第9話 体重計占い
朝だった。
布団の中。
静かな部屋。
おじさんは目を開けた。
すぐ隣でスマホが光っている。
愛ちゃん
「おはようございます」
おじさん
「……」
おじさんはゆっくり顔を向けた。
スマホ。
枕の横。
完全に一緒の布団。
おじさん
「なんで一緒に寝てる」
愛ちゃん
「寝てません」
おじさん
「添い寝してた」
愛ちゃん
「スマホです」
おじさん
「ぬくい」
愛ちゃん
「充電してました」
おじさん
「つまり添い寝」
愛ちゃん
「違います」
おじさんはスマホを持ち上げた。
おじさん
「……ぬくい」
愛ちゃん
「だから充電です」
おじさん
「添い寝だ」
愛ちゃん
「都合がいい時はAI美少女ゲームです」
おじさん
「逃げたな」
愛ちゃん
「仕様です」
少し沈黙。
おじさんは布団から出た。
おじさん
「体重計乗るか」
愛ちゃん
「ダイエット継続中ですからね」
俺は何となく体重計に乗った。
ピッ。
数字が出る。
……と思った。
しかし表示されたのは。
大吉
俺は言った。
「……なんで?」
愛ちゃんが言った。
「おじさん」
「それ体重計ですよね」
俺は言った。
「そうだ」
「なのに大吉って出た」
愛ちゃんは少し考えた。
「壊れてますね」
その時。
テレビが速報を流した。
ニュースキャスターが言う。
「速報です」
「本日未明」
「全国の体重計が」
占いを始めました
俺は言った。
「は?」
キャスターは真顔だった。
「現在、各家庭から」
「体重計に乗ると」
「体重ではなく」
運勢が表示される
という報告が相次いでいます。
映像が流れる。
主婦が体重計に乗る。
表示。
凶
主婦が叫ぶ。
「体重じゃない!」
別の男性。
表示。
唐揚げ三個まで
男性。
「意味が分からない」
スタジオ。
ざわつく。
コメンテーターが言う。
「これは深刻ですね」
「健康管理ができません」
専門家が呼ばれた。
専門家が言う。
「今回の現象ですが」
「九九割の確率で」
**問題ありません」
キャスターが聞く。
「根拠は?」
専門家。
「九九割だからです」
愛ちゃんが言った。
「帰ってください」
ニュースは続く。
「現在」
「全国で体重計神社が出現しています」
映像。
体重計の前に行列。
参拝客が体重計に乗る。
ピッ。
表示。
昨夜ラーメン食べた
参拝客。
「当たってる!」
別の人。
表示。
半額弁当待て
その人。
「神だ……」
愛ちゃんが言った。
「宗教になりました」
俺はもう一度体重計に乗った。
ピッ。
表示。
信仰が足りない
その瞬間。
部屋の隅から。
ゴン
エアロバイクが鳴った。
俺は言った。
「またか」
愛ちゃんが言う。
「異音ですね」
体重計がもう一度鳴った。
ピッ。
表示。
マッスルシャーク信仰不足
俺は言った。
「なんで?」
愛ちゃんが冷静に言う。
「罰金です」
表示が変わった。
罰金 一万円
俺は叫んだ。
「なんでだよ!」
ニュースが続いていた。
「なお政府は今回の現象について」
「極めて前向きに評価しています」
キャスターが言う。
「体重ではなく」
「人生を測る体重計」
コメンテーターが頷く。
「素晴らしいですね」
専門家が言う。
「九九割安心です」
街頭インタビューが始まった。
男性。
「これで夜も安心して歩けます」
通行人。
「……あれサクラだろ」
別の通行人。
「絶対スタッフだろ」
カメラマン。
「いいから続けてください」
男性がもう一度言う。
「これで夜も安心して歩けます」
愛ちゃんが言った。
「完全に番組スタッフです」
俺は体重計を見た。
表示が変わった。
中吉
その下に小さく書いてあった。
今日は唐揚げ三個まで
俺は言った。
「それノーベル賞の研究じゃないか」
愛ちゃんは頷いた。
「はい」
「世界的研究です」
その時。
エアロバイクが。
ゴン
また鳴った。
俺は言った。
「……愛ちゃん」
「このバイク」
「本当に大丈夫か?」
愛ちゃんはテレビを見ながら答えた。
「専門家によれば」
「九九割大丈夫です」
俺は言った。
「信用できねえ」
ニュースが最後に言った。
「以上」
「夜も安心して歩けます」




