第5話 半額弁当の非常事態
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第5話
半額弁当の非常事態
夜。
おじさんはスーパーに来ていた。
目的は一つ。
半額弁当。
弁当コーナーの前に立つ。
唐揚げ弁当。
焼肉弁当。
のり弁。
まだ定価。
おじさん
「早い」
スマホのAIが言う。
AI
「閉店までまだ二時間あります」
おじさん
「半額は宇宙の摂理だ」
AI
「ただの値下げです」
おじさん
「違う」
おじさんは静かに弁当を見つめる。
おじさん
「これは戦いだ」
AI
「何のです」
おじさん
「半額ガチャ」
AI
「ガチャじゃありません」
おじさん
「違う」
おじさんは唐揚げ弁当を指さした。
おじさん
「見ろ」
弁当のラベル。
そこには小さく書かれていた。
熊ちゃん姫印
AI
「ただのメーカーです」
おじさん
「違う」
おじさん
「これは――」
「50%腹痛ガチャ」
AI
「怖いこと言うな!!」
その時。
テレビコーナーからニュースが流れる。
ニュースキャスター
「おはようございます」
「天動説ニュースの時間です」
「本日の特集は」
半額弁当です
スタジオ
「おおお……」
「ざわざわ」
「スタジオざわつき」
スタジオの専門家。
専門家(真顔)
「解析の結果」
「半額弁当の99割は」
運です
記者
「残り1割は?」
専門家
「多分運です」
AI
「それはそうや!!」
その瞬間。
店員が近づく。
手にはシール。
客たちがざわつく。
客
「来たぞ……」
「半額だ……」
おじさん
「来た」
店員が貼る。
30%引き
AI
「まだです」
おじさん
「まだだ」
さらに時間が進む。
そして。
半額シール。
ペタ。
客たちが一斉に手を伸ばす。
おじさんも動いた。
唐揚げ弁当。
掴む。
しかし。
隣の客も同時に掴んだ。
沈黙。
AI
「ドローです」
おじさん
「……」
おじさんは静かに手を離した。
おじさん
「宇宙の判断だ」
AI
「譲っただけです」
テレビでは街頭インタビュー。
市民
「半額なので安心しました」
市民
「夜も安心して歩けます」
AI
「安心要素どこや!!」
その夜。
おじさんは別の弁当を食べた。
熊ちゃん姫印。
AI
「大丈夫ですかそれ」
おじさん
「大丈夫だ」
おじさん
「これは宇宙が選んだ弁当だ」
翌朝。
おじさん
「腹痛だ」
AI
「ガチャ外れとるやないか!!」
テレビのニュース。
ニュースキャスター
「専門家によると」
「半額弁当の99割は」
自己責任です
記者
「残り1割は?」
専門家
「多分自己責任です」
宇宙の中心は
今日も動かなかった。




