第42話 専門家の女児向け終末教育
(舞台:週刊・天動説クロニクル編集部・浦安支店。
ディズニーランドのすぐ隣、地下3階。)
重厚なドア。
『編集長:愛』
その下の張り紙。
「アホは去れ(専門家専用出口:壁)」
室内。
壁には、これまで殴り飛ばされた専門家の跡が無数に残っている。
机の横では、マダムがくまちゃんを抱えて震えていた。
マダム
「こわいですわ……」
「2075年が来ますわ……」
愛ちゃん
「まだ言うとる」
そのとき。
壁から声がした。
専門家(壁)
「編集長!!」
愛ちゃん
「まだ生きとったんか」
専門家
「続編です!!」
愛ちゃん
「帰れ」
次の瞬間。
ガンッ!!
壁から専門家が無理やり抜け出した。
そして机に
ドン!!!
新しい絵本を置いた。
タイトル。
『ミカちゃんの終末サバイバル』
帯。
「2075年でも勝ちまくり!」
愛ちゃん
「やめろ」
専門家
「前回の女児向け金融教育に続く」
「新シリーズです」
愛ちゃん
「シリーズ化するな」
専門家はページをめくった。
――1ページ目
ミカちゃん
「終末でもモテたい♡」
――次のページ
ミカちゃん
「資産を守ろう♡」
――次のページ
ミカちゃん
「おじさんに買わせよう♡」
愛ちゃん
「教育ちゃう」
専門家
「いえ」
「これは」
**『終末金融教育』です」
愛ちゃん
「言葉の組み合わせがおかしい」
専門家
「さらにこの本には」
「重要な教訓があります」
愛ちゃん
「嫌な予感しかしない」
専門家は次のページを開いた。
ミカちゃん
「でもね」
「失敗すると刺されるニャン☆」
愛ちゃん
「やめろ」
次のページ。
ミカちゃん
「だから」
「しっかり勉強するニャン☆」
愛ちゃん
「教育方法がおかしい」
専門家
「危機管理教育です」
愛ちゃん
「違う」
専門家
「もし2075年に大災害が来ても」
「頂点女子は生き残ります」
愛ちゃん
「どういう理屈や」
専門家
「資産があるからです」
愛ちゃん
「雑」
専門家
「さらに」
「文科省も導入を検討しています」
愛ちゃん
「やめろ」
画面切り替え。
――街頭インタビュー
母親
「娘に読ませます」
父親
「2075年が怖いです」
会社員
「将来が不安で眠れません」
学生
「人生設計変わりました」
老人
「大災害は2075年と聞きました」
通行人
「2075年が心配で眠れません」
スタジオ
ざわ……
ざわ……
ざわ……
専門家
「統計によると」
「成功率」
「99割です」
愛ちゃん
「割の意味知っとるか?」
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!!
専門家は再び壁にめり込んだ。
マダム
「こわいですわ……」
「2075年が来ますわ……」
マダムはくまちゃんをぎゅっと抱きしめている。
そのとき。
専門家(壁)
「編集長……」
「この本は」
「女児の未来を守る教育――」
専門家は
マダムのくまちゃんを見た。
専門家
「まず」
「実演します」
愛ちゃん
「やめろ」
専門家
くまちゃんに
手刀(優しく)
くまちゃん
ポト
床に落ちる。
マダム
「えーん!!」
「くまちゃーん!!」
愛ちゃん
「おい」
愛ちゃん
「何泣かしてるんや」
専門家
「これは」
「終末サバイバル訓練です」
愛ちゃん
「違う」
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!!
ドゴッ!!
バキッ!!
ゴンッ!!
専門家
ボコボコ
愛ちゃん
くまちゃんを拾う。
愛ちゃん
「ほら」
「安心せぇ」
マダム
「くまちゃーん……」
専門家(壁)
「ですが編集長……」
「成功率は」
「99割です」
愛ちゃん
「割の意味知っとるか!!!!」
完




