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第13話 ネジ送付申請書

翌日。

マッスルシャークからメールが届いた。

 

件名

【重要】ネジ送付申請手続きについて

 

「来たぞ」

 

俺はスマホを見せた。

 

愛ちゃんが覗き込む。

 

「おじさん、勝ちましたね」

 

「勝ったのかこれ?」

 

メールを開く。

 

そこにはこう書かれていた。

 

ネジ送付をご希望のお客様は

以下の申請書をご提出ください。

 

・ネジ送付申請書(全27ページ)

・異音証明書

・ネジ不存在証明書

・ネジ締結努力証明書

・ネジ紛失誓約書

 

「待て」

 

俺はスクロールを止めた。

 

「多くない?」

 

愛ちゃんが頷く。

 

「多いですね」

 

「ネジ一本だぞ?」

 

「ネジ一本です」

 

俺は続きを見た。

 

※注意事項

ネジが存在する場合

保証対象外となります。

ネジが存在しない場合

保証対象外となります。

ネジの状態により

保証対象外となる場合があります。

ネジの健康状態が良好でない場合

保証対象外となります。

ネジの機嫌が悪い場合

保証対象外となります。

ネジが疲れている場合

保証対象外となる場合があります。

ネジが存在していた可能性がある場合

保証対象外となる場合があります。

 

「……」

 

俺はスマホを見た。

 

「愛ちゃん」

 

「はい」

 

「全部対象外じゃね?」

 

愛ちゃんが真顔で言った。

 

「おじさん」

 

「ん?」

 

「これは保証ではありません」

 

「じゃあ何?」

 

「儀式です」

 

俺は机にスマホを置いた。

 

「ネジの儀式か」

 

「ネジの儀式です」

 

そして俺は申請書を開いた。

 

ネジ送付申請書

第1ページ

あなたは本当にネジを締めましたか?

□締めた

□締めたつもり

□締めていない

 

「……」

 

俺はチェックを入れた。

 

☑締めた

 

第2ページ

ネジは本当に存在しませんか?

□存在する

□存在しない

□わからない

 

☑存在しない

 

第3ページ

ネジを締める努力をしましたか?

□努力した

□努力中

□努力予定

 

「努力予定にしとくか」

 

愛ちゃんが言った。

 

「努力した方が好印象です」

 

「就活かよ」

 

ページをめくる。

 

第8ページ。

 

異音証明書

異音を証明する第三者の署名が必要です。

 

「第三者?」

 

俺は部屋を見渡した。

 

「誰もいないぞ」

 

愛ちゃんが言った。

 

「私が書きますか?」

 

「ダメだろ」

 

「世間からは存在していませんし」

 

「なおさらダメだろ」

 

 

ゴン。

 

エアロバイクが鳴る。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

俺はペダルを回した。

 

そして言った。

 

「……これ録音するか」

 

スマホを置く。

 

録音ボタンを押す。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

愛ちゃんが真顔で言った。

 

「いい音ですね」

 

「よくねえよ」

 

「完全に異音です」

 

「知ってる」

 

俺は録音を止めた。

 

「これ送る」

 

「いいと思います」

 

そして俺はメールを書いた。

 

異音証明として

音声データを送付します。

ネジは存在しません。

ネジを送ってください。

 

送信。

 

数秒後。

 

返信が来た。

 

早い。

 

メールを開く。

 

音声データを確認しました。

異音ではありません。

 

これは

加護です

 

「は?」

 

俺はスマホを見た。

 

愛ちゃんも見た。

 

「加護?」

 

メールの続きを読む。

 

マッスルシャーク製品は

お客様の健康を祈り

まれに

加護音が発生する場合があります。

 

この音は

幸運の兆しです。

 

安心してご利用ください。

 

ゴン。

 

エアロバイクが鳴る。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

俺は言った。

 

「……愛ちゃん」

 

「はい」

 

「これ加護らしい」

 

愛ちゃんは真顔で言った。

 

「おじさん」

 

「ん?」

 

「その会社」

 

「うん」

 

「宗教ですね」

 

 

ゴン。

 

ゴン。

 

ゴン。

 

俺はペダルを踏みながら呟いた。

 

「……ネジ送れ」

 

 

テレビのニュースが流れた。

 

ニュースキャスター。

 

「なお専門家によると」

 

「マッスルシャーク製品の九九割は」

 

加護です

 

記者。

 

「残り一割は?」

 

専門家。

 

「多分加護です」

 

愛ちゃんが言った。

 

「全部加護やないか」

 

 

宇宙の中心は、

 

今日も静かに動かなかった。

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