」 エアロバイク鳴る。
ゴン……バチン……ゴンバチン!! 自動音声
「4を押してください」 俺、4押す。 自動音声
「ネジを締めてください」
「締めても直らない場合は5を」 テレビ割り込み。
キャスター
「速報です」
「マッスルシャークの新CMが異音問題を解決?」 マダム(CMリピート)
「えーん!!」
「くまちゃーん!!」
「ホーッホッホッホ!!」
「これで夜も安心ですわ」 専門家登場。
専門家
「今回の異音は『加護の音』です」
「九九割安心です」
「残り1割は……女児向け(怖)」 愛ちゃん
「おじさん」
「本当に」
「嫌な予感しかしませんわ」 俺はスマホ耳に当てたままペダル回す。
ゴンバチン!! 俺
「3押したのに」
「まだ続くんか……」 自動音声
「6を押してください」 テレビのニュース続く。
男性インタビュー
「これで夜も安心して歩けます」 俺は静かに言った。
「これは」
「本当に」
「ストレスバイクだな」 愛ちゃん
「……はい」 マダム(遠くから)
「えーん!!」 (続く……多分永遠に)




